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交錯する道筋(クロス・ライン)  作者: 櫻華
第一部 『蒼き瞳の姫』編
2/16

#02 動き出した歯車



──報告書の束を両腕で抱えた状態で歩きながら…レグドラは、副総司令用の執務室へと向かう廊下で物思いに耽っていた。



“女帝”から“墓守り”を経由して伝えられたのは…『〈竜の渓谷〉に〈冒険者〉の一団が侵入した事』、『その〈冒険者〉達の言動に注意する事』だった。



(最近は〈竜の渓谷〉内の一部のどうほう達が見境なく暴れる様になった事で、ただでさえ頭が痛い問題を抱えている状況に…さらなる問題が発生しそうです…)



ハァ…と、溜め息を洩らしながら…レグドラは思わず『ヴォーメット()が居れば…』と考えてしまう。


しかし、すぐに首を軽く振り…その考えを振り払う。


(いけませんね。つい、今不在の王を頼りそうになっています。

王不在の今、私達が力を合わせて問題解決に動かなければならないというのに…

きっと、少し疲れていて…弱気になっているのですね)


そう自分の中で結論付けると…レグドラは、報告書を早々に片付けてから休憩を取る為に少し急ぎ足になって執務室へと向かっていった……。



◆▽○



──〈竜戦士団〉本部、団長室。



今、団長室には三人の人物が居る。



一人は、部屋の主である団長─クリストファー。



残り二人は、クリストファーを訪ねてきた男女の二人組─モノノフ23号とシェリア。




クリストファーは、濃い青緑色の縁をした丸縁眼鏡を右手の人差し指で掛け直しながら…シェリアへと声を掛けた。


「…で?話とは何ですか、シェリア」


クリストファーからの問い掛けに、シェリアは真っ直ぐに答える。


「…養父さん、兆候が現れました。ですから〈竜の渓谷〉に入りたいと思います」

「……そうですか」


シェリアからのその答えを聞いたクリストファーは、やけに重たい溜め息を漏らしてから…絞り出す様にそう呟いた。


「なら、止めはしません。

その代わり、必ず信頼出来る〈冒険者〉を護衛として同行させる事が条件です。

例えば…そうですね、今隣に居るモノノフ君…とか」


突然名前を挙げられたモノノフは、一瞬驚いた表情を見せたものの…胸にドンと拳を当てて答える。


「任せて下さい。シェリアは、ボクが必ず守り抜いてみせます!」

「ありがとうございます、モノノフさん。

養父さん…(御免なさい。)失礼しました」


隣に居るモノノフに聞こえぬ程の囁く様な小さな声で謝り…シェリアは団長室を後にした。



「『御免なさい』…か」


シェリアからの…囁く様に告げられた謝罪の言葉は、何に対してなのかをしばし考え…しかし、結局クリストファーには答えが出なかった。


「……シェリアに謝るべきは、私の方なのですが…」


部屋の主であるクリストファー以外の誰も居ない団長室で…彼は、そう呟いた。




──本当は、シェリアの母親─セリア─が自分にシェリアを託した訳も…父親─ジーク─が、シェリアとセリアの元に姿を現さない理由も…自分は全て知っている。



セリアは、〈古代竜〉と〈碧竜サファイアドラゴン〉と〈蒼穹の瑠璃竜〉の三つの竜種の血を引く〈大地人〉であり、自分の曾孫でもあり…ジークは、かなり薄まっているが〈古代竜〉と〈碧竜〉の血を引く〈大地人〉であり…大事な親友の一人でもある。


ジーク()セリア(彼女)に頼まれましたからね…」


シェリアには…『父親も母親も、〈竜の渓谷〉に居る』という嘘をついた。



──…いや。セリアは、〈古代竜〉のコミュニティーのある〈竜達の楽園〉の最奥へと行き…自らに“眠りの呪いスリーピング・カース”をかけ、いつ目覚めるのかが分からない長い眠りに就いている。




──そして、父親─ジークは…




「……まだ見ぬ父親の姿を捜すシェリアに、言える筈がありません。

たとえ、〈竜の渓谷〉の隅々までくまなく捜したところで…決して見つけられない事を。

何故なら…」



悲痛な面持ちを浮かべながら…クリストファーは小さく呟いた。



「ジークは〈黒斑病〉によって、既にこの世にはいない…亡くなっているのですから…」




──悲痛な思いで彼の口から呟かれた真実は…しかし、誰の耳にも届く事は無かった……。





──元は、ギルド無所属であり…現在は自警団〈竜戦士団〉に所属している〈海賊パイレーツ〉のリーディックは、〈竜の都〉の周辺の見廻り中…憤慨していた。



街中巡回担当の話では…〈西天使の都サウスエンジェル〉から竜討伐にやって来た〈冒険者〉の一団が、〈大地人〉に手を出したらしい。


しかも、その指揮官らしき人物が“シンフィノ=カウェール”と言う名だと聞いた時、思わず殴り込みに行こうかという考えが浮かんだ。


「アイツ…どの面下げて、〈竜の都ここ〉に来やがった!!」


リーディックは、そう呟きながらギリギリと歯を噛み締め…苛立ちを顕にしていた。




◆回想◆




──〈悪夢の五月ナイトメア・オブ・メイ〉の時…リーディックとカウェールは、同じ様に〈竜の都〉で〈大災害〉に巻き込まれた。



リーディックは、茫然自失となって道の隅っこに蹲り…カウェールは、周りに居る〈大地人〉達や〈冒険者〉に当たり散らした。



その後、〈大地人〉達の親身になっての支援のおかげで…多くの〈冒険者〉はその事を感謝し、恩返しをしたいと考える様になった。




──そう、一部の〈冒険者〉達を除いて…。




カウェールを含めた一部の〈冒険者〉達は、〈大地人〉達の支援を当然の様に考えていた。



「〈大地人(NPC)〉は、〈冒険者プレイヤー〉の為に尽くすのは当然だろう」



カウェールのその発言を聞いた時、リーディックは思わず大声で怒鳴った。


「お前は正気か!?

これだけ親身になって助けてくれた相手を…『NPC』だとか、『尽くすのは当然だ』とか…相手は心を持った“人間”なんだぞ!!」

「君こそ正気か?

『“NPC”が心を持った“人間”』…?

私は、そんな事を言う君の正気を疑うよ」

「…っ!このっ!!」



──結局、カウェールを含めた一部の〈冒険者〉は…プレイヤータウンである〈西天使の都〉へと移住して行った。



最後まで、〈大地人〉に対するお互いの考え方は相容れないままに……




◆回想終了◆




「アイツらが〈竜の都〉を去ってから…しばらくして、〈ビッグアップル〉や〈西天使の都〉から〈冒険者〉が〈竜の都〉に移住して来た。

『プレイヤータウンに居る奴等と同じゲスになりたくない』って言っていた者だって居た。

もし、カウェール(アイツ)がその考えを改めたのなら…プレイヤータウンから移住した連中と一緒に〈竜の都〉に戻ってきていた筈だ!」


そう言って、リーディックは感情のままに近くにあった大岩に思い切り拳をぶつける。


大岩は、リーディックの拳を受けて全体に細かい亀裂が入り…粉々に砕け散る。


「ハァ…ハァ…。

絶対、アイツの目的は〈竜の渓谷〉攻略なんかじゃねぇ…。

冒険者オレ〉達と〈大地人〉達で一生懸命協力して作り上げてきた街だ。

アイツの好きには絶対にさせねぇからな!!」



──リーディックの纏う…尋常じゃない雰囲気に、一緒に見廻りをしている〈竜戦士団〉のメンバー達は思わず息を飲み、どうしたら良いのか分からず…困惑するしかなかった……。





──日の落ちた〈竜の渓谷〉の大地に、フワリ…と舞い降りたかの様に着地した夜櫻の真後ろで…ズズーン!…という轟音を響かせながら、〈赤竜レッドドラゴン〉が地面へと墜落していた。



「ううん…、またか〜…」


〈峰打ち〉によって墜落した〈赤竜〉の姿を振り向いて眺めながら、夜櫻は溜め息を漏らす。



──実は、〈竜の渓谷〉内にベースを置いての…現地調査を行っている。



それは…『最近、〈竜の渓谷〉の竜達が急に狂暴化し、見境なく暴れ回る謎』についての調査である。



〈竜の渓谷〉は竜達の住処であるのに加え、最近の竜達の狂暴化もあり…普通は、渓谷内にベースを置こうとは考えないものなのだが…流石は、夜櫻。たまに常識の斜め上を行く人物なだけはある(笑)



「う〜ん…。この〈赤竜〉も、前に相手した〈火竜ファイアドラゴン〉と同じ様に目を真っ赤に光らせて暴れてたし…やっぱり原因は、以前にゃあさんから話を聞いた〈ルークィンジェ・ドロップス〉かなぁ…」


最早、夜櫻の中では竜達の狂暴化の原因は〈ルークィンジェ・ドロップス〉だろうと目星はついている。


「…となると多分、〈五姫〉の〈ルークィンジェ・ドロップス〉だろうけど…。

問題は…アタシには、たとえ場所が特定出来ても…掘り起こせないんだよねぇ〜。ホント、どうしよう…」


う〜ん、う〜ん…と唸りながら、ベースとして使っている天然の洞穴まで辿り着いた夜櫻は、〈四神の護り石〉で安全を確保してあるベースの洞穴へと入り…〈火蜥蜴サラマンダーの呼び笛〉で召喚した愛らしい手乗りサイズのミニ〈火蜥蜴サラマンダー〉に頼んで、火が燃えやすい様に計算して積み上げた薪に火を着けてもらう。

火が着いたのを確認した後、夜櫻は水の入った携帯用ポットを火にかけ、お湯を沸かし始めた。


しばらくして、ポットのお湯が沸き出した頃…“その者達”が夜櫻の前に突如現れた。



(……誰?)



──それは、男女の5人組だった。



一人は、王者の風格を漂わせる豪奢なドレス姿の…“女帝”。


(服装と雰囲気から、女王…いや、女帝かな?)


一人は、長身の黒系統装備の剣士…“墓守り”。


(黒衣の剣士って感じだね。

防具だけでなく、武器も黒いって…どんだけ、黒系統色が好きなの!!)


一人は、瑞々しい淡い桃色の唇に…ウェーブ状の腰までの長さの深い蒼穹色の髪色、深い瑠璃色の瞳、何処か儚さを思わせる綺麗な面差しが見せる微笑む様な笑顔は…見ているだけで心が和む程に優しげで、見た目は20代後半位だろうか…服装は、深い蒼穹色なのだが…光の当たり加減では瑠璃色や群青色、藍色にも見える光沢を持った歌姫のロングドレスに身を包み、胸は程々の大きさで、腰はキュット締まっているのだが…あまり大人の女性特有の色香を全く感じさせず、寧ろ何処かのお嬢様の様な育ちの良さが雰囲気に滲み出ていて、耳には涙型のダイヤのイヤリング、頭には大玉の蒼い石を涙型にカットしたものと沢山の宝石類で装飾された小さめのティアラを身に着け、腰に鮮やかな瑠璃色の細剣レイピアを提げている…“歌姫ディーヴァ”。


(…えっ?服装から、多分“歌姫”だよね?

腰に武器提げてるなんて…どんだけ物騒な歌姫なんだよ!!)


一人は、前髪はオールバックだが…左側の前髪が少しだけ下りている鮮やかな漆黒色の髪色で、背中までの長さの後ろ髪を首の真後ろ辺りで一束に纏めてあり、深い黒曜色の瞳の右目側には片眼鏡モノクルを掛けている…端整な目鼻立ちの顔には穏やかな微笑みを浮かべていて、長身で見た目が30代前半位の…漆黒色の執事服姿の…“執事バトラー”。


(うん、“執事”。まんま“執事”。どっからどう見ても“執事”以外の何者でもないね)


一人は、淡いピンク色の唇に…背中までの長さがあるストレートで鮮やかな茜色の髪色で、淡い紅梅色の瞳、愛らしい面差しには一切の感情が存在しないかの如く…完全に無表情で、見た目は20代前半位で…胸は程よく大きく、割りと細身の身体を包むのは、典型的な紺色のメイド服(スカート丈は膝下5cm)という姿の…“侍女メイド”。


(あれ?“執事”さんは、見事なまでの“執事”さんって感じで納得出来るのに…“メイド”の彼女には、全く“メイド”だと納得出来ないのは何故だろう…?)


突如現れた5人組に対し…夜櫻は内心ツッコんだり、納得したり、困惑したりしながらも…5人組の一挙一動に油断なく注意を向けている。



──しばしの沈黙の後、最初に口を開いたのは5人組の一人…“女帝”だった。


「突如の来訪…許せよ、〈冒険者〉」


“女帝”から掛けられた言葉に、夜櫻は軽く首を振った。


「全然気にしないよ?

だって、アタシの方が勝手に貴女達の住処内にベースを置いている訳だし…寧ろ、問答無用で排除される可能性だってあったんだからね」


夜櫻の発言に、“女帝”は「フッ」と笑みを浮かべる。


「かように、〈冒険者〉とは面白き存在じゃな。

自らの欲望を優先し、周りの弱き存在を虐げる者も居れば…お主の様に、誰かに依頼された訳でも無いのに自らの意思で一連の異変の原因を調査しておるしな」

「まあね。〈竜の都〉の誰かが困っているなら、助けるのは当然だし。

それに、アタシは〈放浪者ドリフター〉だしね」


夜櫻の更なる言葉に、“女帝”は楽しげに笑みを浮かべている。



すると“執事”が、夜櫻が火に掛けたまま放置していた携帯用ポットのお湯を使って、良い香りのするジャスミンティーをティーポットで淹れ始めている。

“侍女”は、肩から提げたバッグから茶請けとして美味しそうな焼き菓子を取り出している。



それらの一連の動きを見ていた夜櫻は…『何やら長話になるみたいだ』と判断を下し、〈ダザネッグの魔法の鞄マジック・バッグ〉から〈永久金剛石エターナルダイヤのティータイムセット〉であるティーセット一式,茶請けを乗せる大皿,八人は座れそうな広さのテーブルとイスを六脚分を取り出す。



──〈永久金剛石エターナルダイヤのティータイムセット〉は、サブ職〈貴族〉の専用クエストで入手出来る代物なのだが…夜櫻は、引退したサブ職〈貴族〉だった友人から譲り受けていた。



「ほう。見事な一品じゃな。使われておる素材は、最高級の物の様じゃし、素材を引き立たせる上品な細工が施されておる様じゃし…もしや、妾の容姿に合わせて用意したのか?」

「流石に、旅に使う携帯用のイスやテーブルはアレかと思ってねぇ〜」


夜櫻のその言葉に、“女帝”は愉快そうに笑みを浮かべ続けていた。




◆◇




“執事”と“侍女”がティータイムの用意を整え終えた頃…〈永久金剛石エターナルダイヤのティーカップ〉でジャスミンティーの香りを楽しみながら“女帝”が再び口を開いた。


「さて、お主に声を掛けた本題に入ろうかのぅ」


そう言って、“女帝”はティーカップを一旦テーブルに置いて話し始める。

夜櫻も、ティーカップを置いて姿勢を正す。


「…実はのぅ、この〈竜の渓谷〉の何処かに〈不和の王ジーニアス〉が潜んでおる」

「…何の為に?」


“女帝”の言葉に、夜櫻は硬い面持ちで問い掛ける。


「アヤツの真の目的までは分からぬ。

しかし、〈竜の渓谷ここ〉での目的ならば分かっておる。

…〈六傾姫ルークィンジェ〉の力を受け継ぐ者…“蒼き瞳の姫”を狙っておる」

「“蒼き瞳の姫”?」


聞き慣れない単語に、夜櫻は眉をひそめる。


「それについては…ほれ、そこの“ソフィリア”より聞いてくれ」


“女帝”より指名された“歌姫”─ソフィリアは、腰掛けていたイスより立ち上がると、歌姫のロングドレスのスカートを軽く摘み、貴族令嬢等が取る様な礼儀正しいお辞儀をしてみせた。


「御初にお目に掛かります、ヤマトより来訪されし〈冒険者〉様。

ワタクシは、〈蒼穹の瑠璃竜ブルーラピスドラゴン〉達の長を務めております…ソフィリアと申します。以後、お見知りおきを」


そう言って挨拶を済ませると…ソフィリアはイスに腰掛け、本題を話し始める。


「“蒼き瞳の姫”とは、ワタクシの孫に当たる“シェリア”という名の娘ですわ。

そして…〈六傾姫ルークィンジェ〉の〈五姫〉の力を僅かばかりですが、受け継いでいます。

ワタクシの側近で、未来さきを視る事が出来る〈星見〉でもあります…ステイシィアが先日、『〈五姫〉の力蘇る時、〈不和の王〉現れる。ゆめゆめ石舞台に近付くなかれ』と『〈不和の王〉から“蒼き瞳の姫”を守れ』という二つの御告げをしました。

この二つの言葉は、この〈竜の渓谷〉や〈竜の都〉周辺で昔から語られてきた警句でもあります」


そこまで一気に語り終えると…ソフィリアは一旦話を区切り、一口ジャスミンティーを飲んで喉を潤してから話を続ける。


「最近の〈竜の渓谷〉での竜達の異変には、〈五姫〉の力の欠片とも言える〈ルークィンジェ・ドロップス〉の影響が大きいです。

この事態が『〈五姫〉の力蘇る時、〈不和の王〉現れる。ゆめゆめ石舞台に近付くなかれ』という警句内の“〈五姫〉の力蘇る時”と一致する場合、『〈不和の王〉から“蒼き瞳の姫”を守れ』の内容にある“蒼き瞳の姫”─シェリアの身が危険です。

…どうか、〈不和の王〉よりシェリアを守る為に力をお貸し下さい!!」


ソフィリアの必死の頼みを無下にする程、夜櫻は冷酷では無く…こんな時の彼女の返事は決まっていた。


「うん、いいよ。

で?具体的には、どんな風に力を貸したらいいの?」


夜櫻の承諾の返事に、ソフィリアと“女帝”達が安堵の息を漏らす。


「ステイシィアの御告げでは…明日、〈不和の王〉が石舞台に現れるそうです」

「…そこで、お主には“蒼き瞳の姫”─シェリアを守ってもらいたいのじゃ」


ソフィリアと“女帝”から掛けられた言葉に、夜櫻は力強く頷く。


「明日、石舞台までワタクシが道案内を務めます」

「くれぐれも、〈不和の王〉などに“蒼き瞳の姫”を渡すでないぞ」

「了解!ドンと任せて!!」


夜櫻の自信満々の返事に、“女帝”達は微笑ましげに笑みを浮かべている。


「さて、ソフィリアはこのまま留まるとして…妾達はこれで失礼するぞ。

ソフィリア、後の事はお主に任せる。

ヤマトよりの来訪者の助けとなって、〈不和の王〉より“蒼き瞳の姫”を守るのじゃ」

「承知しました。ヴィクトリア女帝」


ソフィリアの了承の返事を聞き届けると…“女帝”─ヴィクトリア達は、竜本来の姿へと変化する。


ヴィクトリアは、“緋尖晶竜クリムゾン・スピネルドラゴン”へと…


“墓守り”は、“常闇竜カオスドラゴン”へと…

“執事”は、“黒水晶竜モリオンクォーツドラゴン”へと…


“侍女”は、“紅玉髄竜カーネリアンドラゴン”へと…


本来の姿へと戻った竜達は、渓谷の奥深くへと飛び去っていった。




◆◇




飛び去るその姿を見送った夜櫻は、ソフィリアへと目を向ける。


「…さてと。明日、本格的に動くなら…早めに就寝した方がいいかな。

ソフィリアさん、これを使って」


そう言いながら〈魔法の鞄〉から取り出したのは、マットと毛布と枕の…〈雲毛羊の寝具セット〉。


「…これは?」

「流石に地べたに直に寝ると、身体中が痛くなるからねぇ〜。

それだと、明日に色々と支障をきたすでしょ?

これは寝心地は良いし、グッスリと眠れるから疲労回復もバッチリの優れものだよ!」


そう説明しながら、夜櫻も〈雲毛羊の寝具セットおなじもの〉を地面に敷いている。


「では、お言葉に甘えて…使わせて戴きますね」

「うん!是非使って!!

それじゃあ、お休み…明日は、道案内宜しくね」

「はい、精一杯務めさせていただきます。

では、お休みなさい」


そう言って、お互いに〈雲毛羊の寝具セット〉にくるまり…しばらくすると規則正しい寝息が聞こえてくる。






──早めの就寝を取って、眠りに就いた夜櫻は…明日、石舞台で同じヤマトよりやって来た二人の〈冒険者〉と共闘する事になる等…この時は知りもしないのであった……

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