表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れる王女と、眠れぬ王子  作者: 八知 美鶴
60/102

60話

「それで姫様、あたしは何をすればいいんですか?」

「ええ、紙に書いて渡すわ」

「紙に…ですか?」

「ええ、彼女のこともそうだけど、他にも何人か調べてほしいの。だけど名前を口に出して、彼女に知られては、邪魔をされる可能性が高いから」

 ルキアは転ばないよう、気をつけながら机に向かうと、紙に調べて欲しい名前を書いていった。

 それを丁寧に折って、扉の近くにあった水差しが置いてある台に乗せた。

「内容を読んだら、すぐに燃やしてちょうだい。誰かに見つかると面倒なことになるから」

「…わかりました。さっそく調べますね」

 そう言って盆を持ち上げ、カルは扉を開けた。

「わかりしだい報告しますが、その前にまずは何か召し上がりませんと。すぐに朝食の準備を致しますね」

「いいえ、カル。あなたは……この件が片付くまで私付きの侍女を外れてもらうわ」

「そんな…!」

「さっきも言ったように、カルが側に近づくと彼女が暴れ出すの。このまま側に居続けたらあなたはもっと傷ついてしまう。だから……しばらく外れた方がいいと思うの」

「いやです! お願いです、姫様の側にいさせて下さい。大丈夫です、姫様じゃないのならどんな辛い目にあったって平気ですから」

「駄目よ。……もし、私達以外の誰かがいたときに彼女が暴れ出したら、きっと周囲は不審に思うわ。今はあらぬ噂が立てられるのを避けたいの。お願いよ、カル…」

「ですが……かえって周囲の不審をあおるのでは?」

「大丈夫よ。オーク国に馴染むために、侍女を一時的に代えたいと言えば、さほど問題はないはず。それに……いずれ私がオーク国に嫁げば、カルも自分の身の振り方を考えなくてはならないわ。これは、そのための準備期間だと思ってちょうだい」

「姫様あたしは!」

「カルの言いたいことはわかっているわ。病が治るまで仕える、そう約束したわね。その約束は、彼女をどうにかすることで解決するわ。だからもうじき約束が果たされるのだから、カルは自由に生きてほしいの…。これは母様や兄様も同じ事を思っているの」

 それに…とルキアは付け加える。

「…それだけ紙に書いた内容を早急に調べてほしいの。私の側にいては、時間がかかってしまうわ。早くしなければ、私が私でいられなくなってしまう」

 強く胸を押さえるルキアに、カルはこれ以上何も言えなかった。

「わかりました。……姫様がそこまでおっしゃるなら…」

「ありがとう…」

「ただ……陛下のお耳には入れた方がいいと思うのですが……」

「それは……」

 躊躇うルキアだが、カルは思案するな表情を浮かべる。

「…姫様を運ぶときに、警備兵の手を借りたと……。たぶん、そのことはすでに陛下の耳に入っていると思いますが」

「…となると、ここに来る可能性があるということね……」

「間違いなく。おそらく姫様が目が覚めたと報告があれば、すぐにでも会いに来られるのではないかと」

 確信するように頷くカルに、ルキアは唇を噛みしめる。

 できればアルクには、あまり接触したくなかった。

 自分の中にいるレイールがどう反応するのかわからないからだ。

 かといって会うのを避ければ、ますます不審に思われてしまう。

 だったら多少の危険を冒してでも、会った方がいいかもしれない。

「わかったわ。……もし、アルクから連絡があったら、日中にしてもらってちょうだい。夕方は、できるだけ避けたいの」

「はい…。ですが姫様、日中は大丈夫でも夜はどうするのですか? その、彼女が出てくる恐れが……」

「大丈夫。それについては考えがあるの。……アガパンサス商会の力を借りるわ」

「アガパンサス商会…ですか?」

「ええ。頼みたいことを書くから、それをお母さまに渡して欲しいの。まだ城下町にいるはずだと思うから」

「わかりました……。では、その間に朝食の準備をします。運ぶのは……寝室でよろしいですか?」

「ええ…いえ。やっぱり居間で朝食をとるわ」

「ですが足が……」

 ためらうカルだが、ルキアは大丈夫だというように軽く首を振る

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ