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眠れる王女と、眠れぬ王子  作者: 八知 美鶴
42/102

42話

 それを口に出すと、フィンソスは静かに首を横に振った。

「いや、それは違う。ルキア殿を妻にと望んだのは、実はアルク陛下のお父上、前国王の遺言だったんだ。これは最近まで陛下には知らされていなかったんだ」

「なんですって? ……何故なの?」

 驚きと困惑の表情を浮べるカルだが、フィンソスも同じような表情で返した。

「わからない。そもそもその遺言自体が、とても奇妙だったと父が言っていた。クローブ国の王女を次期国王の妻にすること。王女がオーク国へ来るまで、アルク王子に口外してはならないこと。……これは憶測だが、陛下の病状と、ルキア王女の病状が関係しているかもしれないと、私を含め他の臣下達も思っている。ただ……なぜ陛下に話してはならないのかが、未だにわからないんだ」

「そう……そんな遺言があったのね……。もしかしたらシエル陛下もそんな考えがあって、ルキア様を嫁がせたのかもしれないわね」

「二人の共通は、睡魔と不眠、だからな。ただ……どうしてそうなったのかはまだ不明だが……」

「ええ。その原因を探すために、シエル陛下や王妃様が懸命になって見つけ出そうとしているわ。そして……あたしも」

「君が?」

「ええ。あたしは医師ではないけれど、姫様の側でお世話をしたり、病気の不安を少しでも取り除けたらいいと、そう思いながら仕えているの」

 ゆっくりと立ち上がり、カルは悲しげな表情を浮べてフィンソスを見下ろした。

「だから、あなたの申し出は受けられないわ」

「! カルスティーラッ」

 勢いよく立ち上がると、フィンソスはカルの両肩を掴んだ。

「私の気持ちを知っていても、なお否定するのか?」

 カルはそっと目蓋を伏せると、軽く顔をそむけた。

「……いいえ。こんなあたしを今も思っていて入れてくれて、とても嬉しいわ。だけど…あたしにも譲れない気持ちがあるの」

 決然とした表情で、カルはゆっくりとフィンソスに向き直った。

「あたしは姫様に仕えるとき、自分に誓ったの。姫様の病が治るまで、何があっても側を離れない、って。……フィンソスの申し出を受けることは、その約束を破ることになるわ」


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