41話
はっとした表情でカルは口元に手を当てた。
「まさか」
「そう。私はあらゆる手段で君達を捜させた。そして、クローブ国に保護されていることを知った私は、すぐに迎えに行くと手紙を送った。しかし返事は拒否された」
「……」
「理由は、君の精神状態が芳しくないことと、祖国に帰る気がないと書かれていた。自ら帰ろうとするならば、国境まで送り、迎えの書状を送るとあった。それまでは何があってもクローブ国で庇護し、個人的な所用でクローブ国に入国することを禁ずる、そうはっきりと書かれていた。その手紙を読んだとき、それがどんなにはがゆかったか、君にはわからないだろうな」
「フィンソス……」
「元々クローブ国とは交易をしているとはいえ、使者を送るほどの交友関係じゃなかった。だから私は待った。一年、二年……いつか必ず会うと思い続けた。……そしてやっと機会が巡ってきた。王女の輿入れとして、君がオーク国へ向かうと、国王直々の手紙が届いた」
「何ですって……シエル陛下が」
呆然と呟くカルに、フィンソスは微かに頷く。
ややあってカルは、合点が言ったように軽く唇を噛みしめる。
ルキアの輿入れのとき、カルは密かにシエルに相談したのだ。
何故嫁ぎ先がオーク国なのか、と。
ルキアの病状を考えれば、異国に嫁がせるよりは、国内のほうが病状の変化にすぐ対応できるし、気疲れする必要がないと助言をしたのだ。
だがシエルはオーク国からの強い希望だから、むげに断ることはできないと言われたのだ。
それに、とシエルはカルに遠回しに祖国に一度帰郷するべきだと強く進めた。
すぐに断ろうと考えたカルだが、母の遺言のことを思い出し、これが最後だと自分に言い聞かせて戻ってきたのだ。
なのにフィンソスとシエルが手紙のやりとりをしていたと知った今、カルはルキアを嫁がせたのも罠だったのかと勘ぐり始めた。