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眠れる王女と、眠れぬ王子  作者: 八知 美鶴
37/102

37話

「ど、どうしてそんなふうに考えられるの! 王妃様はそんな風にルキア様のことを思ってないわっ。素性も知らないわたしを看護してくれて、冷たい態度をとっても優しく接してくれた……。なのに娘のあなたがそんなふうに考えるなんて…悲しすぎる」

 顔をゆがませて非難するカルを、ルキアは少しだけ困ったような表情を浮べた。

「それはお母さまと私の考え方の違いだと思うわ。もちろん、お母さまは私を実験台のように扱っているわけじゃない。それは良くわかっているつもりよ。でも私は生まれたときから王族なの。そしてお母さまはお父さまと婚姻するまで商人だった。この違いはとても大きいの。…私はね、王族付きの乳母によって育てられたの。とてもしきたりには厳しい乳母だった。最初お母さまは、私を手元で育てたかったみたいだけど、幼いお兄さまと、すでに春眠病を患っていたお父さまの世話で手一杯だったの。私は幼い頃から、乳母に王族とはどうあるべきか、何が優先順位なのかを教え込まれたわ。そして王女としての役割も。兄である前に次期国王に仕え、国のために何をするべきなのか教え込まれたわ。だから私の我が儘で兄様やお母さまを困らせるなんて、許されなかった。……愛情を注がれなかったなんて言わないけれど、何の躊躇いもなく愛情をせがむことは私には許されなかった。そんな私があまりにも子供らしくない振る舞いをするから、お母さまが乳母を詰問し、私の担当から外したの。それから数人の家庭教師と、身の回りの世話をする侍女に変わったわ。お母さまも前よりも訪れるようにはなったけど、その時にはもう今の私になってしまったというわけ」

 苦笑しながらルキアは、冷静な眼差しをカルに向ける。

「それでも前よりは、ずいぶん感情豊かになった方なのよ。前は笑ったり、自分の意思を伝えることもなかったし……昔は何を言われても返事しか返さなかったような気がする。無表情で、自分で言うのもなんだけど、可愛げがなかったと思うわ。だけど変わらない部分もあるの。お兄さまや、国のために役に立つことをしたい、そのためなら辛い病気治療も我慢するし、政略結婚もするわ」

「ど…どうしてそんなに冷静に自分のことを話せるの? それに…政略結婚ってあなたはまだほんの子供なのよ!」


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