33話
裕福に暮らし、侍女達に傅かれている王女が、流浪の末母を亡くした自分と何を分かち合うというのだ。
押し黙ったままでいるカルを、ルキアは静かに見つめる。
「…そう。よっぽど辛いことがあったのね。名を言えないほど」
「!」
顔が強ばるカルから視線をそらし、ルキアは二人に無邪気に微笑む。
「ずっと一人で寂しかったから、お友達ができてとても嬉しいわ。さっそくだけれど、お部屋を案内してもいい?」
「ええ、もちろんよ。だけど」
「わかってるわ。具合が悪くなったらちゃんと言うから」
そう言ってルキアはカルに振り向く。
「来て。私のお部屋を案内するわ。私のお気に入りの場所で、楽しいお喋りをしましょう」
先に歩き出したルキアの後に続くかどうか躊躇っていると、王妃にそっと促されるものの、カルの足は動かない。
「私は……行きません。…具合が悪くなったら困るし……」
「あら、大丈夫よ。具合が悪くなるのはいつものことだもの。別にあなたにうつることはないから心配しないで。それに私の病気は特殊だから、貴方よりも兄さまの方が心配だわ。早く部屋を出た方がいいと思うんだけど……」
心配げにシエルを見上げながら、ルキアは一歩後ろに下がる。
「今日はお兄様のお元気な顔を見られただけで、とっても嬉しかったです。次に会うときまで元気なお兄さまでいて下さい」
「…ああ、わかったよ」
「それじゃ……またあとで来るわね」
「お母さまも…あまり無理をしないでね。とてもお忙しいんだもの。無理に尋ねてくださらなくても、わたしは平気よ…」
「ルキア……」
「それではごきげんよう。お兄様、お母様」
追い出すような形で別れを告げ、ルキアはカルに視線を移す。
「さあ、私の部屋に行きましょ」
侍女が開けた扉に向かって歩き出すルキアに、カルは戸惑った口調で声をかけた。
「どうしてあんな冷たいことを言うの…親子なんでしょう?」