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眠れる王女と、眠れぬ王子  作者: 八知 美鶴
33/102

33話

 裕福に暮らし、侍女達に傅かれている王女が、流浪の末母を亡くした自分と何を分かち合うというのだ。

 押し黙ったままでいるカルを、ルキアは静かに見つめる。

「…そう。よっぽど辛いことがあったのね。名を言えないほど」

「!」

 顔が強ばるカルから視線をそらし、ルキアは二人に無邪気に微笑む。

「ずっと一人で寂しかったから、お友達ができてとても嬉しいわ。さっそくだけれど、お部屋を案内してもいい?」

「ええ、もちろんよ。だけど」

「わかってるわ。具合が悪くなったらちゃんと言うから」

 そう言ってルキアはカルに振り向く。

「来て。私のお部屋を案内するわ。私のお気に入りの場所で、楽しいお喋りをしましょう」

 先に歩き出したルキアの後に続くかどうか躊躇っていると、王妃にそっと促されるものの、カルの足は動かない。

「私は……行きません。…具合が悪くなったら困るし……」

「あら、大丈夫よ。具合が悪くなるのはいつものことだもの。別にあなたにうつることはないから心配しないで。それに私の病気は特殊だから、貴方よりも兄さまの方が心配だわ。早く部屋を出た方がいいと思うんだけど……」

 心配げにシエルを見上げながら、ルキアは一歩後ろに下がる。

「今日はお兄様のお元気な顔を見られただけで、とっても嬉しかったです。次に会うときまで元気なお兄さまでいて下さい」

「…ああ、わかったよ」

「それじゃ……またあとで来るわね」

「お母さまも…あまり無理をしないでね。とてもお忙しいんだもの。無理に尋ねてくださらなくても、わたしは平気よ…」

「ルキア……」

「それではごきげんよう。お兄様、お母様」

 追い出すような形で別れを告げ、ルキアはカルに視線を移す。

「さあ、私の部屋に行きましょ」

 侍女が開けた扉に向かって歩き出すルキアに、カルは戸惑った口調で声をかけた。

「どうしてあんな冷たいことを言うの…親子なんでしょう?」


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