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眠れる王女と、眠れぬ王子  作者: 八知 美鶴
23/102

23話

「結局聞きそびれしまったわ…」

 ルキアは中庭を散歩しながら、疑問を口に出す。

「何故、クローブ国の王女は温室で自殺をしたのかしら。でも最初はお互い思い合っていたのに、どんな理由があって相手を憎むようになったのかしら…」

 アルクは呪詛だといったが、歴代のクローブ国の王族に霊力の強い人間がいたのかしら?

 それに和平のために王族同士の人質交換なんて、聞いたことがなかった。

 しかも極秘で。

 だが、アルクが言うのだから嘘ではないだろうし、単にルキアが知らないだけなのかもしれない。

「お兄様なら知っているのかしら…?」

 オーク国に文献がが残っているのなら、クローブ国にもある気がする。

 そしてそれは王位を継いだシエルだけ。

「…いえ、母様なら何か知っているかも」

 前王である父が崩御し、兄が継承する間、母がクローブ国をまとめていた。

 しかし母はクローブ国にはおらず、今はどこにいるかすらわからない状態だ。

 となると、やはり兄に尋ねるしかないのだが、内容が内容なだけに書状にしたためることに躊躇いがある。

 万が一この情報が自分のせいで漏れたりしたら、国交すら危ぶまれる可能性がある。

 迂闊なことができないだけに、ルキアの苛立ちはつのる。

「自分の国が関わっているのに、何もできないなんて……」

 歯がゆさに爪を噛みながら、ルキアは中庭を何度も歩き回る。

「…呪いなんて信じられないけど……でも王女と王妃の自殺。これ以降から病気が発症したのであれば、なにか病気解決の糸口が見つかるかもしれない」

 そこで図書室があることを、ルキアは思い出した。

 今までは温室で目新しい植物を採取しては、図書室で薬効などを調べていた。

 だが凶華が現れたことによって温室は閉鎖になってしまった今、ルキアが次にやるべきことは王女がオークに嫁ぎ、亡くなるまでの文献を調べること。

 そうと決まればすぐにでも行こうと、中庭を慌ただしく出ようとしたルキアは、同時に飛び込むように入ってきたカルにぶつかりそうになった。

「姫様!」

「カル! びっくりするじゃない、どうしたのよ」

「姫様こそ、どうしたんですか? そんなに慌てて」

「調べ物をしようと、図書室に行こうと思って。カルこそどうしたの? そんなに慌てて」

「ああ、そうでした! 姫様を探していたんですよ。今すぐこちらに来て下さいな」

「ええっー、カル! 私は急いでるのよ。だから…」

 不服そうな顔をするルキアに、カルは意地悪な笑みを浮べる。

「いいんですか、そんなことをいって。図書室は待ってくれますが、レント様は待ってくださいませんよ」

「えっ、お母様が来ているの!」

 仰天するルキアを見つめ、カルは嬉しそうに頷いた。

「はい、姫様にお会いするのをとても楽しみにしています」

「私だってすごく会いたいわ!」

 そこでルキアは図書室で調べることよりも、直接母に疑問に答えてもらえばいいことに気づく。

 母なら何か知っているかも知れない。クローブ国の王女のことを。

 だけど……。

「話してくれるかどうか…」

「え? 何かおっしゃいました?」

「ううん、なんでもないわ。さあ、すぐにでも行きましょう!」

 カルの腕を組み直し、ルキアは表情はにこやかに、けれど心の中で是が非でも答えを聞こうと唇を引き締めた。


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