表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/28

(09)2050年の世界の2日目~その4~

 星南せいなん区役所のほうへ伸びているLRT通りに面した創作料理店で昼食ランチを食べた2人は店を出てから手をつないで楽しそうに会話しながらこの通りを南北のLRT通りのほうへ向かってい歩いていた。南北のLRT通りの向かい側は星南区を代表するテニスコートやグランド、プールなどの運動スポーツ施設や市民の憩いの場になるカフェや本格的な大きさの噴水池もあるとても大きな村瀬むらせ中央公園センターパークが鎮座している。2人が突如この世界にやって来た4月の時期は星浜市内でも有数の桜の名所にもなっている。この公園には600本ほどの桜の木が植えられていて、ちょうど2人がこの公園にやって来たこの日は桜の花が咲き始めた頃でまだ満開ではなかった。LRTが星南区役所方面への分岐のために2階建てになっている停留所名も「村瀬中央公園」であり、LRT通り同士が交差する交差点名も「村瀬中央公園交差点」である。この村瀬中央公園は2050年の世界に突如2人が気が付いたらやってきた初日、つまり昨日にお金を下すために入った銀行の通り向かいにある公園のことだ。


2人は村瀬中央公園の近くにきて

山崎「ここは昨日、銀行の通り向かいに見えたとても大きな公園です。スマホの地図で見てみると『村瀬中央公園』となってますね」

豊田「はい。ここ、とっても大きな公園ですね?」

「昨日、銀行が終わってから『ここの大きな公園で山崎さんと2人でおしゃべりしたいな~』って思ってたの」

山崎「豊田さん、この中央公園のベンチに座りながらおしゃべりしましょうか?」

豊田「はい。公園のベンチでおしゃべり、いいですね~」


2人は村瀬中央公園の空いているベンチに腰を下ろし、楽しくいろいろとおしゃべりを始めた。公園に限らずベンチの多くは1人分ごとにひじ掛けがあって2人が仲良く寄り添って座るのがやや難しい。手をつないで座る時もどちらかの1人がひじ掛けの上に腕を乗せなければならずしんどい。ましてや膝枕ひざまくらなどはまずできない。ベンチに1人分ごとにひじ掛けで仕切られているのはベンチで横になって寝転ねっころがり、ベンチを占領ひとりじめするのを防ぐためらしいが、仲の良い男女カップルには迷惑な造りでしかない。

山崎「さっき入った創作料理のお店、入れるまで20分くらい待ったけどもそれでも『待った甲斐はあった』くらい味はすごくよかったですよね?」

豊田「はい」

山崎「まず最初はライトレールとかバスなどに乗らず歩いてみることが発見への近道だと思いますよ」

豊田「歩くことはいい運動にもなるし、いい発見もできるから一石二鳥どころか一石何鳥いっせきなんちょうでもあるよ」

山崎「それにしてもたった一晩でいつもの日常的な街並みの三隈みくまから2050年の世界のこの未来的な星浜まちにやって来ただけでも何だか気持ちとか、周りの雰囲気が明るくなった感じがしてきませんでしょうか?」

豊田「はい。確かに私もこの星浜まちにやって来てから急になんだか明るい気持ちや雰囲気に浸ってるようです?」

山崎「2015年の世界の時にいた私の両親や兄弟、それに生活ホームに住んでるほかの2人やホームの管理責任者や理事長は2050年の今、どうしてるでしょうかね~?」

豊田「2050年の世界へタイムワープしてきたのは私と山崎さんの2人だけしかないから、タイムワープしてこないで2015年の世界に取り残されてるほかの人たちはもう生きてないかもしれない・・・?」

「私の親はもういなくなっちゃてるかも・・・シクシク・・・」

山崎「豊田さん、ごめんなさいね・・・豊田さんの気持ちを暗くしてしまうようなことを言っちゃいまして・・・」

「ここからはまた明るくなるお話をしましょうね」

豊田「・・・はい・・・そうですね・・・」


山崎は「先ほどの会話で豊田に傷を付けてしまったかもしれない」と思った。でも、豊田は山崎の「明るくなるお話をしましょうね」の一言によってまた明るさを取り戻した。

山崎「広いライトレール通りや高層マンション群に囲まれた中にあるこの広い公園はとにかく空の広くてとても明るいですよね~?」

豊田「はい。そうですね~ww」

「2015年の世界はいつも同じことの繰り返しだだったり同居してた両親やかつて結婚生活していた時の旦那さんのことを思うと『どうして私は周りが厳しい人たちに囲まれて冷たい毎日を送らなければならなかったの・・・』ってもう真っ暗でしたよね~?」

山崎「私もやはり2015年の世界で生活ホームに住んでて管理責任者はそれほどには厳しくはなかったけども、その運営上の一番頂上的な人である理事長がちょっと厳しかったでしょうかね?それに同じホームに住んでいるほかの人たちとも全く仲が良くなく、ただ一人仲良くお話しできたのは夕食作りに来られているややおばさん的な人でしたから」


しばらく2人はベンチに座りおしゃべりをしていた。

山崎「豊田さん、のどかわきましたでしょうか?」

「もしよかったら私が自販機で何か買ってきてあげますよ」

豊田「そうですね~。私もそろそろ喉が渇いてきたところだったの。山崎さん、適当に何か自販機で買ってきて」

山崎「そうですね~、じゃあ自販機で飲み物を買ってきますよ」

豊田「やった~。山崎さんに温かくしてもらえたよ」


山崎は近くにある自販機で350mlサイズのオレンジソーダを2本買ってきて1本を豊田へ手渡した。

豊田「わ~、オレンジの炭酸飲料、冷たくて刺激があっておいしいわ~」

「山崎さんありがとうね。・・・大好き・・・」

山崎「やはり暖かな公園では冷たい炭酸飲料がとってもおいしいですよ~」

「豊田さん、私のこと『大好き』と言っていただけましてどうもありがとうございますね」

豊田「山崎さん・・・、周りに人の目がなかったら・・・そろそろ・・・?」

山崎「『そろそろ』って何でしょうか?・・・『周りに人の目がなかったら・・・』とも言ってるんですが?」

豊田「あの・・・ハ・・・」

「ハ・・・ハグ・・・ハグ、山崎さんに抱きしめられてしてほしい」

山崎「『そろそろ』って豊田さんが私に抱かれてほしかったんですね・・・?」

豊田「はい」

山崎「ここだと芝生が広すぎてちょっと人の目が通ってしまうから目立たないところへ行って抱き合いっこしましょうか?」

豊田「はい。それいいね~?」


2人はベンチから立ち上がり手をつないでどこか人目に付きにくい、つまり2人が気兼ねなくハグできる場所へ移動した。

山崎「ここだったら周りに木がいっぱい植わってるから人目にも付きにくそうですね?」

「ここでハグします?」

豊田「はい。ここでハグするのいいね~」


豊田は山崎の胸に顔を当てるようにして抱き合った。山崎も抱き着いた豊田の背中を両手で最初は軽く抱えた。抱き合ってみると山崎よりも豊田のほうが背が低いのがわかる。

山崎「どう、私、温かいでしょ?」

豊田「はい。こんな優しくて温かな男性オトコに抱かれるの初めて・・・」

「山崎さん・・・とても温かい・・・。かつて、結婚生活してた時の旦那さんはもう厳しくて冷たくこんなに優しく抱かれたことなんてなかったよ」

山崎「私の温かさ、というか愛情を豊田さんに分け合ってるような気がしますね?」

豊田「こうやってハグして優しい人の愛情、一度ほしかったの・・・」

山崎「私も豊田さんのことが・・・大好き・・・です」

豊田「山崎さんからも『私のことが大好き』と言ってもらえて私とっても嬉しいわ」

「気が済むまで山崎さんと抱かれていたい・・・」


そこへ小さな子供を連れた母親が通りかかった。

子供「あ~、あそこでお兄ちゃんとお姉ちゃんが抱っこしてる~」

子供の母「こらっ、そんなところ見るんじゃないの!」


2人はまさかそこを親子連れが通りかかったことには気が付いていなかった。気が付いたら15時半を過ぎていた。

豊田「今、何時でしょうか?」

山崎「あ、今3時半過ぎですね」

「そろそろマンションに戻りましょうか?」

豊田「そうですね~」

「でも、今日は山崎さんのマンションに行ってみていいかな~」

山崎「はい、大歓迎ですよ。私もマンションの1室で1人でいるのも何だからたまにはね・・・ということで、豊田さんも私の所へ来てみてください」私の部屋はマンションの10階で部屋の北向きに窓がありますんで、ここからは星浜の中心部のほうの夜景が見えるんですよ」

豊田「やった~。山崎さんのマンションに行ってもいいって~」

山崎「それでは、行きましょうか」

豊田「はい」

「あ~、何だか嬉しいわ。出会えてからたった3日で優しくて温かな山崎さんの住んでるところへ連れてってもらえるなんて」


2人は山崎の住んでいるマンションへと歩いた。マンションの出入り口にはこのマンションの住民であるという証拠となるマンション指定のスマホをかざすところがあり、山崎のスマホをかざして2人はマンションに入った。

豊田「ここのマンションに1階にマンションの住民専用のフリースペースやカフェがあるんですね~。私の住んでるマンションも同じですよ」

山崎「はい。何も予定のない日にずっと部屋にこもってるのも何なんで時々、1階に降りてきてこういったマンションの住民専用の交流スペースでほかの住民の方たちとコミュニケーションをとったりカフェでお茶したりとマンションの中だけでも楽しめるスペースもこれから使ってきたいですよね~?」


2人はエレベーターで10階の山崎の部屋へ向かった。このマンションのエレベーターは防犯上、マンション指定のスマホをかざさないと動かず、かざせばその住民の住むフロアまで自動的に動いてくれる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ