(06)2050年の世界の2日目~その1~
山崎と豊田の2人が突如、タイムワープで2050年の世界にある星浜市という未来都市へやってきてから一晩明けた翌日4月2日。この日は土曜日だった。山崎はマンションの部屋で朝、起きたら朝食を食べたら、これからの仕事探しでの会社の面接に備えてスーツを買うべく銀行口座からさらに50,000(5万)円を自分のスマホへチャージした。
ここで山崎が手許に必要な物を買う優先順位として高い順に書いていくと、1・仕事探しで会社の面接へ行く時に着るスーツ、2・食器を片付けるための食器棚、3・洗濯機、4・ネットで調べたことを印刷するために使うプリンター~とざっとこんなところであろうか。
山崎は仕事探しで会社の面接へ行く時にスーツを買う必要が豊田にもあるのは確かで豊田へ一緒にスーツを買いに行ってほしいと思うべくメールしてみた。
「[件名:おはようございます。山崎です]」
「昨日は私は豊田さんと知り合えてから早くも私とご一緒していただけましてどうもありがとうございます。豊田さんも仕事探しの際に会社の面接へ行く時、スーツが必要になりますが、もしよろしかったら豊田さんと一緒に紳士服店に行ってスーツを見ながら選んで買うというのはどうでしょうか?といったところで失礼いたします」
このメールをしてから10分もしないうちに豊田からメールの返信がやってきた。
「豊田ですが、こちらこそおはよう。確かに山崎さんの言うとおりにこれからの仕事探しで会社の面接に行く時にはスーツは必需品ですよね?今日は私は何も予定がないから山崎さんと一緒に紳士服店へ行くの大丈夫ですよ。山崎さんもスーツほしいと思うでしょうからこの際、一緒に紳士服店に行って『買うべきもの』を見ながら気に入ったものを買うのもいいと思いますよ」
すぐに山崎は豊田へメールの再返信をした。
「山崎ですが、豊田さんと一緒に紳士服店へ行くのOKですか~。とても嬉しいですよ。それでは何時頃にどこで待ち合わせしていきましょうか?」
こちらもまたすぐにメールの返信が来た。
「豊田ですが、山崎さん今日、紳士服店へ行きたいんですね?そしたら私の住んでいるマンションの出入り口の前に10時でどうでしょうか?ちなみに私のマンションは山崎さんの住んでいるマンションのライトレール通りを挟んだ北に斜めの位置にある25階建てで、できたばっかりな感じのマンションですよ」
山崎はすぐに豊田からのメールへ返信した。
「そうですか~。それはどうもありがとうございます。それでわ10時に豊田さんのマンションの出入り口前ですね。9時50分頃には私は豊田さんのマンションの出入り口前に来ていると思いますが?」
豊田からもすぐにメールの返信が来た。
「わかりました」
9時40分前、山崎はマンションの10階にある自分の部屋を出てLRT通りを挟んだ北に斜め向かいにある豊田の住んでいるマンションの出入り口前へと向かった。山崎が豊田のマンションの出入り口前にやってきて約5分後、中から豊田が出てきた。
山崎「豊田さん、おはようございます」
豊田「こちらこそおはよう」
山崎「今日は仕事探しで活躍することになるスーツを選びに紳士服店へ行くのよろしくお願いいたします」
豊田「こちらこそよろしくね」
「今日は早速、山崎さんと一緒に紳士服店へスーツを見に行ってくれるなんて私とっても嬉しいわ~」
山崎は自分の持っているスマホに「この付近にある紳士服店」と声に出して近くにある紳士服店を検索した。検索結果、この付近の紳士服店は通りの中央部を走っているLRTに北へ2駅乗って行ったところにあることが分かったので、早速LRTに乗ることになった。
山崎「今、この付近の紳士服店をスマホで検索したらライトレールに乗って2駅のところに紳士服店があることが分かったのでそこへ行きましょうか?」
豊田「昨日、銀行の向かいにある公園のところから見えた赤い芋虫みたいな乗り物に早速乗れるんですか~?私もこれ、気になってたんで。乗ってみたかったんですよね?山崎さん、このライトレールどうやって乗るんでしょうか?」
山崎「私もまだこのライトレールには乗ったことがないんでわからないんですが、停留所に行ってみたら乗り方が書いてあるかと思いますよ?」
豊田「そうですか~。じゃあ、ライトレールの停留所へ行きましょうか」
山崎「はい」
2人はLRTの停留所へ向かい、停留所に発車時刻とともに書かれている「ご乗車のご案内」を読んだ。それによれば現金でのご利用の場合は4連接車両の一番後ろのドアから乗って整理券を取り降車時に運賃箱へ利用運賃を支払ってから一番前のドアから降りるシステムになっている。ICカードやスマホの電子マネー機能での利用時は前から2個目か3個目のドアから乗車しドア付近にあるICカード、スマホをかざすリーダーにタッチし降車時は現金利用時と同じように運賃箱にあるリーダーへICカードやスマホをタッチして運賃を支払って降車する方式となる。降車時には路線バスと同じように降車ボタンがあり、これを押さないと降りたい停留所にもし客が待っていなければ通過してしまうことになる。2人はスマホに電子マネーの機能が付いているためにLRTにスマホで乗ることにした。
LRTがやってくるまで2人は停留所で待っているわけだが、この時に「何か足りない」ような感じの違和感を感じた。普通、路面電車に限らず銀座線などのような第3軌条式の地下鉄を除いた一般的な電化されている鉄道だったら線路の上に電線(電車に電気を送るために張られているケーブルのことで「架線」という)があるはずだが、ここのLRTにはその電線がないのだ。2人がよくよく線路を見てみたら線路の真ん中に溝のようなものが・・・?実はここ星浜市で走っているLRTは線路の中央部にある溝から電気を取って走る地表集電方式が採用されているのだ。これは地下鉄でおなじみの第3軌条集電方式のうちの一種であるが、電気を送る役目の線が電車の走る線路の脇ではなく線路中央部の溝にあることが最大の特徴で、これによって景観性が損なわれないというメリットがある。一方で、保守が煩雑な上にコストも高くなってしまうことが欠点だ。
やってきたLRTの列車は確かに丸みを強く帯びた遠くから見たら芋虫みたいな感じの4連接車体の車両で窓ガラス以外の部分は真っ赤に塗装されている。2人は村瀬三丁目停留所から北のほうへ向かうLRTに乗った。乗る時に乗車口の横にあるICカードリーダーにスマホをかざした。カードリーダーから「ピピッ」っとスマホをかざしたことを確認する音がした。
豊田「わ~、遠くから見たら赤い芋虫みたいなライトレールの中ってこんな感じなんですね~。未来都市を行く交通手段にふさわしいですよね~?」
山崎「はい。そうですよね~」
LRTが2人が乗った村瀬三丁目停留所から2駅目の停留所の案内放送が入った時に山崎は降車ボタンを押した。これを押し忘れたらたとえ停留所で客が待っていてLRTが停車したとしても出口ドアになる一番前のドアは開かない。
乗ってから2駅目の停留所でLRTから降りた2人は停留所でもう一度、山崎のスマホで紳士服店の位置を確認し、通りを北に向かって右側の歩道へ出たらすぐのところにあることが分かったので、LRT通り沿いにある紳士服店を目指して歩いた。LRTの停留所から道路両脇にある歩道までは横断歩道を利用して行き来することになるが一部の停留所では歩道橋から降りて行くところもありそこにはエレベーターも完備されている。山崎はLRTを降りてからスケジュール帳に今、「降りた停留所名」と「乗った停留所から○(方角)へ何駅目」かをメモした。こうしてから帰りはその逆向きのLRTに乗れば2人の住んでいるところの停留所まで迷わずに戻ることができる。2人ともこの星浜市はまだ2050年の世界に来てから2日目でありこの街のことなどまだ全く知らない。
山崎「これから行こうとする紳士服店はこのライトレール通りの右側の歩道へ出たらすぐのところにありますね」
豊田「はい。ライトレール降りてすぐのところなんですね~?便利ぃ~」
山崎「紳士服店ではまず、豊田さんのスーツから選びましょうか?」
豊田「そうですね。次に山崎さんのスーツ選びですね?」
山崎「はい。そうですね」
2人は紳士服店に入店した。この紳士服店は比較的低めのビルの1階と2階の部分に入っていて、2人はまず豊田のスーツを選ぶために女性向けスーツの売り場を見て回った。豊田は買いたいと思っているスーツを手にしてみて試着したりしてみた。
豊田「色はブラックのような暗め系のとグレー系のような明るめ系とどっちがいいでしょうかね~?」
山崎「確かに入社式とか入学式とかでは黒のスーツをよく見かけていますが、どちらかといえば、私はグレー系の明るめのほうもいいかな~って思います?」
「でも、万一、これから会社へ応募して会社から『面接の際、黒系のを着てきてください』と言われるかもしれないんで黒系のも買ったほうがいいかなと思いますよ」
豊田「山崎さん、下に履くのはスカートとパンツどっちがいいでしょうかね~?」
山崎「そうですね~。スカートもいいんですが、パンツもできたら買ったほうがいいかな~って思いますよ」
「これもやはり応募先から面接時に『スーツはパンツスタイルで来てください』と言われるかもしれませんので?」
豊田「そうですね~。じゃあこの黒のとグレー系の、それぞれスカートとパンツを買いましょうか」
山崎「はい。そうですね」
「豊田」ついでに、スーツと一緒に履く靴も買ったほうがいいですね」
2人はまず豊田のスーツと靴を買ったら次は山崎のスーツと靴を買うために男性向けスーツのコーナーへ移動した。
山崎「私もやはり色としては黒系もいいんですが明るめのグレー系もいいかな~って思います」
豊田「そうですね~。私も賛成」
山崎「これ、良さそうですね?これちょっと試着してみますね」
試着室にて
山崎「豊田さん、どうでしょうか?」
豊田「わ~、山崎さんこれとっても素敵で似合ってるよ」
「これだったら面接で受かること間違いなしだよね?」
山崎「はい。そうですよね」
売り場に戻り、山崎はもう1着スーツとスーツと一緒に履く靴を買った。
2人が紳士服店で一通り買ったものを買ってからさらにそれに付随するものを買った。
山崎「これでここで買うべきものは一通り買えましたが、臭いとか気になることがありますよね?」
豊田「はい。確かにあるね?」
山崎「特に靴の臭いは気になるようですんで靴用の消臭用品もついでに買ったほうがいいかと思うのですが?」
豊田「そうですよね?確かに女性用の靴も臭う時は臭いがひどくなるからね?特に雨が降る6月の梅雨の時期とかは湿度が高くて蒸れたりもするからね?」
山崎「ですよね。ここ大事ですよね?」
「じゃあ、靴用の消臭用品も買いましょうか?」
豊田「はい。そうですね」
山崎「ほかにも体の臭いも気になってくるかもしれませんので体臭対策品も買っちゃいましょうか?」
豊田「そうですね。買いましょう」
2人が買ったものはこれから真っ直ぐ帰る分には手で持って行っても差し支えないが、2人は紳士服店での買い物の後、ほかにもこの街のことを知るために歩き回りたいので買ったものを手に持った状態で歩くのはしんどい。そこで紳士服店から宅配便で2人のそれぞれの住むマンションの部屋まで送ってもらうことにした。一連の紳士服店での会計はすべて2人のスマホについている電子マネーの機能で支払っている。