(04)2050年ライフのスタート~その1~
山崎が朝食を食べるために見つけて入ったカフェに偶然、同じ出会いを提供するパーティーの終わり際になって出会えた豊田がやってきてモーニングセットを食べながらおしゃべりしていたら、1時間半も経っていた。10時くらいのこと。
山崎「あ、そろそろここを出て銀行やスーパーへ行きましょうか?」
豊田「はい。そうですね~。そろそろ行こうか」
豊田はこの日の朝、目覚める前の前日に寝た日のパーティーで山崎と出会えてからまさか一晩で山崎とこんなに仲良くできるものとは思っていなかったであろう。山崎もまた、パーティーで出会えてからたった一晩で豊田と仲良くなったことを嬉しがっている。
カフェを出た2人は2050年の世界にやってきた時に目覚めたマンションの1室で手に入れたスマホで地図を表示させて銀行やスーパーを探しながら歩いた。2人ともこの星浜市はやってきた覚えもなく初めてなのだ。
山崎のほうが持っているスマホの地図を見て
山崎「このライトレール通りを少し歩いて大きな公園のほうへ行くと銀行がありますよ」
豊田「そうですね~。行ってみましょうか」
この日現在、2人の所持金は山崎が約2,100円、豊田が約3,600円だったからこれからここで過ごしていくには全くお金がないに等しい状態だ。銀行は大きな公園の通りを挟んで向かい側にあった。Gシティ銀行村瀬支店だった。銀行の店内は平日の昼前の時間帯ということがあり窓口、ATMともに人の列ができていた。2人とも銀行のキャッシュカードの暗証番号はスケジュール帳にメモしていたのでATMで自分の番が回ってきた時には「あ~、暗証番号いくつだったっけ~」といったことはなかった。しかし、このあと、2人は激しい驚きを覚えてしまう。それは2人の預金口座には何と、1,000,000,000(10億)円も振り込まれていたのだ。2人はあまりの振り込まれた金額の大きさに一瞬、気絶しそうになった。とりあえずは、2人ともATMから30,000円を各自の預金口座から下した。30,000円あれば、まず、1日当たりの食材費を1日1,500円として10,500円、それに2050年の世界に来たらいたマンションの1室での生活に必要な雑貨類を買うには最適ばかりか余裕でできる額だ。
銀行でお金を下した2人はこれから毎日の食材やマンションでの生活に必要となる雑貨類を買うためにスーパーや100均を探して歩いた。豊田は2015年の世界では厳格な親にいつも厳しく言われてきて「もう、いい加減うるさく言われるのはイヤだ。優しい男性と一緒に公園とかでおしゃべりしたい」と思ったのか銀行の通りを挟んだ向かいにある大きな公園を見て山崎に「いつかこの公園で山崎さんと2人でおしゃべりしたいね」と呟いた。山崎もまた2015年の世界でこれまでまともに女性と出会えずに一人寂しい思いをする日が続いてきただけに「いつかは豊田さんとこの公園でおしゃべりしたい」と思っている。山崎はスマホで「この付近のスーパーマーケット」と声に出して付近のスーパーを検索した。2050年の世界ではスマホの音声認識機能は当たり前のように装備されているのだ。スマホの地図にはLRT通り沿いの村瀬三丁目停留所付近にスーパーがあることが分かり2人でそこまで歩いた。公園付近からLRTを見ると車両が2050年頃の路面電車の車体形状の標準形である流線型の4連接車体をしていて車体が赤いので、さながら「赤い芋虫」のように見えた。LRTが「赤い芋虫」のように見えた豊田は
豊田「あそこに何か赤い芋虫みたいなのが走ってるね?丸っこくて可愛い~キャハハハ」
山崎「私もこの街にライトレールがあることを知ったのは朝、起きて気が付いたら2050年の世界にあるマンションにいて、そのマンションを出てから通りの真ん中を赤い流線型の形をした路面電車が走ってるのを見たんですよ。通りの真ん中は2本の線路が通っててちょうどマンションの目の前にライトレールの停留所があったのでライトレールを使う時に備えてスケジュール帳に停留所名をメモしたんですよ」
豊田「いつかそのライトレールにも乗ってみたいね?」
山崎「はい。ライトレール乗るのもいいですよね~?次はライトレールでこの街を探索なんてのもいいですよね~?」
豊田「はい」
山崎「ところで豊田さんはどのあたりに住んでいるんでしょうか?」
豊田「私は山崎さんの住んでるマンションのライトレール通りを挟んで北に斜め向かいの場所にあるマンションです。私のマンションも入居者専用のスマホを持たされ、エレベーターや部屋のドアの鍵などマンション入居者専用のスマホがなければ住めないセキュリティ性が図られてるんですよ」
山崎「私のマンションと同じですね?セキュリティ対策は」
「あ、そうそうスーパーで買い物してまた100均へ行くのに食材を持ったまま歩くのしんどいからスーパーで食材を買ったら食材を一度マンションの自分の部屋へ置いて行ってからまた100均行きましょうか?」
豊田「それ、いいね~。じゃあそうしましょうか?」
スーパーに入り2人はお米やパン、3日間で使うことになるかと思われる食材を買い込んだ。2人ともにお互いに食材を買ったら
山崎「それでは豊田さん、私、一度こっちのマンションの自分の部屋へ今買ってきた食材を置いてきますんで、豊田さんも自分のマンションの部屋へ食材を置いて来たら私のマンションの1階にある出入り口で待ち合わせしましょう」
豊田「はい。じゃあ山崎さんいってらしゃい」
山崎は持っているスマホをエレベーター乗り場にあるセンサーにかざしてエレベーターを呼び出して自分の部屋へスーパーで買ってきた食材を置きに行った。食材を自分の部屋へ置いたら再び豊田と待ち合わせているのでエレベーターで1階へ戻り出入り口で豊田が自分のマンションから戻ってくるのを待った。出入り口までだったらこのマンションの部外者でもいることができる。
山崎が自分のマンションの出入り口に立って数分後、豊田がやってきた。
山崎「おかえりなさいませ~。豊田さん」
豊田「こちらこそ、ただいま~。山崎さん」
山崎「では、100均へ行きましょうか?」
豊田「はい」
山崎はスマホで「この付近にある100均のお店」と声に出して付近の100均を検索した。検索結果は2店あり、うち1つの店であるDはLRT通りを北に300mほど行った通り右側にあり、もう1つのKはさっき食材を買ったスーパーの建物の中に入っている。2人は考え、品揃えはその店に行ってみなければわからないし、万一、品揃えがよさそうだからと思ってDまで300m歩くのも今更ではしんどい。ということでさっき食材を買ったスーパーの中にあるKへ行くことにし、再び2人はそのスーパーの建物へ入っていった。2人は、まだマンションの1室の中にはないお皿や(豊田のみ買ったが)お茶碗、みそ汁茶碗、丼、コーヒーカップ、マドラー、スプーン、フォーク、ナイフ、箸、食器布巾、台布巾、ガラスコップ、まな板、包丁、洗濯用洗剤、柔軟剤、ハンガー、家計簿ノートなどの生活必需品を買って行った。100均での会計後に2人はさらに驚いた。何と、2015年の世界ではまだ消費税は8%だったが、2050年の世界では税率が21%にまでさらに上がっていたのだ。つまり、100円であれば121円、1,000円であれば1,210円、10,000円であれば12,100円というように恐ろしい税率が加算されてしまうのだ。100均に限らず、店舗等での支払いもこの時は2人はまだレジでスマホをかざすのみでも支払えることが当たり前になっていることを知らず2015年の世界の当時のままに現金で支払っていた。2015年の世界でもすでに実用化されている「おサイフケータイ」のスマホバージョンだが、2050年の世界ではもう店舗等での支払い時はほとんどスマホをかざして支払うのが常になっているのだ。スマホへの現金のチャージはスマホ画面の操作のみで行え、1,000円単位で入金でき、最大50,000円まで1つのスマホに入金させることが可能である。これには銀行口座が必要なのは必須だが、2人とも「夢と未来の仕掛人」と称する者から指定された銀行口座よりスマホへのチャージをマンションの自分の部屋へ戻ってから行っている。一方、キャッシュカードは万一、スマホが故障してしまった時などの不具合時に備えて貴重品入れに保管した。