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(03)ここはどこ?、わたしはだれ???

 出会いを提供するパーティーが開催された日の夜、それぞれのすみかで寝た山崎と豊田の2人は何事もなかったかのような感じで熟睡していた。


 そして、朝になり2人が目を覚ました時には、まだまさか自分が2050年の世界へ一晩にして35年ものタイムワープをしていることには気が付いていなかったであろう。


 山崎はパーティーが開催された日の翌日は会社で仕事だから、いつもの会社へ出勤する日の起きる時間にいつも通りに何事もなかったかのようにして目を覚まし、布団から出た。しかし、起き上がった山崎の部屋の雰囲気がいつもと全く違っている。まず、山崎は生活ホームに住んでいるので、片付いていなくて乱雑な雰囲気の山崎の部屋が、まだ引っ越してきたばかりかのような感じの新築マンションの1室にいるのだ。ほかに山崎の手許にあった数着分の衣類やスマホ、財布の中の所持金こそ2015年の世界にいた時のままだが、山崎は自分のいる新築マンションの1室のような部屋には大型冷蔵庫1台と電子レンジ、炊飯器、キッチンには電熱調理器とフライパン2個、鍋が大小1個ずつ、そしてテーブルには置き手紙、銀行のキャッシュカードとその暗証番号シークレットナンバーのメモ、履歴書100枚、2050年頃のモデルのスマホとその説明書、2050年モデルのノート型パソコンが乗っていた。キャッシュカードの銀行はGシティ銀行であった。100枚の履歴書にはすでに山崎の経歴や特技までは書かれた状態だった。あとは応募先へ対する希望などを書いていけばよいのみだ。朝、起きたら食べなければならない朝食もない。自分がいるマンションの1室のようなところにはこれだけしか物がないことに山崎はびっくりした。山崎は試しに2015年の世界で使っていたスマホで適当にメールを送ったりしたが2050年の世界ではもう2015年頃のスマホは使えなくなっていたので山崎は「おかしいなぁ?」と思った。朝食を自分で作るべく冷蔵庫を開けてみたら中は空っぽだった。山崎はとりあえず気持ちを落ち着かせてテーブルに乗っていた置き手紙を読んでみることにした。


以下は置き手紙の内容である。

「おはようございます、私は『夢と未来の仕掛人』である者です。この度はようこそ2050年の世界へお越しになられまして誠にありがとうございます。山崎様、本日より2050年の世界をお楽しみいただきたいかと思うべくテーブル上に乗っているものを用意いたしました。スマホは2050年のモデルでただ単にメールや通話、ネットサーフィンのみならず多種多彩な機能を備え付けております。今、山崎様がおられますマンションの部屋のロックや開錠(つまり鍵を開けること)もこのスマホを使って行います。部屋のドアの横にスマホをかざすセンサーがあってそこへスマホをかざしたら部屋のドアのロックや開錠ができます。山崎様がおられますお部屋の家賃や各種光熱費、通信料などはすべて私ども『夢と未来の仕掛人』が負担いたしますのでご安心ください。山崎様、まだお手持ちのお金が少ないようなのでまずは銀行に行ってきてお金を下してきてください。山崎様の銀行は『Gシティ銀行』でお金が入っている口座は『****Gシティ銀行***星浜中央支店普通預金*******山崎 哉』となります。そのほか、アルバイトやお勤めなどをご希望であればテーブル上に乗っていたスマホからこの手紙に書かれているURLへメールしてください。メール確認後、山崎様の職探しをお手伝いさせていただきます。2050年4月1日」

山崎「えぇぇ~っ、昨日寝た時は2015年の11月某日だったのに、もう今日は2050年4月1日???たった一晩で35年ものタイムワープじゃないか!!」


 時、同じくして、山崎とつい昨日パーティーで出会えて「これから山崎と仲良くしていこう」と心に決めていた豊田も山崎と全く同じようなことが2050年4月1日の朝、別の場所のマンションの1室内で起きていた。豊田の部屋にも山崎の部屋に置かれていた置き手紙などがあったのみだ。置き手紙の内容が「山崎様」のところを「豊田様」に置き換えられた形での文章だった。


山崎「とりあえず、朝ご飯食べて、銀行行ってお金を下してきて、スーパー行って食材買ってこなくちゃ」


 山崎はマンションの部屋を出る前、銀行カードの暗証番号をスケジュール帳にメモし、置き手紙に書いてあったように部屋を出たら2050年の世界で使うためのスマホをセンサーにかざして鍵をかけエレベーターで1階へ降りた。このエレベーターは朝晩の通勤・通学時間帯にエレベーターがふさがって使えないという事態を回避するためにデパートなどのように複数基数を設置している。15階より上のフロアからの利便性のために何基かは1階から乗ると15階までノンストップになる。エレベーターも防犯セキュリティ上、乗り場のドア横にある呼び出しボタンは下へ降りる向きのボタンしかなく(入居者が自分の住んでいる階よりも上の階へ行くこと自体ありえない)、呼び出しボタンを押してもこのマンションの入居者である証拠になるスマホをエレベーターのドアの横にあるセンサーにかざさなければ動かず、部屋のある2階以上の階から下へ降りる場合はドアが閉まったら途中の階からの呼び出しがない限り、それ以外の階には停止せずに1階まで下りるようになっているほか、1階から上がっていく場合にはエレベーターに乗ってからかご室内側のドア脇にあるセンサーにスマホをかざせば自動的に入居者の住んでいる階まで動いてくれるがスマホをかざさなければエレベーターは全く動かない。マンションの入居者が部屋の鍵のロックや開錠、エレベーターを動かすために使うスマホはマンション入居時に管理人から貸与され、ネットもできるなど多種多彩な機能もあることからスマホの端末本体の価格や利用契約料金(いずれも月々の)はマンションの家賃に含まれた形となっている。もし、このマンションへマンションから指定のスマホを持っていない入居者の友人が訪れる場合には入居者がわざわざ1階まで送迎する必要がある。また、入居者の部屋の玄関先まで行かなければならない宅配便業者は荷物の配達でこのマンションを訪れた際に1階の事務室で管理人を呼び出して宅配業者訪問専用のスマホ状のタブレットを借りた上でマンション内へ荷物の配達を行うシステムになっている。なお、非常階段は防犯上、非常時以外は使用禁止である。このマンションは2050年の正月明けに完成したばかりの新築で25階建てという高層マンションである。山崎がこの日の朝、目が覚めて気が付いたらいた部屋はこのマンションの10階でエレベーターまでの距離がほとんどない位置の場所にある。スマホをかざして鍵を操作するセンサーは比較的わかりやすい形状をしていたのが幸いだったが、もし、センサーに気が付かないでいたら危うく部屋から閉め出されたり部屋に閉じ込められてしまうところだった。


 マンションの1階部分は入居者の部屋はなく入居者のみが利用できるフリースペースやカフェがあり(銀行のATMコーナーもあるが山崎の口座があるGシティ銀行のではない)、あたかも高級ホテルのエントランスロビーを思わせる風貌だ。山崎はマンションを出ると更なる驚きが立て続けに襲ってきた。まず、マンションを出てすぐの目の前の通りが2015年の世界での生活ホームにいた時のような片側1車線で昼夜問わずに大渋滞が日常茶飯事で近くの駅まで出るのに乗るバスもろくに時間ダイヤ通りにやって来ない街道とはまるっきりイメージが異なる、片側3車線+歩道の幅も広くほぼ終日車の流れがスムーズでほとんど渋滞することがない広い通り+通りの中央部にはLRT(ライトレールトランジット=軽量軌道交通機関:路面電車トラムの現代発展版で併用軌道区間で車との分離を十分に行うなどの安全性が確保できれば長編成や高速走行も可能、以降、「LRT」と書いていく)の線路が敷かれているグリーンベルトもあり、ここで山崎は2015年の世界の時からのカルチャーショックを受けた。山崎のマンションの近くにはLRTの停留所があり、その停留所の名称は「村瀬むらせ三丁目」だった。山崎はLRTを利用した時の降りる停留所名としてスケジュール帳にメモした。つまり山崎のマンションの所在地名は星浜市ほしのまはし星南区せいなんく村瀬むらせだということなのだ。とりあえずは山崎のマンションの近所のことを知ることから始めるのでまずはマンションの周辺を歩いてみた。4月1日は年度初めということで会社の入社式や学校の入学式ということも多く街中には2015年の世界の時でもそうであったがフレッシュな装いのスーツ姿の人をよく見かける。山崎のマンションのある星南区村瀬地区はLRTも走っている大通り沿いに豪華な高層マンションがいくつか立ち並んでいて、面積が広くテニスコートもある緑地公園があるほか、また、山崎のマンションのすぐ北側にある曲がり角の通りを東へ少し行けば星南区役所もある。区役所からさらに東へ500m強行けばJRの村瀬駅がある。星浜市の中心部方面へはJRかLRTで向かうことができるがスピードの面ではJRだがこまめな乗り降りという点や市内交通の中心部ターミナルへはLRTのほうが有利。LRTは星南区役所前を通ってJRの村瀬駅方面への路線も分岐する形で延びている。山崎はとりあえず、LRT通りを北のほうへ向かって歩いてみた。まだ朝食も食べていなかったので、どこか朝から営業やってしてそうな飲食店を探した。ちょうど山崎の目には素敵な雰囲気のカフェが見え、そこに入ってモーニングセットを食べた。山崎の今の所持金はつい昨日までの2015年の世界の時のままの3,000円でこのカフェでのモーニングセットは750円だから軽々と支払えた。


 このカフェのモーニングセットはパン(一般的なプレーントーストorピザトーストorイングリッシュマフィンの3種類)、玉子料理(スクランブルエッグorゆで玉子orチーズオムレツの3種類)、サラダ(生野菜のグリーンサラダorポテトサラダor大根サラダの3種類)、ドリンク(コーヒーor紅茶or緑茶orオレンジジュースの4種類でオレンジジュース以外はホットorアイスをさらに選べる)の4品目が1セットでそれぞれ1品ずつチョイスして注文するわけだが、店内のテーブルにI-Phone(アイ-フォン)状の装置が置かれていてそこに表示されるメニューを見て画面を直接触って注文するシステムなので注文時に店員の前で「え~とっ」とか考えることもないわけだ。山崎はこのカフェでのI-Phone状のメニューを表示する装置にも驚いている。でもじっくり考えながら注文できるという点ではこの方式も優れているのかもしれない。山崎はピザトースト+グリーンサラダ+スクランブルエッグ+アイスコーヒーをチョイスして注文した。


 山崎がI-Phone状のメニューをタッチして注文したものが運ばれてくるのを待っていると山崎がいるカフェに錯覚上、つい昨日、パーティーで巡り合えた豊田が入ってきた。豊田もまた一晩明けたこの朝、2050年4月1日へタイムワープしてきたのだ。豊田は寝る前の日、つまり2015年11月某日のパーティーで巡り合い、終了後に一緒に近くの駅まで歩いて帰った山崎の姿を覚えていて偶然にもその山崎の姿が豊田の入ったカフェにいたので豊田は驚いていた。

豊田「あらっ?貴方は昨日のパーティーで知り合えた山崎さんではないですか?」

山崎「はい。私は山崎というものです。おはようございます。確かに昨日の夜、寝る前はパーティーのあった2015年の11月某日でしたが、今日の朝、起きたらいつもとは見覚えのない場所にいて部屋のテーブルには置き手紙があったんですよ。そしたら2050年の4月1日とあったので私もびっくりしましたよww」

豊田「こちらこそ、おはよう。私も実は昨日寝る前は確かに山崎さんの仰ってるとおり2015年11月某日でした。それが今朝起きたら、いつもとは違うところに自分がいる。そして置き手紙があって読んでみたら2050年4月1日!!何と一晩にして35年もタイムワープしてしまったんですよ!」

山崎「豊田さんも何か注文しましょうか?私はモーニングセットを注文してますよ」

豊田「そうですね~?じゃあ私もモーニングセットを頼もうか?」

山崎「それで、私、驚いたんですが、ここのカフェ、I-Phone状のものでメニューを表示してて注文したいものを選んで画面をタッチするシステムなんですよ」

豊田「モーニングセットをタッチしました」

山崎「次はモーニングセットでは4品目をそれぞれ3~4種類の中からチョイスできるのでお好きなものを選んで画面をタッチしてください」


やがて山崎の注文したモーニングセットがテーブルへ運ばれてきた。

山崎「じゃあ、先にいただいてますよ」

豊田「わぁ~、山崎さんの頼んだのおいしそ~?」

山崎「食パンのトーストもただ単にトースターで焼くだけよりもこうやってピザトーストにしたら豪華アッパーでおいしいですよね~?」

豊田「ただのトーストでは面白みもないし飽きてきますよね?」


豊田の注文したものもテーブルに届き2人で朝食を食べながら会話し始めていた。

山崎「それにしても、どうして私が一晩にして2050年の世界にあるこの未来都市にやってきたのかがよくわからないんですよ・・・?つい昨日の夜寝る前までは確かに私は2015年の世界にいて、そこで私は豊田さんと巡り合えたんですよ」

豊田「私も何で、今朝突然、35年もタイムワープして2050年の未来都市にいるのかが全く分からないんです・・・?」

山崎「そういえば、今朝起きた時に気が付いたら自分がいた部屋の中に置き手紙と自分の経歴まで書かれていた履歴書100枚がありませんでしたでしょうか?その置き手紙にかなり奇妙な書き方をしてたんですが『夢と未来の仕掛人』と直接的に名前を名乗ってないんですよ?」

豊田「あ、私も今朝起きたらその置き手紙と履歴書100枚があるのを見つけましたよ。そして読んでみたら山崎さんの仰ってる通りに『夢と未来の仕掛人』とあまりにも奇妙なペンネームが書かれてて手紙を書いた本人の名前が出てなかったんですよ。履歴書にはすでに私の経歴までは書いてありました」

山崎「それで、その置き手紙にまずは銀行へ行ってきてお金を下してくるように書いてあったんです。豊田さんの置き手紙にも銀行へ行くよう書いてありませんでしたでしょうか?」

豊田「私の置き手紙にも銀行へ行ってきてお金を下すように書いてありました」

山崎「私はこれからここで朝食を食べたら銀行へ行ってお金を下し、スーパーに行って食材を買いに回る予定なんですが、豊田さんのほうはどうでしょうか?」

豊田「私も山崎さんの仰ってる通りにこれから銀行行ってお金を下してからスーパーへ行き食べるものを買いに行かなくちゃと思ってるんですよ」

山崎「それじゃあ、寝る前の日、つまり2015年11月某日に行われたパーティーで豊田さんとまだ出会えてから一晩過ぎて早々ですが豊田さんと一緒に銀行やスーパーへ行きましょうか?」

豊田「そうですね~?山崎さんとはまだ出会ってから一晩しか経ってないけども一晩おいて早々に山崎さんとお付き合いが始まっちゃったなんて何だか幸せですよね~?」

山崎「はい。そうですよね~」


2人が入ったカフェで朝食をりながらおしゃべりしていたら1時間半ほど経っていた。


2人がパーティーで出会えたのは2015年11月のことだが、2人はタイムワープした時に年齢の進行は停止ストップした状態だったので2050年4月の時点でも2015年11月時点のままであり、35年前の2015年の出来事も昨夜、寝る前の日の出来事のような錯覚だ。現実の日曜日の夕方18時半から放映されていて「これを見ると特にエンディングで気分が憂鬱ゆううつになってくる」ことで知られている日本を代表する某アニメの登場人物(某アニメ名がついている症候群がある?)もまたある時期以降、年齢進行は40年以上も停止したままだ。


 


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