(01)出会いを提供するパーティーでの2人の出会い
2015年11月初め頃のある祝日。この物語の最大の主人公である山崎哉の住んでいる自治体である三隈市の障害者福祉団体が主催する障害者向けの「真剣な婚活を目的(ネット上のメールボックスやあらゆるサイトにもう嫌になるほど頻繁に広告が出現してくる「あれ」のことです)」とはしないあくまでもお友達作り程度の出会いを提供する目的のパーティーから帰ってきた山崎はもう嬉しくて気分が高揚していた。彼は毎年のように11月上旬頃に開催されるこの出会いを提供する目的のパーティーに参加しているのだが、例年、彼にはパーティーが終わった後も特にこれといった彼のことを気に入ってくれた女性の相手が見つかったわけではなく、帰り道はいつも名残惜しい気分だった。それがこの年は嬉しい気分で帰ってきたのだから何か彼のことを気に入ってくれた女性の相手が見つかったに違いない。
実はこの年の出会いを提供する目的のパーティーでは終わりのほうになってある女性の方と名刺を交換し、彼は名刺交換後、彼女においしそうな軽くつまめる軽食を奨めて少しながら会話をしていた。会話の内容は敢えて割愛するが、このパーティーでは彼はほかにも参加していた女性の方と名刺交換をしていてその交換した名刺の数は10枚もあった。パーティーの終了後、終わりのほうになって名刺交換した彼女が何と彼と一緒にパーティーの行われた会場の最寄り駅まで歩いて帰ってくれることになったのだ。彼女の名前は豊田忍。住んでいるところは彼と同じ三隈市内だが彼が市の南部のほうに住んでいるのに対して、彼女は同じ市内でも北東部と全くイメージが異なるエリアである。
豊田「山崎さん、そこの駅まで一緒に帰ろう」
山崎「はい、そうですね。一緒にお話ししながらそこの駅まで歩いてきましょうね」
豊田「はい」
会場の最寄り駅まで2人で歩いている途中の会話
山崎「今日の出会いを提供するパーティーでしたが、とても楽しく盛り上がってよかったですよ。今年はパーティーが終わってから近くの駅まで一緒に歩いて頂ける女性の方が巡り合えましたので」
豊田「はい、今日のパーティーとっても楽しかったですよ。私は今年初めての参加でしたが、まさか終わり頃になって早速、親切に軽食を奨めてくれた男性が気に入りまして、それが今、私の隣を歩いてる山崎さんですよ」
山崎「はい、そうですね~。ちなみに私は今、三隈港の海沿いにある某大手スーパーの系列の食品工場の中で清掃の仕事をやってます」
豊田「山崎さんって某スーパーの食品工場で清掃の仕事をやってるんですか~。よく『掃除は心を清めるもの』っていいますからね~」
山崎「はい、そうですね~。豊田さん私のことを気に入って頂けましてどうもありがとうございます」
「ところで豊田さんはどのようなお仕事をされてるんでしょうか?」
豊田「えっと、私はごく一般的な事務職の仕事をやってますが、勤務する日は必ず週に月曜日から金曜日までの5日間というわけではなくシフト制で休日出勤がある一方で平日にもお休みの日があるんです」
パーティーの会場から最寄りの駅までは普通の速さで歩いて約10分前後である。この時はまだパーティーで巡り合えたばかりなので2人の関係はただ単に会話相手程度である。駅に着いてから
豊田「また、いつか山崎さんからもらった名刺に書かれてる連絡先に連絡して山崎さんとお会いしてみたいかと思ってます。ちなみに私はパソコンは親が持っているものなので私は触らせてもらえないのと、携帯も持っていませんので山崎さんの家の電話番号への連絡でよろしいでしょうか?」
山崎「はい、そうですね。私、スマホ持ってますので連絡先は私の持ってるスマホか私の家電どちらでもいいですよ。私のところへお話とかしたくなって来たら遠慮なく電話してきてくださいね」
豊田「じゃあ、また連絡が取れて山崎さんとお会いできる日を楽しみにしていますよ」
山崎「こちらこそ、豊田さんからの連絡を心待ちにいたしていますよ。そして連絡が取れたら一緒にお会いしましておしゃべりとかしましょうね。今日はどうもありがとうございました」
豊田「山崎さん、こちらこそ今日はどうもありがとうございますよ」
こうして2人は駅でそれぞれの自宅への帰路へと就いていった。山崎が自分の住んでいる生活ホームに帰ってきて夕食作りの主婦の方が作っていった夕食を確認したら自室に入り早速、自分の持っているスマホからこの日のパーティーで豊田以外の名刺交換できた女性の方と「今日の出会いを提供するパーティーのほうどうもお疲れ様でした」という内容のメールを送信した。豊田はメールの受信先であるパソコンは親しか触らせてもらえないことからメールではなく豊田から受け取った名刺に書かれている電話番号へ電話してみた。電話をかけたら豊田の母親が電話に出て「忍は疲れててもうお休みになってる」とのことで「また後日、山崎さんに電話するよう忍に言っておきますんで」だった。
山崎は「豊田から後日ではあるが連絡が来る」ことがわかるともう気分がウキウキしていたが、この日の翌日は仕事だから早く寝なければならなかった。やはり山崎は「今日のパーティーが終わった後」は名残惜しい気分だったのだ。
夕食後の余暇時間に山崎のスマホにメール受信のアラームが続々と鳴るが、パーティーで名刺交換をして気に入った女性へメールしたそのすべてが返信されてきたわけではなかった。中にはエラーになって相手へメールが届かなかったケースも。