表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

他人を美化する心あらば

なんと、水面の透き通ること。清く冷涼な渓谷と温もりを帯びた母なる羊水のどちらもが連想できる。しかしながらそれを角度を変え覗くと、醜悪がある。醜悪という表現はいささか誇張だ、ナルシズムの対偶だと咎めを被ってしまうかもしれない。では周りの者の心を覚束無くさせることに必死で、自らの感情を散布し、劣等感と矜り(素晴らしく独善的な)とで構成された動くものには他になんという名詞をつけてあげれるか。―人間だ。つまるところ、水面に映る顔もまた人間という保守的な名詞に窶された醜悪だったのだ。ただそれだけだ。

暫しの時が経ち、こちらを見る顔にぬらぬらと噦を覚えてきたそれの持ち主はえいえいと数回それを殴った。およそ打ち負かした。きひひひひひひひと際限のない山姥のような笑いが込み上げてきた。勝った。俺はアポロンであって、テスカトリポカを破ったのだ。宗教とは縁のない彼の頭の中にはそんな渾然一体と化した比喩が駆け巡り、心の中は陳腐なエゴで満点になった。これでやり直せる。人間としてだ。ん。そもそも人間とは醜悪であるから今やり直してしまっては結局俺は醜悪なのでは。そうならばこれからなんと名乗ってゆけばよいだろうか。んん。

取り留めもなく思索するうちに眼前にはゆらゆらとエゴ満点の笑いをする諸悪が、千切れ、回復し、千切れを繰り返してやがて、顔になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ