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なるほど。
全ては、この青春砂漠を打破するためだったのだ。
***
これは言葉を超えた世界での体験だ。
肉体を超えた領域で繰り広げられる、魂の交流だ。
此処に居る僕等だけ、僕等だから認識できる、僕等の精神のハーモニー。
調和され、調律され、調教され、やがて羽化する、生命のリサイクル。
穴家林さんの変態性欲が、長谷田に怒りを与えている。
長谷田はそれを加虐的な慈愛に変換する。
僕は尻だけで、彼女を受け止める。
行き場をなくした愛は、尻を叩かれる毎に凝縮されて行く。
凝り固まった愛で僕の身体は一杯になる。
ああ。
今、僕の頭と身体の中で、一体何が起ころうとしているのだろうか。
期待せずにはいられない。
まったく未知の体験だというのに。
絶体絶命の狂気と恐怖に満ち溢れた世界だというのに。
僕はこれから我が身に起こる事象について、期待せざるを得なかった。
そして、ありありと認識した。
自分の体内で凝縮を続ける《何か》が、臨界点を突破する。
もはや、ソレは概念の域に留まらない。
物理的な質量を有するエネルギー体へと昇華し、直腸内で結晶化していく。
「これが、僕たちの曙光」
僕が呟いた瞬間、三人の魂が、一つになった。
これは単なるレトリックではない。
文字通り、僕たち三人の《共有思念》が形成されたのだ。
抽象と具体の境界を侵犯するソレは、歪な夜空に向かってぼうっと浮かび上がって行く。
そして、プールサイドで魂を通わせる自分たちの姿が、自分たちの後頭葉に映し出される。
均一化され、僕達ではなくなった僕達が僕達自身を見下ろすという不思議……。
最高にクレイジーでロマンチックなムードが、青春砂漠に充満する。
そのムードの中で、僕達は3人とも、それぞれの輝きを放っていた。
穴家林さんの股間は白く、
長谷田の角は紅く、
僕の尻の蒙古斑は青く、
それぞれ特別な光を放っている。
もはや革命である。
青春のフランス革命である。
「来いやぁッ!」
穴家林さんが奇声を上げた。
魂で繋がった我々は、その一言に込められた彼の情熱を、過不足なく共有することが出来た。
「バッチコーイッ」
僕はそう叫んで、穴家林さんに向けて尻を突き出す。
「バッキャロメェエエイ」
怒声とともに長谷田は僕の尻を蹴り上げる。
その瞬間、凄まじい歓喜の昂ぶりを覚えた。
それとともに、僕の肛門から何かが射出される。
それは、テニスボール大の、光り輝く球体だった
そう。
これが僕達の曙光。
闇を払い、絶望を拭う、希望の光。
無限の夜に、朝を導く、小さな太陽だった。




