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コーヒーを初めてブラックで飲んだ日

作者: とむやん

はじまり、はじまり。

 「偽善者が強がると正直者が馬鹿を見て、不幸を自慢する人達が涙をお金に替えていく。そんな世代の少年少女達が抱える最後の希望の光を灯していたのは、きっと昨日バイクが事故って倒してしまった歩行者用信号機の青い方だったんだ」

 ……現代詩人を語る高卒無職の路上アーティストがつづった日記(四月七日分)より。



 知らなくていい事なんて、世の中一つとして無いと思う。

 全ての事象は、平等に重要だ。

 あらゆる事実を事実として証明し、世界的に認証しなくてはならない。

 けれど、それはこの世界全体を一つとして見た場合の事。

 多大に主観の混じる、「一個人の脳みそ」での範囲なら、そんな事を危惧する必要は無い。

 世界を自分で見つめている限り、自分の中では自分が主人公。

 自分の中では自分を中心に世界が回っている。

 何を決定するも最終的には自分。結局一番大切なのは自分なのだ。

 知りたくなければ、知らないままでいればいい。

 あやふやな部分は想像で済ませてしまっても構わないだろう。

 要するに、自分が満足ならそれで結構なのだ。

 あっという間に限界を迎えてしまうちっぽけな脳みそに、気に入らない記憶や面倒臭い悩みをわざわざ詰め込む事は無い。

 そう言う物なのだ、世界ってヤツは。



 今日、彼のケータイに「マキ」って人からメールが三通入ってた。

 気にしない気にしない。

 私は今、幸せなのだから。

 背中にチャックがついていた、とかよりもよっぽどマシじゃないか。

 それでも、私の脳みそは無駄に想像力を働かせる。

 不安は不満を生んで、不満が眉をひそめさせ、回路が回ってスイッチが入り、やがて熱暴走。

 ボンドで固められたツギハギの決意は、勢い任せとばかりに口からはじき出される。



 相手はきっと頬が痛むのだろうけど、こちとら胸ぐらがグツグツ煮えているのでおあいこ。

 すぐに感情的になるから、いつまでたっても愚かな人間だと笑われるのだ。

 昔の偉い哲学者にパイを投げつけたい。

 そんな春雨の休日、一人で静かに喫茶店。



 カッコイイ自分に酔おうにも、ブラックコーヒーは苦すぎた。


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