表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

4月1日のフォアシュピール・2

少年が纏う風を感じる。

「ぁ‥、やっぱり。来ると思った。」

「‥よぉ。色魔男。」

此処は校庭。

「さっきは、色々やらかしてくれて。」

「いえいえ。どういたしまして。」

風に撫ぜられた木々が鳴く。

「逝かせてやるよ‥!」

「おいでよ。全力で‥‥!」


十六夜は「特殊能力」を潜在的に持っていた。

しかし、この力は、「かたち」を与えなければ意味がない。力を発揮できない、役立たずだ。

「器」は「特殊能力」の属性とシンクロ性のある魂を持つ躯で成っている。

「オレの特殊能力の属性は、「風」。器として生きるは、尾長鳥のヲート。」

十六夜の利き手に風が渦巻く。

「ヲート装備!」

美しい羽と十字のエンブレムが彫られた装飾品の様な、それを構えて対峙する。

「‥これがオレの武器、自動式拳銃だっ」

「風、かぁ。じゃあ、おれも教えてあげる。」

ピチャピチャと空気中の水分が、椿姫の手で形を成していく。

「おれの属性は、「水」。宿る魂は熱帯魚、レッド・ソードテール。名はツルギ。」

水から形成された白鞘型の刀の切っ先を、十六夜に向け微笑む。


合図だった。

一気に間合いを詰めた椿姫の刀をバレルで受けると、腕に力を入れて刀を払う。数歩跳んで相手が態勢を整える隙に、銃口が火を吹いた。

「っと、」

ひらり。

まるで舞うように。銃弾が捉えたのは、彼の足元まである道行コートの裾だった。

「危険だよぉ。それ。」

「お前が言うな。」

ガキンッと再び切り結ぶ音。

『好戦的だな。』とつくづく感じる。‥何度目かの切り結びの直後、

「ぐぅ‥‥っ」

椿姫の空いた左手で、腹を殴れる。

「武器だけが戦闘力、じゃないでしょ?」

そんな椿姫の白い頬を赤い血が、一筋流れていく。

「あはは!確かに今、斬られたと思った。」

視線は十六夜の左手、握った指と指の間に挟まれたシルバーナイフへ。

「保険。」

「なるほど。それがヲートくんの「羽」だね。」

「あぁ!」

ヒュッ、ヒュッと続けざまにナイフを投げ飛ばす。

拳銃を押さえていた刀で払い落とす。その一瞬に照準を定め、トリガーを、

「そこまで!!」

突然の制止の声が、響く。

「存在、忘れちゃってました!学校長先生。」

椿姫が軍服で口許を隠すお決まりのポーズで笑い、言う。

そんな彼と、どこか不満げな十六夜の間に入り、武器を下げさせて、

「君達が刃を交えると、宛ら実戦の空気だね。いやぁ、実戦シュミレーションお疲れ様。」


そして、見学していた周りの生徒、教官達から歓声と拍手が沸き起こる。


‥‥どういう事か、というと。

講演会を滅茶苦茶にした兄弟、十六夜としては売られたケンカ?だったが。‥‥彼等2人に科せられた「お仕置き」が、このシュミレーション戦闘だった。

「イザ、本気だったでしょ?」

「‥まぁな‥、」

「ふふふっ、本気のイザに、おれは実力の半分も出してないけど!」

「‥‥。」

静かに、堪忍袋の緒が切れた。

「一言余計だ!!」

ぎゃおぎゃお噛みつきそうな弟を、楽しそうな兄が更にからかう。

「椿姫。」

「?はい。」

学校長が、昔を思い出すように校舎から、彼へと視線を移す。

「先程の講演会、君らしいと思ったよ。この学園の第一期生の君が卒業してから3年しか経っていないのに、随分と懐かしく感じる。」

「ええ。」

「立派に成長して、私も鼻が高いよ。」

それから、と。

「十六夜。」

「‥はい。」

「君は才能だけじゃなく、努力も惜しまない勤勉性を持っているね。本当に、これからが楽しみだ。」

2人を、その目に映し。

「傲りを持たず、自分に素直に。」

「「己の武器ちからは護りの刃。」」

学校長の教えが、兄弟の心に在る証。


「ほら。」

「自分で立てる。」



‥‥春の柔らかな午後の陽射しの中の再会が、運命に飲まれていく境界線を越えること。知っていたのだろう。


ー「ゴースト・オーグ」を目指し、鬼を殺さなければいけない宿命を背負った、十六夜には。

なんちゃって戦闘シーンですが、少しでも雰囲気が伝われば良いと、思っています。 笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ