第Ⅰ夜ー4月1日のフォアシュピール・1
初投稿小説です!
1話ずつの話が長いです。
疎い小説達ですが、気長にお付き合い下さると嬉しいです!
焉本国立第壱特別士官学校。
6年前に設立された、歴史の浅い此の学園に所属する生徒は、行く行くの軍人を目指すが、その配属先は通常の軍部ではない。
潜在的にしろ、後天的にしろ「特殊能力」を得た人間として、「人外」から国民達を守る、特別な部署へと配属される。
‥‥ーその部署の名は。
「午後の講演会、喰鬼派のトップとその懐刀が来るらしいぜ。」
「へぇ。豪華~!」
擦れ違いざま、聞こえてきた会話。
「おい‥、あいつ。」
「あぁ‥。ぷっ、」
失礼にも、人の顔を見て吹き出した男子生徒に睨みをくれてやると。
「あんま睨むなよ。それと、いつにも増して眉間に皺よってるぞ~。」
「あと、目つき、わりぃ!!」
「うっせ。」
‥眉間に皺がよっていて何か悪いか?
目つきなんか、生まれつきだろうが。
お前らには理解しがたい‥‥、いや。出来るはずもないだろうが、オレはこれから繰り広げられる茶番劇に付き合わされなきゃならないんだ。
『あぁ。‥あいつの確信犯的な笑みが思い浮かぶ。‥‥あいつのことだ。ぜってぇ何か企んでる。それも、くっだらないヤツ‥‥。』
少年は、憂鬱そうに、講演会が行われる学園の大ホールを一瞥して、重たい溜め息を吐いた。
昼休みが終わる鐘が鳴り終わる、穏やかな陽射しが射し込む室内で。
「な、十六夜。」
「あ?」
声をかけた少年は、返ってきた不機嫌丸出しの声音に怯みもせず、続けた。
「なーに、おっかねぇ顔してんだよ?」
「別に。」
「そう?‥ま、いっか。‥‥でさ、さっき教官でもないのに女の人が校内歩いてたんだ。生徒は男ばっかだし、数少ない女性教官なら、分かるはずだろ?」
「‥‥」
「しかもだぜ?正規の軍服着てた!」
「‥へぇ。」
「そ・れ・も、上着だけ着ててさ。ほら。軍服って右横にスリット入ってんじゃん!そこから伸びる長い臣足が!!」
「なに。昼、あんなのが好みなのかよ‥‥?」
かなり引き気味に呟かれた言葉に、昼が敏感に反応する。
「十六夜!知ってんのかよ?!」
「あ、‥いや。‥‥歳のわりにマナイタだったから、印象に残っているだけだ。‥‥。」
「あー、確かに。20代前半とみたけど、胸はわりと
‥。」
ぶつぶつ分析し始めた友人に頭が痛くなる。
でも、本番はこれからだ。
「始まるみたいだぞ!」
周りのざわつきが静まっていく。
大ホールのステージに学校長が上がり、中央に置かれたマイクの前に立つ。
「本日は、焉本国軍特殊部隊、通称「ゴースト・オーグ」を二分する勢力、喰鬼派のトップ、宮十大佐とその腹心、縛狗の椿姫君をお招きし、死線を幾度となく潜り抜けてきた経験と身に付けておくべき実戦能力の話を交えて講演をして頂きます。‥戦線で培われた彼等の、貴重なお話から学び、これからの皆さんに繋がっていくことを期待します。」
学校長の挨拶が終わり、
『いよいよか‥。』
と、半分諦めた眼差しで十六夜は次に壇上に上がる人物を見た。
「あ!」
案の定。
驚き顔の昼。
『‥‥含め男子生徒1、2、3‥‥20人はいるか。』
「おい!あの人だって!!俺が見た女の人!!」
「知ってる。」
「ぇ?あれ?でもさっき、学校長センセ「椿姫君」って‥?」
くすくすと、当人である「椿姫」が和風軍服の長い袖で口許を隠し、笑って。
「お、俺の声聞こえて‥?」
「君たち、最前列だもの。聞こえちゃってるよ。」
‥‥目が、合った。
蒼とは正反対の真紅の双眸と。
「椿姫、無駄話は控えろ。」
「はぁい。」
「お前は俺の縛狗だろう?他の男と会話をするな。」
「やきもち?」
『始まった‥。』
茶番劇。
「あぁ。そうだ。」
「独占欲、強いね。」
「な、何?あの人、もしかして‥‥。」
「ふふっ、男だよ。おれは。」
ざわめきだす、男衆。
『哀れな奴ら‥。あのナヨナヨ男に恋心を弄ばれて。』
「‥‥って、ちょっとタンマ!そうなると、あの2人は薔薇園の住人?!」
「なんでンな専門用語知ってんだよ。「薔薇」とか。」
とかいうオレも使ってるけど。
「月祈のことは、好き。でも、面白いことも同じくらい大好きだから。」
細まる真紅。
『ぁ、なんか‥‥、』
「ゲームしようよ。」
「嫌な予感が‥、」
重なった声。
椿姫は提案する。男心を刺激する単語を使って。
「浮気してあげる。」
ぽかんとする生徒達。
「ゲームに勝ったなら、おれは、貴男のモノ。」
ただでさえ、女っ気のない学園生活。
顔も声も仕草も綺麗で、中性的なら、‥‥椿姫でも‥‥。
なんて、イケナイ妄想が男子生徒達の思考を支配し始める。
「勝利条件は、」
にっこり笑って。
「このホールにいる君たちの中から、おれの実弟を探して、1番にここに連れてきた子が優勝です!」
自分の薄い胸に手を置き、「優勝商品」をアピールする。
「は?!」
「弟?」
「どいつだよ?!」
キョロキョロと辺りを見渡し、隣どうしで顔を見比べる。
『待て‥‥っ、ちょっと、待て‥!』
不自然に震える十六夜の握り拳に気付いた昼が、心配そうに顔を覗き込む。
「ど、どした‥‥?」
‥落ち着け。
『あいつの言動に振り回されるな。何度目だ?!』
「え、と‥、ヒントは、あそこ!だよ?」
ビシッと人差し指が向いた先。
「ヒントじゃなくて、ピンポイントアンサーじゃねぇか!!!」
思わず、ノリツコッミ。
「久し振り~。イザ。」
ひらひらと手を振り、暢気に話し掛けてくる。
「小鳥遊?」
「あいつが弟かよ?!」
「でも、目の色正反対じゃん。」
ーー‥「目の色」。
「十六夜のにーちゃん?!水臭いぞぉ!こんな美人なにーちゃんが居たなんて!!」
「‥お前、間違ってるぞ。こいつは、れっきとした男だ。断じて「姉さん」なんかじゃない。」
「あは。酷いなぁ。」
「椿姫、」
また弟をからかおうと開いた口を
「むぐ‥っ」
後ろから宮十の大きな右手が塞ぎ、
「ンー‥、」
瞬間、宮十の手袋に隠された右手の甲が、紅く紋章を描きながら光を放ち。ガクッと力の抜けた繊弱な体を、抱き留める。
「?!椿サン!」
オロオロと、昼が彼の名を呼ぶ。
「縛狗の契をもって仕置きをしたまでだ。」
「‥ッ、あ‥‥っ」
苦しそうに、ぎゅっと瞳を閉じる。
「‥この様に、縛狗は飼主には逆らえない。命令厳守。お前達も縛狗と契を結んだならば、飴と鞭の使い方に気を付けろ。‥以上、本日の公演を終了する。」
呼び止めようとした教官達には目もくれず、椿姫を抱き上げると、さっさと壇上を後にした。
取り残された生徒達は、何故か十六夜に群がった。
「十六夜!椿姫さんの事教えてくれ!」
「知るか。」
「僕に是非、紹介して欲しい!」
「知るか!」
「小鳥遊、あの2人って、そういう関係なのか?!」
「知る訳ねぇだろうがァ!!!」
ハーハーと肩で息をしながら、十六夜は頭痛MAXだった。
「お前らウゼェ!!道開けろ!!」
人波を掻き分けて、なんとかホールの入口まで辿り着くと、勢いよく扉を左右に開いた。
そして、クルリと回れ右。
「いいか!そこから一歩でも動いたら、」
右手で銃の形を作り、
「バン!だ‥。」
十六夜のマジな目と、彼の「能力」を使った実力を身をもって知っているクラスメイトを始め、押し寄せた他学年の生徒達も足を止める。
「‥‥はい。」
手前に居た生徒から、返事を聞くと、十六夜は廊下を走り出した。
応接室の上質なソファーに横たえられる。
浅い呼吸に、空を見詰める潤んだ瞳。胸の前で丸められた左手が、許しを乞うように宮十へと伸ばされる。
「仕様が無い子だ。」
サラリと濡れ羽色の髪を一撫でし、人差し指と中指を揃えて椿姫の唇へ触れると、
「かは‥っ」
けほ、けほ‥、と咳き込んで、それから大きく息を吐いた。
「そう拗ねるな。」
「怒ってるの。おれは。勘違いしないで。」
顎に添えられそうになった彼の手を、ぺしっと叩く。
「はぁ。久し振りにイザに会えるからって、この仕事受けたけど、‥‥純粋な子たちの前であんな事させらるし‥、」
「満更でもなさそうだったがな?」
キッと切れ長の目が宮十を睨んで。
「とにかく、おれまでソッチ系の人だと思われるから!おれは普通にノーマルなんだからね!」
「今はな。‥直に溺れさせてやる。」
「しんでください。」
棒読みの台詞も、変態上司には愛の囁きと同レベルに解釈されるらしい。
「そして、近いんですけど。」
「気にするな。」
『何でおれの飼主が、この人なんだろ‥。』
あの、出逢いは間違いだったのかな。‥‥それとも‥‥?
第Ⅰ夜、前編打ち終わりました!
如何でしたでしょうか?少しでも、興味を持って頂けたら幸いです!