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幻なんかじゃなく、手に触れる事のできる存在
「俺たち急用ができたからもう帰るから、後は頼むわ。かぎ忘れるなよ」今成は他の部員を連れて帰ってしまった。美術質の鍵は僕が責任をもって返しとけよと簡単に伝えて、まだ部活の終了時間まで2時間ほどあるというのに、僕だけ置いてきぼりだ。寂しい。寂し過ぎるよ。三橋もたまには一緒に帰らないかとか一言あってもいいんじゃなかろうか。でも、今成は僕のことを思ってそんな優しい言葉をかけるようなやつでは決してない。僕一人をのけ者にして、皆で遊びにいった挙句、僕の今から仕上げる予定の作品を奪って自分のものとして提出するつもりでいるのだろう。今に始まった事でもないけれど。実際今成は作品なんて書いてもいない。