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仮想浸食 ~ああ素晴らしきゲーム人生~  作者: 矢尾板
【ROUND1】弾幕シューティングとアイアンクロー
15/15

エピローグ

「痛て……」

 おっ、目が覚めたみたいだな。

 賑やかな商店街のベンチに、ソーイチローが寝かされている。

 そして、オレはその隣に座っている。

 ショーコはオレの腕を掴んで、ソーイチローをにらんでいる。二階堂はベンチの横で腕組みして目をつぶってる。キザな奴だ。


 ソーイチローは顔にかかったハンカチを除けると、起き上がる。

 意識が戻ってよかったよ。大事にならなくて何より。

「目が覚めたか? はいコレ」

 オレはソーイチローにミネラルウォーターのペットボトルを、キャップを開けて渡す。

「あ、ああ……」

 ソーイチローは受け取ると、ミネラルウォーターを少し飲んだ。

「どうだ、痛むところはあるか?」

「ん……、ちょっと頭が痛かったけど、もう大丈夫だ」

「本当か?何かあったらすぐに医者に行けよ」

 オレはソーイチローの顔色を見る。特に悪い事もなさそうだ。

「よっし、じゃあオレ達は帰る。ハンカチ返して。オレのだから」

 オレは立ち上がると、ソーイチローに手を出す。ソーイチローはオレにハンカチを渡した。

「……お前、何も気にしてないのか?ヘンなヤツだな」

 オレが親切にしているのがそんなにおかしいな。おかしいんだろうな。

 オレは小心者だから、怨みを買いたくは無いんだよ。

「まあ、色々あったけど、これってゲームなんだろ?終わったんだから、ノーサイド。後腐れのあるゲームは楽しくないからな」

 二階堂に、あとはよろしくというと、つぶっていた目を少し開けて分かったとだけ言った。重ねがさね、キザなヤツだ。

 「それじゃ」

オレは言うと、ショーコの手を引いて、その場を立ち去った。



「なんで、アイツの心配なんかしているんですか!」

 帰り道、ショーコはオレに食って掛かる。まあ、無理も無いよね。

「だってさ、あんな奴でも何かあったら嫌だろ?」

「でも、普通はあーいう状況になったら、文句の一つ言ってやるのが普通でしょ!」

 お約束かい。

「オレは人に説教出来るほど、えらい人間ではございません」

 オレは手をヒラヒラと振る。

「人の世は、おかげ様とおたがい様で出来ているんです。済んだ事は済んだ事なのです」

「でも!」

「それに下手な恨みでも買ったら、今後がますます面倒になるでしょ」

 人に怒るってのはしんどいものなんです。

 だから、怒る価値のある人しか怒りません。


「なんで私がSEKKYOUされてるんですか!」

 少なくとも、貴方にはしんどい事を言う価値があると思っているからです。

「あ、クレープでも食べる?」

「え、いいんですか?って違います!そういう事じゃなくて」

 一瞬引っかかりそうになったな。やっぱり彼女はチョロイ。

 こういう、バカ話が出来るのも、無事に今日という日が過ごせたおかげ。

「お姉さまは何とも思ってないんですか?」

「さっきも言っただろ。済んだ事は済んだ事だって」

 オレが窓口業務を手伝った時、ちょうどモンスターなんちゃらの方が来て、滅茶苦茶へこまされたことがあった。だけどそんな人、忘れちゃいなさいって、隣で受付してたこの道ウン十年のおばちゃんが教えてくれたっけ。今日の出来事も、そうだな、モンスターアロハに襲われたと思えば、なんてことは無い。


 あー、今日は入学式の日だったんだなぁ。

 明日から学校が始まる。

 久しぶりの学校生活が、始まる前に終わらなくてよかった。

 オレはショーコの頭をなでると、駅に向かった。


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