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第一話 魔術学院シルフィード






   草花は春風に吹かれその身を揺らし


暖かな日差しが降り注ぐ


そして、空は何処までも青く澄み渡っている。






神聖シルヴィアス王国は、いにしえより魔術発祥の地として栄えてきた。

その王都アルファンにある王立シルフィード魔術学院は、この世界最高峰の魔術師教育機関である。



私、ソフィア・ドレッセルはこの春学院の最高学年に進級した。


6年制のこの学院は、ある程度魔力のあるものならば、12歳になれば誰で入学できる。

まあ、”誰でも”と言っても、魔術のある者の血筋はほぼ全て貴族たち特権階級が独占している。

つまり、ここには良家のご子息・ご令嬢ばかりが集まっているのだ。


そんなわけで、私のような平民がこの学院にいるのは、かなり珍しいそうだ。

なぜ特権階級でもない私に魔力があるのかというと・・・・・


いや。やっぱりやめておこう。その事を考えると、きっと、新学期そうそうブルーな気持ちになってしまうから。



開けられた窓から吹き込んだ風が、そっと髪と頬を撫でる。



教室の一番後ろの窓側の席。そこが私にとって一番落ち着く席だ。

そこに座り、片肘をついて手のひらに頬をのせる。


ふと、窓の外を眺めていた女の子2人の会話が耳に入った。


「ねえ、あそこにいらっしゃるの、エルセイム様じゃないかしら。」

「ほんとだわ。相変わらず、今日もお美しいですわ〜。」

「わたくしなんか、あの方と目が合っただけで胸が張り裂けそう・・・。」

「まあ!!いつ目がお合いになりましたの。羨ましいですわ。」

「ああ。一度でいいからあの方の腕に抱かれてみたい・・・。」

「「きゃーーー!!」」



・・・・なんて、完全に妄想の世界に突入しちゃってる。


私はそのままの姿勢で視線だけ窓の外に向ける。

丁度、さっきの2人、いや、この学園の全ての女の子の噂の的と言っても過言ではない人物の姿が目に入った。



エルセイム・ウィル・セーヌ・シルヴィアス



名前からも分かるように、彼はこの国の王族である。

大抵の女の子たちは、彼の気を引こうと必死である。

一族繁栄のため、王族の血ほしさに近づく者もいるが、純粋に彼に惚れてしまった子も山のようにいる。


・・・無理も無いと思う。


色素の薄い、明るいブラウンの少し猫っ毛の髪。

透き通る宝石のようでもあり、燃え盛る炎のようでもある、赤い瞳。

白くきめ細かい肌。悔しいけど、女の私よりきれいな肌だと思う。

それでいて、バランスのとれた整った顔立ち。

でも、決して女っぽいなんてこともない。

はっきり言って、かっこいい。その辺の男じゃ相手にならないと思う。


その上、成績は常にトップで魔術の才能にあふれ、武術にも長けている。

これでモテないはずが無い。



そんなことを考えていると、ふと廊下が騒がしくなってきた。

どうやら、麗しのエルセイム様がやって来たようだ。




「いつ見ても素敵っ。」とか「本当にほれぼれする美貌ですわ〜。」なんて騒いでる女の子たちを

気にも留めず、当の本人は涼しい顔して教室に入ってくる。

そして当たり前のように私の前の席に座る。


そう。何の因果か私と彼は6年間ずっと同じクラスなのだ。

ほかの子が聞いたら羨ましがるかもしれない。

でも、私にとってはちっともうれしくなんかない。



今ここで宣言しよう。



私は、エルセイム・ウィル・セーヌ・セルヴィアスのことが、大嫌いだ。





























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