暖かい手
(2)
彩乃が住んでる町は四方八方から森で囲まれている。丁度、円になっていて、半径が約20kmの小さな町だ。森の外への外出は禁止されている。なぜ出ては行けないのかは教えられないが、子供達は決して出ようとは思わない。なぜなら小学校で教え込まれたからだ。
森の外には砂漠しかない、生きのっこてる人類は私たちだけだ。
たぶんこの生き残ってる人類とは私たちの町だけだと言ってると、子供の私たちは思った。
彩乃の高校は街の丁度真ん中に位置している。真上から見るとカタカナのコの文字に見える高校、帝国高校。コ型の校舎には、普段勉学をする教室が並んでいる。四階だてだ。
帝国高校は地下がある。主に地下は体育館がわりに使われている。awの練習も体育館で行われる。そのため天井ははとても高い。
まだ9月下旬なのにやけに冷たい風が吹いていた。私は自分の手を口元に持ってきて、生暖かい吐息をかける。
「ほら、朝出て来る前に言ったでしょ。手袋はめてきた方がいいって」
隣で歩いている美希が手袋を見せながら言ってきた。またやけに冷たい風が吹いた。
少し間を開け私は言った。
「だって……家の中は暖かったもん」
「あれはストーブを付けてたからなの」
「ほんとぉ?………………あ、そうだ」
美希は私の声に少し肩を震わせて言った。
「…何か思いついたの?」
「うん、思いついたの!ミーちゃんは手袋をはめてるんだから、手を繋げばいいんだよ!」
「え、いやだよ。誰かに見られたら恥ずかしいもん」
耳を少し赤く染めた美希は下を向きながら抗議してきた。
「大丈夫だよ!女の子同士だから!」
私は美希の返事を聞かずに手を掴み恋人繋ぎまで持っていく。
「…………途中までだからね」
承知を告げた美希の耳はまだ少し赤かった。