第四話《商店街…だが腹黒》
「ほぉー!これが商店街。美味の匂いがいっぱいする」
今日は日曜日。あまりにも暇だったので山を下りて少し開けた商店街にいる。日に三本しかないバスで一時間以上かけて来たがすでに疲れている。
この場所はたまに俺が食糧の買い出しに来る場所であり、唯一近場の外出場所だ。ほかの場所はもっと遠いのでいつもここになってしまう。
だが、やはりこの商店街も周りは田舎である。周りに畑や民家はあるがほかには何もない。
そして箱娘は久しぶりの外なのか目をキラキラさせていた。
「おー!あっちから美味の匂いが!いやこっからも美味の匂いが!これは……たまらん!」
目がキラキラからギラギラに変わっていた。たかが商店街でこれほど興奮するとは。
肉屋『お!可愛い娘がいるねー!ほら試食だ。メンチカツ食べるかお嬢ちゃん』
「何かは分からないが……いただきまーす!!」
肉屋『兄ちゃんもどうだ!』
「あ、俺は大丈夫です」
「美味!このサクサク美味です。おい、中原。これを十個買うぞ」
「十個ってお前、そんなに食えるのか!」
「食べる……いや、食べなかったら後悔する。この味はたまらん」
肉屋『お!分かってるねー。お嬢ちゃん可愛いからサービスしてやるよ。一個百円を五十円で半額だー』
「いや、俺……」
「本当か!じゃ、中原お願い」
「……買います。メンチカツ十個下さい」
ちくしょー!半額とはいえ貴重なお金がー。
「……で中原。半額って何だ?」
お前意味分かってないのかよ。バカなの?バカなの?
肉屋『まいど!」
俺は缶詰やインスタントラーメンを買いに来たんだけどなー。理由は保存が効くから。
そしてこいつはもう食べてるし。
「サクサク美味!サクサク美味!」
「そんなに揚げ物ばっかり食べると太るぞ箱娘」
「別にいいじゃない。私はガリガリだから栄養補給をしないと……む!やっぱり……美味!」
なんとこいつ!全部食いやがった。俺に一個もくれなかったし。
「次はサッパリが食べたい」
「まだ食べるの?しかもサッパリって何だよ?」
「うーん、野菜」
……と言う事で次は八百屋に向かいました。
八百屋『あら、可愛い娘ね。妹さんかしら」
「いえ、ただのバカです」
「誰がブスだってええええええ!!」
「いや、一言もブスとか……ってぎゃあああああ!!」
箱娘の華麗な空中飛び膝げりは俺の頭にもろに直撃した。理不尽だああああ。
八百屋『あら♪仲良し兄妹ね』
どこをどう見たら仲良しですか!
「おばちゃん!一番美味な野菜はないのか?」
八百屋『美味ねぇー。やっぱり夏はキンキンに冷えたトマトかねー。冷やしたらもう最高なのよ』
「じゃあそれを十個ちょうだい」
またですか!また十個ですか!
八百屋「ちょうど氷水に冷やしているのがあるわ。十個で千円よ」
「おい!中原。千円だって」
「ちくしょー!後で覚えてろよ」
八百屋『ありがとね!また来てね。黒い服のお嬢ちゃん』
「はい!また来ます」
「もうお前とは来ないよ」
箱娘はさっそくトマトをかじる。口にいっぱい頬張るその姿はハムスターみたいだ。
「お!これは甘くて美味!そして…頭が痛い」
いっぱい口に入れすぎだバカヤロー。
「うん。本当に美味だ。中原も食べろ、ほら!」
お!珍しい事もあるものだ。独占すると思ったが……
「お!なかなか美味しいじゃねーか」
「でしょ!でしょ!美味すぎて震えが止まらない」
え!そこまで!こいつ一体昔は何食べてたんだろ。
しかし黒いワンピースをヒラヒラさせるその姿とトマトをひたすら食べるその姿はちょっと可愛い。
「……ごっくん。ふー、美味だった♪」
早!またも完食。この細い体によくあんなに食べ物が入るな。
「……私は満足です。早く買い物を済ませてね。なんか…満腹になったら眠くなってきた」
箱娘は目をゴシゴシして大きなあくびをする。
「私……あのベンチに座ってるから」
そう言うとベンチの場所まで行き横になった。
「なんて、勝手でワガママな奴だ。俺は呪われているのか!いや、待てよ。マジで呪いかもな。箱から人間に変わる生物って現実ではありえないもんな。いや、待てよ。呪いだったら俺死んじゃうのか!俺死んじゃうのかああああ!!……がは!」
ベンチで横になっている箱娘の横で俺が呟いていると箱娘は突然起き上がり俺の腹を殴りつけた。
地味に痛いっす!地味に威力があります!
「うるさいわよ!何勝手に妄想してるの!呪いなんかないわよ!!私は普通の……」
「普通の何だよ?」
「普通の……人間」
「いやいや違うだろ」
この俺の言葉に箱娘がいきなり泣きはじめてしまった。
「うわああああん!中原がイジメるよおおお!」
「え!ちょっと何泣いてるんだよ。いきなり泣くなよ。周りの人の目線が痛いからやめてくれ」
「……ぐすん……メンチカツ」
「え?何?」
「メンチカツ……二十個で泣かない」
まだ食べるのかお前は!!
「……く!分かったよ。後で買ってくるから」
「やった!じゃあ早く用事を済ませてね」
嘘泣きかコノヤロー!!いつか本当に泣かせてやる。
―――
――
―
三十分後……
「おい!帰るぞ箱娘」
「むにゃ。私は……タワシ……そう冷凍タワシ……むにゃ」
そこにはベンチで爆睡している箱娘。しかし何の夢を見てるんだ?タワシが冷凍って意味が分からん。
「おーい!箱娘」
「むにゃ」
「美人の箱娘!」
「むにゃ」
「買ってきたメンチカツ食べちゃうぞ」
「むにゃ……は!メンチカツ」
起きるの早!!メンチカツ恐るべし。
「うーん、よく寝た……かな?」
「かなり爆睡してたぞ。よだれが口から出てたし」
その言葉に何やら顔が赤くなっている。
「よだれ!は……恥ずかしい」
いやいや、周りを気にしないで俺に飛び膝げりをやる少女のほうがよっぽど恥ずかしいぞ。
「さあ、帰るぞ箱娘」
「恥ずかしい」
顔を両手で隠しながら箱娘は俺に向かって一言。
「……でもありがとう。楽しかったわ」
「それは良かった。また一緒に来るか?」
「うん」
ふーん。可愛いところあるじゃん。ま、次はなるべく食品系は避けていこう。




