第二話《私の名前は…》
「ズルズル……ズルズル……なかなか美味しい味…」
さっきまで泣いていた少女はテーブルに座り今、カップラーメンを召し上がっておられる。
「あのー、食事中悪いんだけどあなたは誰ですか?人間ですか?それとも化け物ですか?」
いきなり腹が減ったと言い出し俺の貴重な食糧を分け与えているが一体誰なんだこの少女。
「ズルズル……ズルズル……こんな食べ物……初めて食べた」
「人の話を聞いていますか!あなたは誰なんだよ!」
少女は麺を食べ終え最後にスープを味わっている。
「ズズズ……ズズズ……ふぅー、……美味 !」
ダメだ。こいつ人の話を全く聞かない。俺の言う事をとことん無視してやがる。しかし旨そうに食うなこいつ。
「そんなにカップラーメンが旨いのか?」
「私の名前は箱娘」
え、今答えますか!俺の質問はガン無視ですか!
「は、箱娘ね。……それでは箱娘……ってぎやあああ!!」
いきなり箱娘と名乗った少女は俺に顔面パンチを放ってきた。
「呼び捨て……嫌いだわ」
「痛いんだけど。どう見ても俺のが年上なんですけど」
箱娘は俺に対して殺気を送り続ける。いやいや恐いんだけど。
「私……あなたより年上よ」
「いやいやだって小学生じゃん!どっからどう見てもガキじゃん!」
「ガキ……また私を侮辱した」
やべ!黒いワンピースが殺気に反応してゆらゆら動いてるよ!
「私は、少なくともあなたより五十年くらいは長く生きているわ」
「五十!ってババアじゃねーか!」
「ババア言うなああああ!!」
バキ!ボキ!ドス!ゲス!死ね!メキメキ!ドスーン!殺す!ザクザク!パシパシ!!end。
「どぅびばぜんでじた」
俺は箱娘から描写出来ないほど半殺しにあってしまった。酷いよー、意味が分からないよー、カップラーメンの恩を忘れたのかよー。つーか性格が変わってるような。
「全く失礼な奴……身体は十代前半で止まってるのよ」
箱娘は俺の胸ぐらを掴みさらに一言。
「もう一つあのカップラーメンと言う食べ物を貰うわ」
「わがりまじだぁ」
顔が痛い!足が痛い!腕が痛い!おのれこの恨みいつか晴らしてくれよう。
「でも……ありがとう。私はずっと箱だったからとても寂しかった」
おい!そこでキャラクターを変更するなよ!恨みを晴らせねーだろうが。
「別に……少しお礼を言っただけよ。『なんで箱の姿に』……とは聞かないのね」
いや、お前が人の話を聞かないから言うに言えなかったんだけど。
でも……まぁ……訳ありのような気がするから聞かないよ。
「まぁ、本当は聞きたいけど別に話たくないならそれでいいんじゃないか。さっきの涙の理由もその事と関係あるみたいだし」
「ふーん。あなた……優しいのね。じゃあ私をここに置いてくれない?」
「ああ、いいよ。……………ってええええええええええ!!」
何これ!なんか恋愛ゲームみたいな感じになってるんだけど!意味が分からん!そしてどうする俺!!
「いや、ちょっと……考えさ……」
「ありがとう……じゃあ宜しくね」
人の話を最後まで聞けよおおおお!!
「では改めまして箱娘です。どうぞ宜しく」
「いやいやどうも中原勇です。こちらこそ宜しく」
うおおおお!!流れで変な事言っちまった。
「では中原。カップラーメンを早く持って来てくれ」
「はぁ。……了解。箱娘」
「また呼び捨てを……いや、もういい。箱娘でいいわ」
あぶねー。また殴られるかと思った。
「じゃあこれから箱娘でいいな!殴らないよな」
「私は居候だからしょうがないわ。呼び名は好きにどうぞ」
箱娘はそう言うと腰まで続く長い黒髪をパサリとなびかせる。
こうして見るととても可愛いらしく、とても華奢な体つき。
俺はなぜかにっこりと笑いながら横にもう一つあったカップラーメンにお湯を注いだ。
「なぁ箱娘」
「何だ?中原」
「いや、なんか……こう……何と言うか……宜しくな」
「……こ!こちらこそ!私はのワガママを通してくれてありがとう」
箱娘はなぜか照れながらカップラーメンに手を伸ばす。