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02

 放課後、自転車置き場でタネガシマに急に聞かれた。

「オマエさ、ミナコのことどう思ってんだよ」

 別にどうも、と答えると、「あのなあ」と彼は急に諭し口調。

「ミナコに惚れてないのか?」

「ってさ、英語のノート借りただけでどうして惚れるんだよ」

 オ、マ、エ、なあ、とぽむぽむ肩をたたかれる。

「あんなカワイイのに惚れられて、何にも気づかないの? アンタ」

「えええ」あり得ねえ、と真っ向否定。

「あっちは英語、学年トップ三だぜ、オレなんて全教科赤点スレスレなのに」

 あああ~~っとタネガシマは頭を抱える。

「だからオマエ、まだ毛が生えねえんだよ」バカ生えとるわ、と心で答え、タカオが蹴りを入れる。そんな彼に、タネガシマは真面目な顔で聞いた。

「オマエさ、誰か好きな子とか、いるの? もしかして」

 今度は急に、タカオが頭を抱えた。

「聞くなよぉぉ」

「いるんだなぁ」タネガシマの腕がに首に回る。

「誰だよ、教えろよシイタケ」

「やだよ」

「オレは教えたぜ、前に」

「そういう次元じゃなくて」

「何だと?」腕にますます力が入り、タカオ、目の前が暗くなって星が飛び始めた。

「じゃあどういう次元なんだよ? 異次元か?」

「く、く、くるじい」バカ離せ、と思い切り突き放す。

「まだ全然、向こうは何にも思ってないんだって」

 咳き込んでからようやく言った。

「はあ」タネガシマは、笑っている。

「それじゃ、片想いってコト? シイちゃん純情だねえ」

 タカオ、答えずむっとしてチャリを出した。

「ミナコも眼中にないんじゃあ、かなり上狙ってんだなぁオマエ」

「ヨシダさん」

 チャリを引きながら、ぶすっとした顔で答える。

「え?」学校によく出入りしている野良犬も、たまたま吉田さんと呼ばれていたのでタネガシマはきょとんとしながら訊き返した。

「あの犬? オマエ実はほんとにペスなのか? 庭で暮らしてるってさ」

「ばーか」タカオがむっとしてふり返った。

「ヨシダリョウコ」

 え? マジかよ、マジかよ? タネガシマは本気でびっくりしている。

 学年内でも目立たず、どちらかと言うと暗い雰囲気の女子だった。

「あの人、しょっちゅう休むぜ」

 確かに細くて、色も白い。でも長いすらっとした髪がとても素敵だった。

「だから、守ってやりたくなるじゃん」

 おいこれ内緒だぞ、誰にも。と一応口止めはしたが、

「わかったわかった」の言い方がすごく軽いタネガシマ。

「頼られると、突っ走っちゃうタイプなんだよね~シイちゃんは」

 うるせえほっとけ、と彼は走り出した。

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