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01

 翌週月曜日、学校に行ってまず担任に詫びを入れる。ハハオヤがついて来る、と言ったのだが一人で謝れるからいい、と固く断り、早めに登校し、職員室に向かった。

 担任は、あまり叱らなかった。パチンコ屋がどうなっているのか興味があった、という彼の話をうのみにして、穏やかな声のまま「今後は気をつけるように」でとどまった。

 前科がないのが幸いしたらしい。

 ずる休みの話はさっそく、連れに広まっていた。

「シイさん、やるなあ」

 もちろん、チラ見で終わったことや、ヤクザに誘われたことは黙っていた。

 それでも、21HRの連中やバスケ部の仲間は大喜び。夏休みに水野たちが酒盛りをやらかして、たまたま通りかかった学年主任に見つかった時以来の湧きたちようだ。

 タカオは、彼らに聞かれるたびに

「いや~3万はスったかなあ」

 などと適当に相槌をうっていた。そんな中、

「おいシイナ」

 クラス内でもけっこう付き合いの多いタカハシが教室に走りこんできた。

「やべえ、チクリンの宿題あったんだ? 見せて」

「バカ、オレ謹慎中だったもん、やってるワケねえじゃん」

「はあ」やっぱり仲のよい横のタネガシマがあきれたように叫んだ。

「謹慎中だから、自主勉すんじゃねえのかよ、シイちゃん」

「お、美奈子来た」お~いミナコ、宿題見せてくれよ~とタカハシが手を合わせると、美奈子と呼ばれた女子は端正な顔をしかめて

「え~?また?」とむっとしている。

「オレもみして」タネガシマも頼むが無視。

「オレもやってねえ」ついでなので、タカオも手を合わせる。

「お願いします、見せてください」

 すると、美奈子はあっさりとノートを渡した。

「え~なんでオレっちはダメでシイナはOKなんだよ」

 脇の二人が猛烈な抗議を訴える中、美奈子は腕を組んで答えた。

「だってシイくんは体調不良で先週水曜に休んだんでしょ? ずっと調子悪そうだったし」

 二人はまたガミガミ言っている。

「バーカ、こいつ、ずる休みだぜ」

「パチンコ屋行ったんだぞ、水曜日」

「それでオヤジにとっちめられてさ、コイツ今、自分ちの庭の犬小屋で暮らしてるんだってさ」

「そうだよ名前もペスに変えられたんだってよ、椎名ペス」

「ええ?」美奈子はそれでもノートを取り返そうともせず

「ほんと? シイくん」

 と聞くので

「その人たちは嘘つきです……頭痛がひどくてさ、週末もずっと寝てた」

 どうだオレは事実しか言ってないぞ、と脇の二人に偉そうな目線を送る。

 タカハシが気づいた。そうか、写した後でシイナから見せてもらえるじゃん、タカオににやりとしてみせてからあわててタネガシマに合図する。

「いいですよ、オレっちジ、ブ、ンでやるから」

 タネガシマはそこまで気づかなかったらしい、無邪気な茶々を入れる。

「いいですよ。な、行こ。どうせミナコはシイちゃんに惚れてるしぃ」

 二人揃ってワイワイと去っていった。

 タカオは美奈子とふたり、ぽつんと残される。

「ありがとう」美奈子をみると、なぜか真っ赤になっていた。

「どうした?」

「なんでもない」

 あとで机に入れといてよ、とつっけんどんに言って、彼女は走っていってしまった。

 タカオは首をひねりつつ、それでも目的のノートはゲット。急いで自分の机に向かった。

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