04
どうやって家までたどりついたのか、全然覚えがない。
ハハオヤが
「あら、タカくんだいじょうぶ?」
と心配そうに声をかけてくれたのも、半分夢の中のようだった。
部屋に戻って、ばったりとベッドに倒れ伏した。男に触られたショックよりも、頭痛のほうがひどい。とにかく、眠りたい。
夕飯に起こされるまで、彼は夢もみずに眠り続けた。
数日後の金曜日、あっさりとずる休みがバレてしまった。
学校に、パチンコ屋で当校の生徒がウロウロしていた、というお節介な電話があったらしい。
当日の生徒で該当するのが、たまたま椎名君とあと一人なんですが……ちょっとご家庭で確認していただけませんか? と担任からの問い合わせだった。
その日電話に出たのが、たまたま振り替え休日で家にいた父親だったから、騒ぎがでかくなった。
部活も終わって夕方遅く帰ってきたタカオ、いきなり玄関先で胸ぐらを掴まれた。
「こっち来い」
座敷まで引きずられる。
「ここへ座れ」
ハハオヤが、どうやってとりなそうか入り口でオロオロしていた。
「ねえヨシノブさん、まだそう決まったわけでは」
「コイツに決まってるだろう」
いつもは彼女に甘い父も、つい声を荒げている。
「あれ? 何なの?」
週末にたまたま帰ってきた兄貴の総一郎が、部屋をのぞきにきた。
「何? タカオどうかしたワケ」
「学校サボってパチンコ屋にいた、担任から電話があった」
オヤジはタカオの前に立ちはだかったまま、腕を組んで答えた。今にも火が噴き出そうな目線を彼に浴びせている。
「へえ、やるじゃん」兄貴は、半分面白がっている。
「誰と行ったんだ? トモダチと?」
「総くん、それにお父さん、違うと思うよ」
ハハオヤはタカオの脇に膝をついて、父を見上げた。
「だってその日、思い出したけどタカくん、調子が悪くなったみたいで午前中帰ってきたのよ、ええと」本当は11時を過ぎていたと思うが
「……10時前には」ホントよ、と言い重ねる。
「ね、タカくんそうだよね」
そっと肩にかかる手を
「うるさい」とはねのけた。ハハオヤは傷ついたように手を押さえて彼をみる。
「何だ母親に向かってその態度は」
オヤジの怒声がとぶ。
「どうなんだ、本当に行ってないのか」
タカオはきっとなってオヤジをにらみつけた。どんな目つきだと言われても知るか。
「パチンコ屋に行ってたよ、悪いか」
固まった。みんな動かない。
総一郎だけ、後ろでうすく笑っている。成り行きを楽しげに見守っている感じだ。
「ついでにヤクザと遊んできた」もうヤケだ。
オヤジが目を向いた。
「何だと?」わなわないている。
「クスリか? 賭博でもしたのか?」
「ちがう」あえて、はっきりと口にした。
「バイシュンだよ、バイシュン。金くれた」
嘘ですけど、もう壊れるなら壊れろ。