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世界を変える方法  作者: 朔月悠
‐序章‐ 上から降ってきた少年
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‐序章‐ 上から降ってきた少年 07

リオルドと過ごすようになったために見つけた住処は、市場から離れたところにある。

物の流通が盛んな場所に近ければ近いほど、人は多く、その分柄が悪い連中も集まる。

自分にとってはさほど距離があるわけではないが、リオルドは遠いと文句を言われた。

だが、その代わりに広さと安全性は高い。

少し前まで人が住んでいたらしく、瓦礫と一体化している外壁と比べものにならないくらい手入れがされていた。その上、家具付きときている。

また、この居住スペースにたどり着くには、入り組んだ廊下を歩かなければならない。

迷路、というにはお粗末だが、それぐらい複雑だ。

もっとも、天井近くの大きく崩れたところから入れば、ほとんど歩く必要なく、たどり着ける。

今回もそこから入り、リオルドの部屋にあるベッドに本人を寝かせる。

服を脱がせると、主に腹と腕に青痣が広がっていた。

もしかしたら、骨でも折れている可能性もある。

足は立てたぐらいだ、対したことはない。

一通り怪我の具合をみると、タンクから水を持ってくる。

殴られ腫れている顔に濡らした布を当てる。

腕と腹は骨の具合を見て、折れていれば、キツく布を巻きつけ、そうでなければ顔同様に濡れた布を当てる。

その間、リオルドはじっとしていた。こちらを気遣ってではなく、動けないのだ。

時間が経つに連れ、顔色も悪くなってくる。

なんとか今夜持てば大丈夫なのだが・・・

その日はできることをし、一晩中看病にあたった。

それからリオルドが回復したのは3日後のことだった。

「お礼がしたい」

「ダメだ。」

体が動くようになるとそう言い出したので、バッサリ否定する。

とたん、リオルドは顔を顰める。

「助けてもらったんだから礼をするのは当たり前だろ。」

「諦めろ。」

第一、

「礼をするといっても何が出来る。言っておくが食べ物をやるとか許さないからな。」

リオルドに念を押す。

すると、本当に食料でもあげるつもりだったのか、拗ねた顔つきになる。

「・・・ここじゃあ、まともに礼をすることもできないのかよ・・・」

ぼそりと呟かれた。

礼もなにも、他人を助けるなんてことはここでは珍しい。

そもそも、他人がやったことを勝手にそう解釈しているにすぎない。

リオルドがこれ以上何も云わずに黙ったので、一度水を取りに行く。

普段持ち歩いている水筒に水を汲んできたところで、

「シオンが崖上に行ったことがあるのか?」

唐突にリオルドが切り出した。

なぜいきなりそんなことを言い出すのかわからずに、リオルドを見るに留まってしまう。

「お前ってさ、崖下に住んでいるわりに物を知ってるよな?」

「・・・確かに俺は崖下に生まれたわけじゃない。崖上にいたこともある。」

隠すほどのことではないが、この手の話は好きじゃない。

その言葉にリオルドは少なからずショックだったようだ。

「なら、なんでおかしいと思わないんだよ!崖上には少なくとも、生活を保障する法律とか、義務教育だってあっただろ!」

「あいにく俺はその恩恵を受けられるほど上にいたわけじゃない。」

「でも「リオルド」

ヒートアップしそうなリオルドを一度止める。

ここでそんなことを議論しても何も変わらない。

「お前が”おかしい”と思うのは、お前が崖上に住んでいたからだ。だが、崖下の連中は崖上を知らない。知らないものをどう比較する?比較ができないければ、おかしいとも感じることはない。」

「それでも」

「それでもなんだ、お前が騒いだところで”おかしい”のはお前だ。」

「・・・・・」

はぁと思わず溜め息が出てしまう。

自分にはリオルドが何をしたいのか理解できない。

崖上と崖下、同じ国ではなるがその接点はないに等しい。

本当ならば、リオルドが崖下にくることはなかったはずだ。

だから、リオルドはこんなことで騒ぎ立てる。

「何か食べるか?」

もうこの話題は終わりと、別の話を切り出す。

「・・・・」

だが、リオルドからの返事はなかった。

また小さく溜め息をつくと、部屋を出ようとした。

「わかった。」

何が、とリオルドを振り返る。

「知らないなら、教えればいんだよ。」

リオルドの言葉に顔を顰めてしまう。

「同じ国なのに、こんなことはおかしいんだって、思うようになればいんだ。」

「何を言っているんだ?」

「シオン」

シオン、と呼ばれて日は短いが、かつてないほど、力強く呼ばれた。



「俺は、崖下を、世界を変える!」



Fin ~‐序章‐ 上から降ってきた少年~

ここで序章は終了です!ここまで読んでくださりありがとうございます!

今後もこのペースで投稿したいと思いますので、よろしくお願いします。


序章、ということは本編はこれからです!

序章ということで、シオン視点で、物の描写があいまいなのはわざとです。

ちなみに、主人公2人の名前を書いた設定の紙を無くし、プロットを確認するとまさか2人の名前が入れ替わってしまったという事故が発生したり、リオルドに最後の台詞をどう言わせるか盛大に悩み、そして長くなるという結果になったりとすでに前途多難でした。


それでもようやく本編に移れます。

これまで考えてキャラクターを動かせます!

話が進むにつれ、世界観とかも出していきたいと思いますので、よろしくお願いします。


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