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世界を変える方法  作者: 朔月悠
‐1章‐ 崖下の街
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‐1章‐ 崖下の街 12

リオルドは頭を抱えた。

シオンの物事に対する無関心さには、ここ3年で嫌というほどわかっていたはずだった。

「だからって、普通自分から腹の中に入るか?」

「死んでいるから問題ない。」

いくら待っても帰ってこないシオンを心配して戦々恐々としながら、蛇の死体に向かったリオルドにシオンは真顔で答える。

ちなみに、リオルドからすると、蛇が生きている、死んでいるというよりも、

「気持ち悪くないか?」

「別に。」

蛇の口から戻ってきたシオンの状態は一言で良い切ってしまえば、汚い。

死んでしまったとはいえ、あまり時間が経っていない内蔵の中には唾液だの、胃液だの、体液が乾ききっていない。

その中をつき進めば、当然頭からつま先まで粘り気がある体液でまみれるわけで・・・

「アリアのところに行く前に水浴びしよう。」

リオルドは半場無理矢理シオンを水場へ連れて行くのだった。

シオンが蛇の体内から持ってきたのは、1つの黒い鞄。

ひとまず水で洗い、体液は流し切ったあとでリオルドが中を上げると、中には西側で取れる毛皮が入っていた。

すでに加工されているようで、袖がある。

やはりこちらも希少価値があるものだ。

東西の高級品が揃うとあれば、わざわざこんなところで取引をしたのも頷けた。

もっとも、西側の人間はそのために蛇に喰われたのだが…

「終わった。」

リオルドが鞄を閉じると同時にシオンが言った。

豪快に水を被り、ざっと拭いただけらしく、髪は濡れたままだ。

もう少し拭いた方がいいと思ったが、完全に乾かせることができないので、リオルドは何も言わずに鞄をシオンに返す。

そうして、2人はアリアの店に向かった。


「ご苦労様。」

アリアの店につき、メアリーに案内された部屋でアリアは言った。

社長室にあるような大きなデスクと椅子があり、まさにその椅子に座っていた。

シオンから鞄と、こちらが用意した品を受け取る。

「あら、渡さなかったの?」

包みをあけて、中身を確認しながら聞く。

「取引場所で相手が死にましたので。」

あっさりとシオンが答える。

「そう。」

興味なさげにアリアも返した。

アリアとしては、きちんと取引がなされたことより品物を受け取ったことが、重要のようだ。

アリアは座っていた椅子から立ち上がる。

アリアの見事なモデル体型が露わになると颯爽とカバンから中身を広げる。

大きく広がったそれはコートだ。

一体なんの毛皮なのか、茶色に黒い斑模様と縞模様が入っている。

それをバサリと肩にかけた。

ハイヒールを履いたアリアに丈があっているところからするとアリアのオーダーメイドらしい。

「どう?」

アリアがくるりと回って、シオンではなく、リオルドに目線を向けつつ聞く。

「に、似合っていると思います。」

たどたどしくリオルドは答えた。

正直なところ、一体暑い昼間のいつ着るのか不思議に思っているが口には出さない。

思ったことをそのままいえば、被害を被ることがあるとここ3年で嫌という程思い知らされている。

だが、無難過ぎるリオルドの言葉にアリアは納得しなかったらしい。

整った眉をひそめるとカツカツとリオルドに歩み寄る。

「そんな受け答えじゃあ、女の子にモテないわよ。あんたも見た目はいんだからそれを最大限に使っていかないと。」

で、どうかしら?とひとしきり言った後再びくるりと回る。

何度問いかけられてもリオルドにコートの良し悪しはわからない。

似合っていると言ったのはお世辞ではなく、本当のことだ。

それ以上にうまい言葉が思い浮かばず、困惑した顔で考え込むこと数分。

「綺麗な毛並みですね。」

…その場が静かになる。

いたたまれなくて隣のシオンに目を向けるが、目があった途端ため息をつかれた。

(お前にため息つかれたくない!)

リオルドは心の中で毒付く。

そんなリオルドの心情を感じ取ったのかクスリとアリアは笑う。

「素直に言っていいのよ?悪趣味とか、こんな砂漠のど真ん中でこんなのいつ着るんだとか。」

アリアはコートを脱ぎ、丁寧にケースに戻す。

この言葉にリオルドはええ?と困惑した顔を向ける。

「気を遣って頂いて悪いけど、私のものじゃなく、取引先のものよ。」

素直なリオルドの反応が面白いのか、楽しげな声音で言う。

「誰にも持っていないような毛皮のコートが欲しいっていう注文でね。こんな悪趣味なものの何が良いのでしょうね。」

パタンとケースを閉じた。

リオルドははぁ、と息を吐き出す。

気を遣って返す言葉に迷った時間を返して欲しいところだ。

「シオンは知っていたのか?これがアリアさんのものじゃないって。」

ため息までついたぐらいだから、事情を知っていたのかとシオンに聞くが、首を振られた。

ますますリオルドは落ち込む。

「気にすることじゃないわ。むしろお手柄よ。ただで手に入ったんだから。」

アリアはリオルドに近づき肩に手を置く。

「シオンもお疲れ様。もう今日は帰っていいわよ。」

と、アリアは笑顔を向けた。

リオルドが外に目を向ければ、だいぶ日が傾いていた。

あと少しで光が届かなくなり、夕闇が訪れる。

「行こう。」

「…うん。」

シオンに促され、リオルドはアリアの部屋から出て行った。


かなり間が開いてしまったが、ようやく1章終了!

かめ更新となっていくと思われるがめげずに続けます!(^^)

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