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世界を変える方法  作者: 朔月悠
‐1章‐ 崖下の街
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‐1章‐ 崖下の街 09

シオンがリオルドを連れてやってきたのは、崖下の西側と東側の境界線となっている場所だ。

一体誰がやったのか、4車線分の幅でまっすぐの道が引かれている。

ここから俺の土地!と線を引いたようにまっすぐな道の左右には避けられた瓦礫の山が連なっている。

シオンはその境界線の真ん中に立ち止まる。

後ろについてきたリオルドも、おっと、と足を止める。

てっきり西側に行くと思っていたリオルドは、思わずシオンを怪訝そうな顔で見る。

勿論リオルドに背中を見せているシオンがその表情に気付くことはなく、リオルドも顔には出しても何も言わなかった。

(待ち合わせか何かか?)

リオルドの認識はこんな感じだ。

だいたいリオルドを争いごとから避けるシオンが、わざわざリオルドを連れてきたぐらいだ。

もしかしたら、待ち合わせや取引の類かもしれない。

今更ながら、それに気付いたリオルドは思わず、脱力する。

シオンが強いことは知っているが、それを間近で見る機会があまりないので少し楽しみにしていたのだが、シオンを見れば、微動だにしていないし、西側の瓦礫の山をみても人が来る気配もない。

「・・・座ってていい?」

立っているのが億劫になって、リオルドはシオンの返事を待たずに東側の瓦礫の山に向かう。

定期的にきれいにしているのか、境界線の上には小石はあっても腰掛けるほどの大きな石がないのだ。

リオルドの目線の先には、大きな瓦礫の下で丁度いい高さで突き出している岩がある。

あそこなら、道の端ギリギリでシオンを1人にすることもないと、足を早めた。

対して、リオルドの動きに気付いているのかいないのか、シオンは何も反応せず、ただ立っていた。

その目線は、西側の瓦礫の山。

風も吹いていない今、人の気配は愚か、小さな小石も転がらない。

その状態のまま、しばらく時間が過ぎた。

シオンの後ろで、目をつけた岩に腰賭けているリオルドは退屈であくびをする。

正直なところ、崖下で待ち合わせとなると、どちらかが長く待つことは普通だったりする。

時計がないのでおおよその時間は太陽の位置で把握するために、時間の指定も大雑把だからだ。

うまくどんぴしゃで相手と会えれば良いが、ほとんどは外ではなく、店の中とかで待ち合わせる。

店にいれば長くなっても時間を潰せるし、もし相手が来なくとも店主に伝言を頼めばいい。

(ママさんの噂だと、大きな縄張り争いでもあるのかと思ったのに・・・)

ぼんやりと、景色の一部となりかけているシオンの背中を見ながら思う。

リオルド自身、争いが好きではない。

好きではないが、たまに見かけるシオンが戦う姿は綺麗だと思う。

漫画や小説のようだが、無駄のない動きというのは目を引き付けるものがある、と感動したことがある。

だが、さすがにリオルドは飽きてきた。

空をみれば、太陽は先ほどより傾いている。

感覚的にだが、ぱっと見で傾いているとわかるぐらいだと、1時間は経っていることになる。

「誰かくるの?」

リオルドがやっとシオンに声をかけた。

シオンは振り向かず、相変わらず前方に目を向けたまま、

「アリアの話だと来る。けれど、多分来ない。」

「来ない?」

リオルドは怪訝そうな声で返す。

アリアが来るというからには、誰かがこの場所に現れるはずだ。

仮にも東商館の顔役との約束だ。相手がそれをすっぽかすわけがない。

それに、リオルドは”多分”というシオンの言葉が気になった。

シオンは基本的に、多分、とか、もしかしたら、とか曖昧な表現はほとんど使わない。

なんとなく、嫌な予感がする。

「シオン、もどったほ「来た。」

リオルドが岩から立ち上がったとき、ガラガラ!と瓦礫が崩れる音がしたかと思えば、シオンの目の前に現れたのは、

人ではなく、大きな口を開いた蛇だった。

「シオン!!」

リオルドは声を上げる。

シオンは大きく横に飛んで、蛇の口を避ける。

避けると同時に、バクン!と口が閉じられる。

蛇の目は完全に横に逃げたシオンに向けられている。

シューシューと音を立てて、再度シオンに狙いを定めるためか頭をもたげる。

その間リオルドは、瓦礫の側で体制を低くして隠れていた。

正直なところ、普通の人間がどうにかできる大きさの蛇ではない。

頭だけで、シオンの倍近くあり、人間1人丸のみするぐらい簡単なのがわかる。

さいわいなことに、蛇はリオルドの存在に気づいていていないらしく、完全にシオンを見ている。

頭もでかければ、それだけ体も長い。

とぐろを巻くために引き寄せた胴体も含めてくると、途方もない大きさだ。

境界線に留まらず、左右の瓦礫の山も胴体で押しのけられる。

そんな蛇の前でも、シオンの表情は変わらない。

むしろ、腰からナイフを取り出し、構える。

再び、蛇は口を限界まで開けて飛び出してきた。


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