表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を変える方法  作者: 朔月悠
‐1章‐ 崖下の街
15/20

‐1章‐ 崖下の街 08

振り返った時目についたのは、白い前髪と対照的な黒い目だった。

シオンは走ってくるリオルドを見つけると、首だけでなく体ごと振り返った。

その場で待っていると、リオルドが走り寄ってきた。

「どうした?」

自分の目の前で息を整えるリオルドに聞く。

リオルドは隠していたシオンのナイフを取り出す。

「ザンから渡してくれって。」

「なんだ、仕事だったのか。」

リオルドの手から布に包まれたままのナイフを受け取る。

仕事として持ってきたわけじゃないけど・・・という言葉を呑み込んでリオルドは布を外していくシオンの手を見る。

両手とも指の部分がない手袋をしており、それが黒いだけに指の白さが異常に見える。

完全にその指がナイフをくるんでいた布を取り出すと、まず腰のベルトに2本つける。

腰の部分に2本が重なるように収まると、それを隠すようにコートの裾を直した。

そして、それをシオンはすばやく抜く。

シャン!と甲高い金属音がして、磨き抜かれた刀身が姿を現す。

いきなりナイフを抜くのをみた通行人がギョとするが、シオンは気にせずに念入りに刀身を眺める。

何も言わないが、なんとなく様子が嬉しそうなので、出来は良いらしい。

やがて、ナイフを鞘におさめると、くるりと元々歩いていた方向に戻った。

「ちょ、ちょっとまて!」

慌てて、リオルドはシオンを呼び止める。

再びシオンは足を止め、振り返る。

シオンが無言なのは今に始まったことではないが、時間をかけてシオンを探したリオルドに取ってはあまりに呆気なさすぎた。

だからといって、リオルドに何か他に用事があるわけでもない。

「えと、あ、アリアさんに何を頼まれたんだ?」

ぎこちなく切り出したのは、普段なら絶対に聞かないことだった。

シオンも僅かに眉を潜める。

「ごめん!…じゃ、頑張れよ。」

さすがに不味かったかとリオルドはすぐに謝り踵を返した。

「リオ。」

すると、今度はシオンが呼び止めた。

リオルドは驚いた顔で足を止めた。

実を言うと、シオンがこういう時呼び止めるのはかなり珍しい。

いつなら、そのまま自分の予定に戻るか、見送るのだが。

「ど、どうした?」

動揺しつつ、返す。

「一緒に来るか?」

意外なシオンの言葉に、リオルドはすぐに言葉が返せなかった。

「い、一緒にって…」

アリアに何か頼まれたなら、むしろシオン1人の方が仕事は楽なはずだ。

リオルドはシオンがなぜ一緒にいくかと言ってくるのかわからなかった。

「たまには一緒に仕事をしてもいいかな、と思っただけだ。」

「そ、そっか。」

予想外のシオンの言葉に思わず感動してしまうリオルド。

基本的にシオンは何でも独りで出来てしまう。それだけにリオルドに協力を求めることはほとんどない。

無口なのもあって、始めは嫌われているのかと思っていたぐらいだ。

「で、でも大丈夫なのか?アリアさんはシオンに頼んだんだろ?」

シオンは強い。

アリアもそれをわかっているので、その類の依頼が多い。

また、シオンはリオルドを争いから遠ざけている節がある。

「アリアはリオもついてきていいと言っていたから問題ない。」

いろいろと心配したリオルドに、シオンはあっさりと答えた。

シオンは嘘をつかないので、アリアが言ったことは本当だろう。

リオルドは一気に脱力する。

「・・・そっか・・・」

「来るか?」

力なく呟くリオルドに、シオンは確認する。

リオルドは大きく息を吸って、はいた。

「行く!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ