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味読「一月物語」 ―水楢の林―
明治三十年初夏の或る夕刻のことである。
奈良県は十津川村の往仙岳山中に、孤り立ち尽くす青年の姿があった。
平野啓一郎「一月物語」より抄出。
平野啓一郎の「一月物語」を読み続けよう。
3から5段落目。1小節読了。
◇舶来
外国から船によって運ばれてくること。外国から渡来すること。また、そのもの。
◇黒胆汁質
ヒポクラテスの体液説によって分類した四気質類型の一。
心配性で陰気な気質。憂鬱質。
◇鬱勃
森林の描写としてはおかしい。これは鬱蒼の誤りではないか?
◇水楢
ブナ科の落葉高木。山地に多く、高さ30メートルにも達し、樹枝は黒褐色で裂け目がある。大楢。
◇逢魔が時
=大禍時
≪大きな災いの起こりがちな時刻の意から≫夕方の薄暗いとき。たそがれどき。
◇落霞
ゆうやけ。低い所に見えるゆうやけ。
この本を読むなら是非、ミズナラを写真で見てほしい。
それに書生の姿を思い浮かべれば、「まわりの景色と似つかわしくない」と云う描写が屹度解るだろう。