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俺の同居人は神様  作者: ケン
第一章 サバイバル
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第九神  呪い

翌日の朝。俺は寝返りをうとうとした際の痛みによって目が覚めた。

「イタタタタ……全身、筋肉痛だ」

昨晩、次の日が祝日で休みということもあり俺は、

タケミカヅチに木刀を持たされて強制的に鍛錬をさせられた。

内容はあいつに一回でも竹刀をぶつけることらしいんだが……どんなに振っても、

タケミカヅチに掠りもせず、逆にカウンターばかり入れられた。

知ってるか? 峯うちって結構痛いんだぜ?

さらに連日の無制限全力ダッシュによる疲れも全く取れず、

疲れが痛みとして俺の全身を駆け巡っている。

「あ~起きたくねぇ~……」

「起きんか神夜!」

「ぐぼぁ!」

あまりの眠たさに二度寝しようと瞼を閉じかけた瞬間、背中に凄まじい痛みが、

走って眠気が一気にどこかへと飛んで行ってしまった。

その衝撃で両足のふくらはぎを同時に攣ってしまった。

「うぎゃぁ! 攣った! 両足攣った!」

「まったく、情けないのぉ。この程度で」

「そ、それよりもマッサージを頼みたい! 

マッサージじゃなくてもいいから足を持って下さい!」

「断る。歩けないというなら無理やり、連れて行くまで!」

そう言ってアマテラスは俺の首根っこを掴んで、引きずりながら家を出た。






首根っこを掴まれたまま、俺は近くの公園へと連れてこられた。

い、未だに足が攣ってる……超痛い。

「まず、お主の中に眠っている力を目覚めさせるぞ」

「その前に俺の中に力なんかあるのか?」

俺がそう尋ねるとアマテラスは目をぱちくりさせて驚いたような表情で、

俺の方を見ていた。

な、なんだ? 俺、何か驚かすことでも言ったか?

「ま、まさか忘れたのか? あの時、

この公園で貴様はわらわ達を吹き飛ばしたではないか」

「あ~確かに……あの時は無我夢中だったから」

数日前、俺が今いる公園でアマテラスとタケミカヅチが突然、

ドンパチをはじめそれを止めるために二人の間に入った俺は何やら、

得体のしれない物を開放して二人を吹き飛ばした……らしい。

あんまりよく覚えてないな……無我夢中だったし。

「とにかく、貴様には勝ってもらわねばならん。

そこでわらわが呪いを教えてやる」

「その呪いっていうのは何だ」

「呪いというのは言ってみれば術のことじゃ。相手に幻覚を見せる術、

相手を拘束する術、相手を攻撃する術や相手の攻撃から身を守る術。

そして傷を癒す術など内容は多種多様じゃ」

ふむふむ、つまり呪いはRPG風にいえば魔力を消費して、

相手にダメージを与えたり、自分のHPを回復させる魔法みたいなもんか。

「呪いは全部で五十あっての。その中でも基本的なものがこれじゃ」

そう言いながらアマテラスは手のひらを宙に翳すと、

ボッと音をたてて炎が現れた。

おぉ! これが魔法ならぬ呪いってやつか。

「第一番、燃やし火。発動するコツは燃え盛っている炎をイメージするのじゃ」

「燃え盛っている炎をイメージする」

俺は目を瞑ってアマテラスに言われたとおり、

頭の中で炎が燃えているイメージを浮かべる。

「そして、ボォ! っと炎を出すのじゃ」

……絶対、こいつ人に物を教えるのに向いてないわ。

人に物を教えるっつうのに効果音で教えるとかそれはないでしょう……集中集中。

俺はアマテラスの教え方に疑問を抱いたがひとまず、

それは奥の方にしまって炎をイメージする。そして

「はっ!」

目をカッと見開いて全身に力を入れた瞬間。

「「………………」」

確かに炎は出た…………結構、可愛げのある音を出しながら、

火の粉のような小さな炎が俺の手のひらにあった。

「いや……まあ…………人間が火の粉を出せた時点で、

充分すごいぞ……そんなに気負うことはない」

「……アマテラス様……それ、フォローしているんでしょうけど、

止め差しちゃってます」

俺達の間には何とも言えない空気が流れ始め、心の中で俺は号泣していた。

穴があったら入りたいというのはこういうことだったんだな。

「……続きをやるぞ」

「……うん」

何とも言えない空気を持ち越したまま、俺たちは呪いの鍛錬を続けた。





「完全に成功した呪いはなし……か」

それから数時間、俺は必死に頭の中でイメージをしていくが火の粉から、

炎に進化させることはできなかった。

「…………すみませんね。わざわざ教えてもらったのに」

「構わぬ。最初は誰であれこんな物じゃ」

最初は……か。

最初はこれでいいかもしれないけどこの状態が最後まで続けばダメだ。

そんなことが起こらないように願いたいけど……本当に、

俺はトラロックに勝てるのか?

「もしも……もしも、このまま呪いが発動できなかったらどうする」

「そんなことはない。誰であれ、神力を持つ者は皆、呪いを扱えるようになる」

俺は一休みするためにベンチに座り込むと、その隣にアマテラスが座った。

……なんか良い匂いがする……落ち着くっていうか……。

「なあ、なんで俺をあいつと戦わせたんですか?」

「…………なんとなくじゃ……五分ほど、休憩したら続きをやるぞ」

「了解」

俺も三日くらい鍛錬していれば呪いも、俺の中に宿っているらしい力も、

使えるようになるのか?

でも、現実はそう甘くはなかった。

それから三日ほど、鍛錬を続けているが呪いは全く完全には発動しなかった。

火の粉の大きさが大きくなっているとかそんな目に見える成長が、

あればよかったんだけどそれどころか火の粉は次第に小さくなっていき、

四日目の鍛錬の日には遂に火の粉すら出なくなった。

「……ハァ」

「何ため息をついてるんじゃ。ほれ、休憩時間は終わりじゃ。続きを」

「なあ……なんで、俺こんなことしてんだ?」

俺の質問にアマテラスは何も答えなかった。

雨が降りしきる中、俺とアマテラスの間には沈黙が流れた。

「前に俺聞いたよな? ……なんで俺とあいつを、

戦わせたんだって……その時あんたは何んとなくって答えたよな?」

「……ああ」

「なんで……なんで人間の俺が神様なんかと戦わなくちゃならないんだよ!」

俺の叫びにアマテラスは悲しそうな表情を浮かべて俺の方を見てくる。

そんな……そんな顔で俺を見るんじゃねぇよ。

「なんでお前は俺をあいつと戦うようにしたんだよ! どう見ても、

あいつはお前に用があったじゃねぇか! それをなんで俺に押しつけんだよ!」

「…………神夜」

「もう嫌だ……こんなしんどいことを、

するんだったら……俺はあいつらに喰われた方が良かった」

誰もいなくなった公園に何かを叩いた音が辺りに木霊した。

頬が痛い……。

「目が覚めたか? ……もう一度、そんなことを言ってみろ。

わらわは貴様を焼き尽くすぞ。今日はここまでじゃ。帰るぞ」

俺は何も言わずにアマテラスに付いていき、自宅へと歩き始めた。

こんにちは~。いかがでしたか?

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