第十九神 猫耳ガール+恐ろしの先生
「なんじゃ神夜。知り合いか?」
「し、知り合いも何も俺の学校の体育の先生だよ!」
アマテラスと知り合いということは……まさか、先生も神様!?
「ア、アマテラス! 紅がこの家の家主なんて聞いてないぞ!」
「よいではないか、ウズメ。教師と生徒の関係ならば話は早い。
神夜、こやつはアメノウズメ。芸能の神じゃ」
マ、マジかよ……まさか、
先生まで神様だなんて……てことはいったいこの人何歳だ。
教師をしているってことは少なくとも、大学は出てるだろ……でも、
神は何万年って生きるらしいから……いったい、この人いくつだ。
「そして、ウズメが抱きついている男がウズメの旦那のミツルギじゃ」
「……い、今なんて」
「ウズメの旦那のミツルギじゃ」
ウズメの旦那……つまり、先生の旦那様……つまり、体育の先生の旦那様……。
「んなバカな!」
「何がバカなだ。はっ倒すぞ」
「い、いやだって先生! 前に旦那はいないって言ってたじゃないですか!」
俺がそう言うとウズメさんはバツが悪そうな顔を浮かべて俺の方を見てきた。
「そ、それはだな……ミツルギもなんとか言ってよ~」
俺はウズメさんが発した声を聞き逃さなかった。
い、今の声……ウズメさんだよな……つまり、先生の声……う、ウソだろ!?
あの噂では元スケバンで警察官を殴ったこともあるっていう先生が、
あんな可愛い声を出すのか!?
「……知らん。黙っていたお前も悪い」
旦那様がウズメさんを戒めるとウズメさんは幼い子のように、
口を尖がらせて不貞腐れた。
あ、なんだ……旦那様は普通の人だ。良かった、
格好はヤンキーみたいだけど良い人そうだ。
「にゃ~旦那様~」
すると、俺の後ろにいた猫耳ガールがしっぽを振りながらミツルギさんに、
近寄っていき彼の膝もとにぺたんと座り込んだ。
「あぁ! ニャーずるいミャー!」
「私も旦那様の膝に座るミィー!」
個性的な口癖を口々に言いながら三人の猫耳ガールズは我先にと、
ミツルギさんの膝もとへと座っていく。
……なんだろ……めちゃくちゃ、あそこだけ和んでる。
「ミツルギに群がっている猫どもがウズメの部下である猫又の三姉妹じゃ。
ニャーとミャーとミィーだ」
猫又……確か、猫の妖怪だったような気がする。
あの頭から出ている猫耳はかぶり物とかじゃなくて、本物の耳だったのね。
ていうか、名前が非常に言いにくい。
「でも、何故こんな時に来たのじゃ?」
「あたしが呼んだんだ」
この声は……タケミカヅチか。
声がした方向を向くとそこには制服のままのタケミカヅチが立っていた。
「ウズメ。神夜に呪いを教えてやってほしい」
「え~?」
「先生。教師の貴方がそんなめんどくさそうな顔をしたら、
いけないと生徒の俺は思います」
でも、芸能の神様だから呪いはすごいだろうな……前にタケミカヅチは、
ウズメさんは呪いの扱いに長けてるって言ってたし。
「ちょ、ちょっと待つのじゃ! 神夜に呪いを教えるのはわらわの役目じゃ!」
「アマテラス様は昔から教える際には擬音しか話しませんでしたしね」
ミツルギさんも過去にアマテラスに鍛えられたことがあったのか、
呆れたような声音でそう言った。
ウズメさんもミツルギさんの言ったことに納得したように首を振っている。
「し、神夜! お前もなんとか言うのじゃ!」
「いや……うん……擬音ばかりで非常に理解しづらいです」
「そういうわけだ。こいつもサバイバルに参加している身だ。力をつけることに、
越したことはないが効率を考えればアマテラスよりも、
ウズメに教えてもらった方が良いと考えた」
タケミカヅチが言っていることは一理ある。
俺もこのサバイバルに参加したから自ずと他の神と、
戦うことになる……その際に弱かったらすぐに、
倒されるし……何より、トラロックと約束したからな。
このサバイバルの行く末を見届けてほしいって。
俺は尻ポケットに入れている絵馬のようなものを取り出した。
「そんなわけだ。今日から頼むぞ。ウズメ」
「……分かった。紅、今日の晩。この近くにある公園に来い」
「はい」
ハァ……また、あの体育の授業みたいに厳しい鍛錬が、
始まるのか……俺、体持つかな。
「んじゃ、そんなわけで私たちは帰る。行きましょ、ミツルギ♪」
「ああ」
普段では見ることのできない猫なで声の先生がミツルギさんの腕に、
抱きつきながら玄関へと向かい、
その後ろを猫耳三姉妹がトテトテとついて行った。
「……なんか、すごい一面を見た気がする」
俺は先生が出て行ったのを確認して、そう呟いた。
「まあ、どちらの面もあいつだからな。というよりも元々は、
ドギツイ性格だったんだ。それが、ミツルギと出会ってあいつに惚れたことで、
生まれた別のウズメと言ったところだ」
恋をすると女性は変わるっていうけど……あれはもう変わるどころか、
超進化しちゃってるよな。
「タケミカヅチ。今日は野菜炒めでいいか?」
「ああ、あたしは構わん」
そう言ってタケミカヅチはソファに座り込んで、テレビに集中した。
「アマテラスも野菜炒めで」
「あ!?」
「い、いえなんでもございません」
後ろを振り返るとアマテラスが今まで見たことのないようなものすごく、
怖い顔をして立っていた。
その顔を見た俺は反射的に顔を反らしてしまった。
な、なんだ……俺はどこであいつの機嫌を取り違えたんだ……。
別にあいつに対して何か言ったわけでもないし喧嘩を売ったわけでもない……。
それにしても怖すぎだろ。ヤクザじゃねぇか。
チラッと目を動かしてアマテラスを見てみるが相当イライラしているらしく、
テーブルの椅子に座って指をカタカタとテーブルにぶつけていた。
……殺されないように頑張ろう。
俺は切実にそう思いながら、晩御飯の準備に取り掛かった。
三十分後、一切会話のない晩御飯が展開されていた。
いつもなら、アマテラスとタケミカヅチの口喧嘩が勃発しているのに今日は、
口喧嘩どころか一言も喋っていない。
……俺はいったいどこで間違えたんだ。
「きょ、今日の野菜炒めはどうだ?」
「あ、ああ。いつものとおり美味しいぞ」
「しょっぱい」
少しでも和ませようと俺が野菜炒めの味を聞くとタケミカヅチが、
普通に反応してくれ、この場の空気も一瞬、和やかになった直後に、
アマテラスの冷ややかな言葉により空気が冷却された。
「や、やっぱりか? ちょ、ちょっと塩をふり過ぎたんだな~。
今度から気をつけるわ~。アハハハハ~」
こ、怖いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
「ま、まったく~。神夜はおっちょこちょいだな~」
向かいに座っている俺はまだいいがアマテラスの隣に座っているタケミカヅチは、
アマテラスの不機嫌なオーラを直撃しながら晩飯を食っている。
おかげでタケミカヅチの額には冷や汗がタラタラ流れている。
「御馳走様。風呂に入ってくるぞ」
「お、おう」
アマテラスは野菜炒めを食べきると食器はそのままにして風呂場へと直行した。
俺はアマテラスが風呂に入ったのを戸が閉まる音で確認するとすぐさま、
タケミカヅチと会議を始めた。
「お前、いったい何をした」
「あ、あたしは何もしてないぞ! 今日の朝は普通だったじゃないか」
確かに……朝のアマテラスはむしろ機嫌が、
良かった方だ……いったいいつから機嫌を損ねたんだ?
「ウズメさんと話しているときはどうだった?」
「普通だった。むしろ久しぶりに会ったウズメと楽しそうに話していた」
タケミカヅチと会議をしていると来客を告げるインターホンの音が、
部屋に鳴り響いた。
「は~い」
『紅。さっさと来い。十秒遅刻するごとに地獄のしごきだ』
「タケミカヅチ! 後は頼んだ!」
「ズ、ズルイぞ!」
俺はタケミカヅチに後のことを頼んで家を後にした。
こんばんわ~。なかなかユニークが伸びない。
とにかく、今はアクセス四桁。ユニーク三桁を目標に
頑張っておりますが大学が始まったらこれ絶対、精霊の
二の舞になるわ。




