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二枚目の真新しい便箋を目の前にして、まだ躊躇している私がいます。
目をつぶると、悔しい事に、幸せだった思い出が私の筆の邪魔をするのです。
死ぬのが惜しいのではありません。
これも私の大罪なのです。
こんなにも幸せだった家庭に、私が毒を撒いたのです。
神など、何度いる訳がないと思った事でしょう。
私が、どれだけ懇願しても神は現れてはくれなかった。もちろん助けても…。
でも、この瞬間神に祈りを捧げたい気持ちです。
私に変わってあなたに謝罪してくださいと。
私はこの世から逃げました。
大切なあなたと子供たちを置いて…。
一秒でも早く、この手紙を書き終えてあなたと子供たちから私の存在を消さなければ、ますます私の罪は大きくなるのです。
でも、最後なんですもの…。後悔のないように書き尽くしたい。
全部話さなければ、あなたは私を忘れてくれないような気がします。
なぜ、人は変わるのでしょう…。変わらなければ私は、世間知らずなお嬢さんのままでいられたのに。
あなたは最後まで私をそう思っていましたね。
私はそれが切なくてならないのです…。
あなた、私の真実を聞いてください。
私は、あなたを誤解していたのです。
あなたには、他に好きな人がいると…。
結婚して一年が過ぎた頃、ポストに一枚のはがきが届いていました。
はがきには
「小林小百合」
と書いてありました。
私は、その名に聞き覚えがあったのです。あなたの仕事仲間で、あなたから度々名前を聞いていたからです。
なぜ、小林さんが?と思ったでしょうね…。
そのはがきは小林さんからのはがきではありませんでした。
某ケーキ店からのはがきだったのです。
はがきにはこう書いてありました。