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我龍転生  作者: キーダの滝
真の戦い
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第78話「囲いの森」

最近のは展開が早いと言うか短いですね。良い事なのか悪い事なのかわかりませんが。




「本っっっっっ当にごめんなさい!!」

「いや、別にもう…」

「いや!こんなものじゃ足りないわ!ケイロンの知り合いでミカの大親友であるあなたを勝手に敵と思い込んで攻撃するなんて最上級の無礼よ!」


何度も何度も許しを乞いて、頭を下げている。そう、士助の脳裏に過ったのは手紙の宛名であった。ケイロンからガブリエルという女性に渡す様に言われていたのだ。そして今、目の前で謝り続けているのがその本人だ。どうしてこうなった、と心の中で呆れつつもとりあえず仕切り直して、ソファに座った。


「はぁ…本当にごめんなさいね。最近怪しい人ばかり来て疑心暗鬼になってたの。なにせ、ありとあらゆる手段で近づいて来る人もいて…」

「そ、そうですか…最近は何かと物騒だから…」

「って、自己紹介がまだだったわね。私は『ガブリエル・エルシエール』。ミカの母よ」

「はぁ、ってミカの母ちゃん!?」

「そうよ」


確かに言われてみれば顔つきやどこかおっとりしているところ、雰囲気も似ている。ミカが大人になったら正にこうなる、といった姿だ。


「そ、そうだったのか…」

「そんなに驚くこと?まぁ、今日初めて会ったんだものね。というか、ミカとは物心つく前から別れているから仕方ないわね」

「え!?じゃあ、ミカは一度も…」

「私に会ったことがないわね」

「何で!?」

「何故って…色々あるのよ。私にも」


落ち着いた様子にどこか悲しみを感じる。あまり深く掘り下げない方がいいと思った士助はそれ以上追求しなかった。


「話が逸れてしまったけど、あなた達はあの二人に会いに来たのよね。二人は今『囲いの森』にいるわ」


その名前を聞いてキルトがおどろき、立ち上がった。


「『囲いの森』!?なんでそんな所にー?」

「囲いの森…?」

「知らないの士助!?」

「い、いやぁ…つい最近まで外の国に行ったことなかったから…」

「行ったことなくても普通知ってるよ!!!」

「お、落ち着けって…」


二人のやりとりを見てガブリエルは微笑みながら古びた世界地図を持って来て机上に広げてくれた。


「お、これが世界地図か。初めて見た」


士助達の住む世界は円型の地盤の上に五つの国がある。北に『北の国』、西に『西の国』、東に『東の国』、南に『南の国』。そして世界の中心に四カ国全てに接している『天道示国』。この五つの国が各々の役割をこなし世界を形成している。しかし、この世界には未だ『海』が確認されていない。その原因が囲いの森だ。

囲いの森は五カ国を円型に囲う超規模の森だ。途切れることなく続くこの森の向こうに、各国の学者は広大な水源、即ち海があると推測している。そして、海を見たいと言う好奇心に動かされた恐れ知らずで無知な冒険者達は足を踏み入れるが、誰一人として帰ってきた者がいない。このことから危険区域にも指定されている場所だ。


「なるほどな。で、そんなとこにいるって何でだ?」

「そうだよ!何で!?」

「まぁまぁ。何の考えもなしにあの場所を利用する訳無いじゃない。ちゃんと考えがあるのよ」


地図を丸め、紅茶をひとくち飲む。


「この世界に住む者ならば、囲いの森と聞けば入ろうとする者はいない…まあ、例外君もいるみたいだけどね」


キルトが士助を横目で睨むと、士助が目を逸らす。


「そこで、誰も入ろうとしないのなら、隠しものをするのにはうってつけの場所とも言える、と考えたわ。私はあえて危険を利用することにした」

「隠しものって…帰ってこれないなら意味ないじゃん!!」

「でも、私が隠してここにいるってことは、あの森から出る方法があるってことじゃない?」

「そ、それは…」

「ていうか、話してばっかじゃ始まらねー。二人のいる場所に連れて行ってくれよ」

「そうね、あなたも早く会いたいだろうし。行きましょう」


キルトに笑いかけ立ち上がり、外出の準備をした。






準備を済ませると東の国を出て、そのまま囲いの森へと一直線に進む。森の入り口へは半日もかからずに着いた。しかし、太陽が半分沈み、月が小さく輝き始めている。森の中から感じ取れる未知の恐怖。流石の士助も気を抜けない。


「で、二人はどこにいるんだ?」

「この森の中腹辺りよ。行きましょう」

(……中腹?)


ガブリエルは森の入り口に立つと掌を地面に向けて、目を閉じ集中し始めた。すると、地面に一筋の光の線が浮かび上がり森の中へと続いている。


「なんだよコレ…」

「ちゃんとついて来てね」


こちらに目配せだけして光に従い進んで行く。光の線は直線では無く時折、ねじ曲がったりしていて、迷路を進んでいる感覚に似ている。と、いうより危険なものを避けている気がした。どうやら、この森は迷うだけが行方不明の原因ではなさそうだ。何より死肉の臭いがキツイ。それもまだ新しい。囲いの森なんて名前じゃ優しすぎるんじゃないか。そんなことを考えているとガブリエルが足を止めて振り返る。


「この先に二人がいるわ。あなた達で行ってらっしゃい」

「こ、この先に…父さんと母さんが…」

「…………」


高まる感情のキルトとは逆に顔が険しい士助。先程から執拗に後ろを振り返っている。


「どうかしたの士助君?」

「………いや」

「士助?」

「…キルトにはガブリエルさんが着いて行ってくれ」

「私が?どうして?」

「いや…とにかく早く頼む」

「私が行っても仕方ないわよ。この子の気持ちを分かち合えるのはあなたしか…」

「わかってんだろ。俺が相手をするから早く行ってくれ」


睨みつけてガブリエルを威圧する。キルトは理解してないがガブリエルはこの言葉の真意を理解していた。目で会話した後、ため息混じりで承諾した。


「…わかったわ。ただし、危なくなったらすぐに私を呼んで。君は…まだ役目がある」

「役目…?」

「これからわかることよ。それじゃあキルトちゃん、行きましょう」

「う、うん。士助は…?」

「俺は後で行く。先行っとけ」


濁しながら、軽くあしらいキルトを行かせた。しかし、旅について来たキルトも薄々察していた。伊達に時間を共にしてきた訳では無い。二人が進み、一人残った士助は刀を取り出し、戦闘体制に入った。周囲に視線を張り巡らせ、耳を澄ませる。今、聞こえるのは草木の揺れる音だけ。しかし、確実に気配は近づいて来ている。

あと三秒で姿を現す。

3…2…。1、と数えるのど同時に背後から風を切る音が響く!音に反射で体を沈ませた直後!頭上を刃が通った!あと少し遅ければ、切り裂かれていただろう。しかし、この程度で心を乱しはしない。

攻撃の主は士助の正面に着地した。上半身を包帯でめちゃくちゃに包み、腰蓑を巻いている。全身の至る所が血で滲み、赤黒の包帯の隙間から覗く枯れた相貌と裂けた口。


「お前が虹色士助か?」


空いた口を微動だにさせずに声を発する。


(気色悪い見た目で普通に喋んのかコイツ…読めねぇな)

「俺が虹色士助だ。お前は何だ?」

「俺は上級精霊の1人!『サルガタナス・トリップ』!お前は計画の邪魔になる…ここで死んでもらうぞ!!」


右腕に備え付けられた刃を士助の喉目掛けて一直線に突き出す!しかし、攻撃は士助に触れる前に突如、霧の様な闇に捕らわれ、そして扉を模った闇が現れ中から漆黒のコートに身を包んだ男が出てきた。


「に…兄ちゃん…!?」

「少し、ゆっくりしすぎじゃないか?」

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