第76話「悪魔の男の道」
サタナスの修行編というわけですが、ちょい短めになってます。長くするのもなんだったので、不要部分は省きました。
庵次による修行開始から2時間足らず。ヒロトも花も『龍の前森』に苦戦を強いられる中、サタナスは1人最奥へと辿り着いていた。
体に傷1つついていない彼の目の前には深淵と言わんばかりの暗黒の洞窟がものものしく佇んでいた。洞窟の奥は勿論、入り口の地面すら見えない。まるでこの先は別の空間の様だ。常人なら想像もできない恐怖に負けて、入ることはおろか、逃げだすのが普通だろう。
しかし、サタナスは恐れるどころか迷いもなく暗黒へと足を踏み入れた。ひたすら一直線に歩き続け、後ろも振り向かない。周りに何があるかもわからず、出口があるかもわからない。
言うなれば、正に濃霧の中にいるようだ。仮に、ここが敵もおらず且つ安全だと知っていてもこの暗黒の中に居続ければ心が壊れ、死ぬよりつらい苦しみを受けるだろう。
にも関わらずサタナスは何故進み続けれるのか。
サタナスは自ら心を殺していた。見える物、肌に触れる空気、聞こえる音。感じ取れる全てに対する思考を遮断し、ただ歩くだけの機会と化す。それがサタナスの策だった。暗黒の中、心を乱さず一定のペースを保ち、ただただ歩き続けた。
洞窟に入ってから、もう何時間経っただろう。心を殺しているのにも限界が近づき、ありとあらゆる感覚が麻痺。内心、焦りを感じる。それどころかどんどん体力を奪われている気がする。ペースも崩れ、1歩1歩に力が入らない。ここまでよく動いていられるのは正に執念だろう。しかし、それがルシファーに対する執念なのか、士助に対する執念なのかは本人にもわからない。
とうとう執念すらも尽き、何も無い所でつまづいてしまった。精神がやられ、体力が総じて立ち上がることが出来ない。目の前が暗くなっていく。視界を覆うのがまぶたか、暗黒か、なんてもうどうでもよかった。
それ以前に、もう考えることなど出来はしなかった。
倒れ伏し、気力すら無くしたサタナス。そのすぐ側に漆黒のコートに身を包んだ男が立っていた。男は軽々とサタナスを担ぎ上げると、闇を切り裂き、そのままどこかへ消えた。
ホントに短いです。少し省きすぎですかね?




