第67話「レジスタンスの混乱」
別に狙ってるわけではないですが題名はこんなので行こうかなぁと思います。そしてまた短めです。話数増えるだけかな?
フードから覗く士助の瞳がシオンを串刺し、動きを抑制する。冷たく、重い。その視線がシオンに迫るようで焦燥感と不安を一気に掻き立てる。
「お、俺は…」
「どーしても。明日じゃねーとダメなのか?」
今度はシオンではなくメンバーに問いかける。しかし、誰1人として目を合わせようとせず黙り込んでしまう。
「明後日には…王が変わってるんだ…」
「何?」
代わって弱弱しくシオンが代弁する。上げた表情は一気に年を取ったかの様に衰弱している。皆に目をやると小さく頷いたり、図星なのか唇をかみしめる。
「どういうことだよ、それ」
「本来、明日行われる見回りが終わると『天道示国』から役人が来る。王の行政を確認したら、世界議員になって別の王が入ってくるんだ。その王の名が…『ミクール・ゴードン』。マクールの息子だ…」
「最悪の交代だな…」
「だから、あのマクールに一矢報いるなら…!明日しかなかったんだ…!」
「役員とやらが来るんだったら、ソイツに言ってやればいいんじゃねーの?」
「無理だろうな。アイツの事だからおそらく役員は賄賂を握っている。悪事にだけは働く脳だからな」
シオンはマクールの悪事を思い返して奥歯を噛みしめる。そして、決断した。
「それでも…それでもやるしかない!元より国の為に、国民の為に命をなげうつ覚悟はできている!明日、城内へ侵入後、内部から奇襲をかける。外部警備を内側にひきつけた後、時間差で外部からも奇襲を行う。騎士たちを混乱させた後、一斉に王の元に向かいそこで…」
「殺すって算段。ね」
口をはさむ士助を睨みつける。
「…何か言いたげな顔だな」
「んなことねえよ。俺達2人は宿に戻る。心配しなくても朝早くから城の近くにはいるよ」
キルトを連れてアジトを出たのを確認すると仲間の1人がシオンに問いかける。士助達を最初に疑った作業服の男だ。
「アイツらを信じていいのか…?」
まるで、皆の声を代弁したかの様な言葉だった。仲間からすれば関わってから日も浅く、信頼も浅い。おまけに本当かどうかわからない言葉で仲間を攪乱させるのだ。疑われても仕方がない。
顔を見合わせ再びざわつき始める。もう1人が声を上げて叫んだ。
「アイツの言っている事なんてデタラメだ!スパイに違いない」
士助を疑う者がまた現れた。『疑い』はウイルスの如く感染し広まり、数分も経たない内に全員を犯した。「そうだ」という同意の一言をきっかけにどんどん深く、強く根を下ろして行った。
「アイツは嘘を言っているんだ」「アイツはスパイだ」「信じられるわけがない」
『疑い』はたちまち『確信』へと姿を変え、いびつな形で団結力を強めていってしまった。一瞬で過ぎ去ったような感覚にシオンはただ1人唖然とし、不意に妙な匂いがする。大きく振り払い気を確かに保つ。声を出すことも、理解することも出来ず、ただただ立ち尽くした。
「やっぱり明日は見回りをするに決まっている。最初の作戦で行こう!」
途端我に返り声を発する。
「ま、待て!作戦変更は駄目だ!さっき言った作戦で…」
言いかけて止まった。
「シオンは…アイツを信じているのか?」
先程まで自分に向けられていた視線。信頼、期待、決意。そんな感情が目を通し伝わってきた。
しかし、今。疑惑、嫌悪、憤怒。激しく、強く、巨大な負の感情のこもった視線を浴びせられる。こんなところで彼らの団結力の高さが裏目に出てしまった。こんなにも簡単に裏切られるとは想像もしていなかった、いや、想像することなんてありえなかった。明らかに変だとわかっているのにこの瞬間だけはそんなことは考えれなかった。裏切ったのが彼らではなく自分。そう理解してしまった以上、思考できなかった。
「いや…そもそも士助が嘘をついている証拠はないだろ?」
「本当の事を言っている証拠も無いぞ!」
「ぐっ…だとしても!当初の作戦は1方向からの攻撃だ…士助の言っていたことが事実だったら…!」
「それはアイツが行った事が前提の話じゃないか。アイツはスパイなんだぞ!」
「だから士助は…!」
何とか士助の無罪を証明しようとしたが何を言っても通じなかった。挙句、話すら聞いてもらえず指導者としての資格を完全に、失った。
シオンから希望が絶えた。
出来るだけまとめる様に努力します。




