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我龍転生  作者: キーダの滝
真の戦い
68/82

第65話「シオンとレジスタンス」

今回は短めです。多分。







シオンが2人に告げた。


「俺達はレジスタンスとして何年も前から活動している」


突然の事で2人は顔を見合わせる。結成しようと思っていたレジスタンスが既にできていたのだから当然だ。

シオンはテーブル近くの椅子に腰かけたので士助も適当な椅子に腰を下ろした。すると作業服の男がこちらに歩み寄りシオンに尋ねた。


「シオン、そいつらは誰だ?」

「一応、仲間になった2人で士助とキルトだ」

「信用できるのか?」

「ああ。あいつらとは目が違う」

「…………わかった」


男は引き下がり元居た場所へと戻って行った。


「信用されてねーんだな、俺達」

「というか入って1日の奴信じろって方が無理だと思うケド…」

「そりゃそうか」


今度は質素な服の女性が来て士助にコーヒーを、キルトにミルクを渡してくれた。どうも、と小さく言うと女性は笑顔を返した。


「そうでもねーみたいだな」

「そうみたいだね。あちち…」

(俺、甘党なんだけど…)


心の中でぼやきながら取っ手を掴んで不安げに飲む。深い黒をしているものの予想よりも苦くなく安心する。落ち着いたところで好奇心で部屋を見回す。

地下に造られたこの部屋。入り口は士助達が降りた所のみで他に入り口も無ければ出口も無い。防衛、逃走手段が無いのを見るとここが会議室というのも頷ける。

木箱の中の食料も腐った様子は見られない。水樽も古い物ではない。そして一番目を引く物。立てかけられた武器だ。銃に槍に剣に鎚。どこから手に入れたのかもわからない。


「武器が気になるのか?」


感づいたシオンが問いかける。隠す必要も無いので素直に返し、教えてもらうことに。


「あれはな。過去のレジスタンスメンバーが手に入れた物だ。だから俺もどうやって手に入れたかまではわからない」

「過去の?」

「ああ。さっきも言ったが俺達は何年も前から活動している。だけどそれは最近のことなんかじゃない。本格的に動き出したのは1500年前だ」


シオンがこのレジスタンス、西の国について教えてくれた。





今から1500年前。現国王の『マクール・ゴードン』がこの時王座に就いた。それから300年は何事も無く過ぎ去った。今よりも『人』に活気もあり、人々も何不自由なく暮らしていた。しかし、この300年間は言うなれば嵐の前の静けさであり、牙を研ぐための時間だった。


マクールが王について400年後、悲劇が起きた。突如として告げられた王令は人々を天から地へと落とすものだった。増税に納税回数の増加、商業規制等の目を疑う程の厳しい法が制定された。挙句、違法者は即虐殺。この年は類を見ないほど、多くの人が王の手で虐殺された。


当然これを良しとしない者達が現れ、今のレジスタンスの原型ができた。しかし、法という強大で不可視な力の前に屈する者が後を絶たなかった。


正義の為に戦いにはあまりにも大きな恐怖が執拗につきまとった。心で想い願う事は容易でも、いざ実行に移そうとすると恐怖感に意思を制圧されてしまう。時が経つに連れレジスタンスのメンバーは数を減らして行き解散の危機に瀕した。しかし、そんな絶望的状況に立ち上がった男がいた。

男は去った仲間たちを説得し、元の数からは減ったものの再結成を果たした。だが、この行動が新たな危機を招くことになった。

男の行動が王に知られてしまったのだ。そして、王に反抗する『レジスタンス』を設立したことを突き付けられて反逆罪となり男は処刑された。

しかし、男の説得は無駄ではなかった。男の強い信念は仲間達の心に根付き、レジスタンスは密かに再立。そして、現在に至るとのことだ。


「幾度となく解散と結成を繰り返したことこそが俺達の結束の強さの証明だ。にも関わらず…俺達はまだ何もしていないんだ」

「………1つ聞くけど、その男ってのは誰なんだ?」

「…俺の、親父だ。親父は正義感だけは誰にも負けなかったがここぞという時に詰めが甘かった。それが不幸を招いて王に見つかって処刑されちまった。だけど、親父のやった事は間違いじゃない!志半ばで殺された親父の意思を継いで俺が無念を晴らすんだ」


拳を固めて見せて信念を露わにする。それを横目に士助は何も言わなかった。


「それにしても、お前が仲間になってくれるとは思わなかったよ。とは言え、あと少し遅かったら仲間にはなっていなかったがな」

「はぁ…何で?」

「3日後には革命の為の計画を実行するつもりだからだ。まあ、計画を理解できないのなら参加は出来ないが」

「そ、そんな急な…」

「急じゃない。むしろ1000年という長い期間を積み重ねて3日後がベストだと踏んだんだ」

「何で3日後なんだ?」

「定期的にマクールが街に見回りに来る日なんだ。その時、警備の兵を大勢使用するから城の警備が通常に比べて比較的薄くなる」

「そこを叩くのか?」

「いや、ここで侵入を試みる。城内にスパイがいる。内部からの協力を仰げば容易になるはずだ」

「侵入した後は?」

「各所に待ち伏せてマクールが返って来た時に………殺す」

「…………殺す、ってよ、それでいいのか?」

「良いも何も、アイツが消えなければ何も解決しない!生きていればアイツはまた同じ事を繰り返すぞ…!」


士助はシオンの中に2つの信念を見出した。『復讐』と『革命』だ。コイツの溢れ出る程の王に対する憎悪は誰にも止められはしないだろう。しかし、それが正しいとは思えない。憎む気持ちはわかっても『革命のついでに復讐をする』ことを正しいとは思えないのだ。次いで言えば、計画だって革命を名目にした殺人だ。もう、シオンは『王を殺すこと』で『革命』に繋がると思っているんだ。


先程まで抱いていた大きな安心は不安へと一転。音も経たぬ間にどんどん肥大していき、士助の心を埋めて行った。


日は既に落ちて月が空に浮かんでいた。やせこけた犬が路地を彷徨い嘆くように月に吠えた。




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