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我龍転生  作者: キーダの滝
真の戦い
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第60話「虹色 美図(みと)」

ゴッドイーター2の体験版やってるんですがロングのブラッドアーツのジェノサイドギアが楽しい!ずっと大車輪してます。







なんとか危機を脱して最奥地まで達した。この奥に『虹色 美図』が待っている。自然に出来た木の道を通り抜けると、その先には開けた場所が待っていた。小さな滝が流れ、滝壺に溜まっている。周りは木に囲われていてどこかで小鳥が静かに鳴いている。水の畔の大きな岩の上で髪の長い男が杖を突きながら座っている。男は振り返らずにただ沈黙している。彼こそが虹色家3男『虹色 美図みと』だ。初めて会うキルトは士助の陰に隠れている。美図に歩み寄り話しかける。


「おーい、兄ちゃん」

「…………士助か」

「久しぶりだな」


美図は振り返らずに返事を返す。依然不気味に佇む美図に、とりあえず騎士たちから助けてもらう為何とか協力を仰いだ。


「いきなりで悪いんだけど、兄ちゃんに助けてもらいたいんだ」

「入り口の奴らか…」

「わかるのか?」

「奇妙な気が集まっている…しかし入ってくる気配は無い…」

「じゃあ、どうしたらいいのかな?」

「しばらく待てば良い…ここで休息していけ…ここは安全だからな…」

「本当か…それは良かったよ。もうヘロヘロでさ…」


美図の計らいを受けてここで休むことにした。2人共腰を下ろし、安堵した。背中に乗っていたキルトはどっと疲れて士助にもたれて寝てしまった。士助も項垂れて胡坐をかいて俯く。虚ろな瞳で美図に目をやる。顔は見えないから、ではないが相変わらず何を考えているかわからない。以前ここに来た時は美図に稽古をつけてもらった時だ。初対面で恐怖感を抱いていたものの、5年間一緒にいて美図の内なる本性を知った。


今日の様に沼に足を捕らわれ引きずり込まれかけたことがあった。マズイとは思ったがなんとか自分の力で脱出を試みた。しかし、幼い士助にはどうすることも出来ず胸までも引きずり込まれた。そこへ偶然駆けつけた美図が同じ様に助けてくれた。その時、美図にこう教えられた。


「プライドが働いたか知らんが…命より大事なものは無い。助けを借りれるのなら借りるんだ…もし借りを作ったとしても生きて返せばいいのだからな…」



その頃はよく理解出来なかったが今ならわかる。考えてみればよく子供にそんなことを言えたものだ。あの時の借りはまだ返せてない。にも関わらず今日の出来事だ。いつになったらこの借りを返せるのだろうか。そんなことを考えながらぼんやりしていると、いつの間にか、寝ていた。






目が覚めた時、既に朝を迎えていた。やけに寝苦しいと思ったら士助の腹を枕にキルトが寝ていた。どかすのも悪いので、とりあえずそのままにして寝転んでいることにした。このままでも美図が見える。変わることなく岩の上で佇んでいる。思えば何故ああやっているかは士助も知らない。とは言っても理由があるとは思えないが。

そんな思考を巡らせているとキルトが起き上がり目を擦っている。


今日、すぐにでも出発しよう。急ぐ旅では無いが、ゆっくりしすぎるのも良くない。それに十分休養した。美図にお礼を言って西の国へと向かおう。


「俺達もう行くよ。ありがとな兄ちゃん」

「あ、ありがとう…ございました」

「……………」


返事は無しか…。まあ美図らしいと言えば美図らしい。何はともあれここを出よう。以前、教えてもらった裏口がある。湿林の裏に出ることが出来るが、西の国へは遠回りになる。とは言っても2日、3日程度なので気にするほどではないだろう。何より騎士たちを避けれるのなら安いものだ。その裏口へと向かって行く。すると、突然呼び止められる。


「…何をしている」

「え?いや、何って…」

「士助がここを離れた後…襲うつもりだな…」

「兄ちゃん?」

「さっさと…出てこい…」


美図が入り口を睨む。口ぶりを察して士助も警戒する。気配に殺気だ。それも禍々しい気配。グレイトヴォルケイノで感じた気配よりも大きい。殺気に気圧され剣を取り出し構える。キルトも士助の陰に隠れて警戒する。敵は出てこない。こちらの様子を伺っているのだろうか…。現れない敵に美図が先制を仕掛ける!


「来ないなら…消えろ…!」


突如として滝壺から澄んだ水が形状を成し、槍を模った水が気配を突き刺した!周囲の木々はバラバラに砕かれ文字通り木端微塵となり、宙に粉塵をまき散らす。だが死を確認していない以上油断するわけにはいかない。畳み掛けるように槍が地面を破壊する。危機を察した敵が舞い上がる煙の中から飛び出てきた。


「まさか、見つかるとは思ってなかったな…」

「コイツ…悪魔か!」


黒い衣装に身を包み、赤い瞳が強く光る。何より最大の特徴である翼。漆黒の翼が恐怖を引き立て、より悪魔を思わせる。流石の美図も相手が悪魔だと理解し岩を降りて目前に立ちはだかる。杖を立て、髪の間から目をひっそりと覗かせながら。


「お前…上級精霊グレートデーモンだな…?」

「上級精霊…?」

「よくわかったな。玄龍の戦士は中々察しが良いと見た。お前の言う通り、俺は上級精霊第6の柱『サタナキア・ディアウロ』。本来の目的は虹色士助の暗殺、だったがついでに殺しても問題ないだろ。死体が増えるだけだ」

「コイツ…!だったら、返り討ちに!」

「待て…」


今にも襲い掛かりそうな士助の前に美図が立ちふさがり剣を下ろさせる。


「止めるなよ!こっちは2人だぞ。負けるはず…」

「休んだお前が…わざわざ戦う必要は無い…それに急ぐんだろ…?」

「だけど!」

「2度も言わせるな…」

「…………わかったよ」


美図の言い分に大人しく引き下がる。剣をしまいキルトを守ることに集中する。士助が下がったのを確認すると美図は前に出てサタナキアの前に立ちはだかる。2人は睨み合い互いに相手を威嚇する。


「いいのか?多人数の方が楽だったと思うがな」

「喋りすぎだ…うるさいだけじゃないといいが…」


一触即発の空気。その沈黙を破って攻撃を仕掛けたのはサタナキア。鋭い爪を立てて腕を振り下ろす。しかし、攻撃は通らず側面からの攻撃に吹き飛ばされた。攻撃の正体は水。美図の背後で揺らめいて、相手を威嚇しているようだ。再度、槍の形を成した水がサタナキアに追撃をかける。だがよける気配は無い。水が体を貫通する!はずが目前で動きを停止し攻撃を止めた。水は痙攣しているかの様に微動している。

何が起きたのか、見ている士助にもわからなかった。だが次の瞬間、水は音を立てて凍り始めた!危機を察知した美図は途中で水を切り離し退かせた。


「水を凍らせる能力…か…」

「そうだ。俺の能力は『物体を凍らせる』能力。偶然にも、お前と俺の相性は悪いみたいだなぁ?」

「どうかな…」


一度、後方へ飛んで滝壺の水の上に着地する。掌をサタナキアの方へ向けて水の刃で切り裂く!しかし、先程と同様に凍らされる。今度は水の槍で攻撃する!それも同様に凍らされる。立て続けに攻撃するが、何度やっても結果は変わらない。この攻防が何度も続くがそれも終わりを迎える。滝壺の水が底をついたのだ。滝は何故か水を流すのを止め、美図から武器を奪い取った。


「どうした?攻撃が止まったみたいだが…手加減はしなくてもいいんだぜ?」

「お前…流れを凍らせてきたな…?」


サタナキアはここに来る前、予め滝の流れを止めてきたのだ。当然こうなることを想定してだ。白々しい態度が美図を煽る。

いつの間にか足元には凍った水、氷で埋められている。サタナキアは氷を拾い上げ、振りかぶって投げつけた!氷は空を切りながら一直線に美図へ向かって行く。飛行する氷を美図は杖で弾き飛ばし、破壊した!投げて、砕き、投げて、砕き。逆転した攻防を繰り広げる。今度はサタナキアの氷が尽き、そして美図の足元には砕けた氷で埋められていた。


「状況が反転しただけで、戦況は反転してねぇなぁ…」

「………………」

「まあ、遊ぶのはここまでだ。面倒だからさっさと終わらせて、本来の目的を…果たさせてもらうぜぇ!」


創り出した剣を構え飛びかかって来た。今まで黙っていた士助も流石にキルトを守るのを放り出し、急いで美図の元へと駆ける。しかし時すでに遅し。どう足掻いても間に合わない…。


「兄ちゃん!!」


無意識に手を伸ばす。剣が美図を切り裂く瞬間!


氷が目前に飛び出て剣を防いだ。氷の破片が飛び散る。後を追う様に氷の破片が足元から張り付いていく。サタナキアを杖で突き飛ばし距離を離す。地面で背中を打ちながら、足を押さえて悶える。


「がああぁぁあぁ!クソッ!どういうことだ!」

「どうした…?攻撃が止まったみたいだが…手加減はしなくていいぞ…?」


美図の見下す視線が一層、体を凍てつかせる。逃げようと思った。しかし瞬間、サタナキアは理解した。逃げれないという事と逃げれない理由を。足が既に『自分の物では無かった』のだ。骨身まで凍り、神経が通っていない。もう動かないのだ。


「何でっ…お前が氷を…!」

「何か…勘違いしているようだが…氷も水だろう…?」


ゆっくりと杖を突きながら歩み寄る。目の前まで来ると杖を上げて狙いを定める。前進を徐々に蝕まれ、朦朧とする意識の中、最期の言葉を聞いた。


「物を割るには…どうすればいいか…わかるか…?」

「ク…ソ…がぁっ!」

「凍らせればいいんだよ…」


杖を振りおろしサタナキアを粉々に砕いた。砕けた氷は薄暗い光を受けて小さく輝いた。


サタナキアは魔界の土に還ること無く、地上の土へと溶けて還った。








反省点はとにかく名前が多かったですね。あと戦闘が短かった。どうしても文にしてしまう以上仕方ないことですかね。

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