第5話「校開寸前の後悔」
「学校?」
「そう、学校へ行くのよ。」
「んで、学校って何だ?」
「そこから?学校っていうのはだなあ…」
「ふーん。昔、先生の話聞いてたけど、それを大きくしたもんか」
「というわけでそこに行くのよ、アンタ」
「おう、そんでどこにあるんだ」
「ヒロトと一緒に行くから気にしなくてもいいわ」
「いや、気にするべき点が1つだけあります」
「アンタの言いたいことはわかるけど気にしなくていいわよ」
「気にしますよ。大前提の学力が…」
「じゃあ、アタシ部屋に戻るから」
「えぇ!?ちょっと待ってくださいよ!」
ヒロトが言いいかけたが、士助の学力が1番の問題なのだ。高校の場合、学校に入る場合、受験が必須となる。まさか小学校や中学校に入れるという訳でもあるまい。試験という壁にはばかられるとどうしようもない。とりあえず、ここで士助の賢さを知る必要がある。試しに簡単な問題を出してみた。
「士助。10×2=?」
「は?何が?」
「駄目だコイツ。こんな掛け算も出来ないとか高校は居る前にまず、小学校に入るべきなんじゃないのか…。とりあえず士助、俺は忙しいから無理だが他の人に頼んで勉強を教えてもらえ」
「わかった。で、誰に教えてもらえばいいの?」
「誰でもいいって言ってんだろ!話聞け!」
ヒロトに怒鳴られた後、無い頭を使って誰かに勉強を教えてもらうことにした。
まず使用人。
「勉強教えてください!」
しかし、士助が仕事を済ましたため誰一人いない。
「…………」
加奈
「勉強教えてくだ」
「うるさい」
ダメもとでヒロト
「べんきょ」
「帰れ」
何であいつら辛辣なの…。頼るところもなく、士助のメンタルメーターはもう限界に近かった。しかし、そんな士助にもチャンスがやってきた。
「勉強教えてください!」
「いいですよ」
と優しく答えてくれたのは、休んで良いといわれているのにも関らず出勤している「女之神 真理亜」さんであった。士助は5分間神に感謝した後、勉強とは何たるかを教えてもらった。しかし、戦う為に生まれた戦士『玄龍族』は考えることは必要ないと思っている種族。つまり完全にアホであった。順調に始まったと思われたスタート。ハチマキもぎゅっと締め、やるぞ!と始まった。やる気だけは充分。やる気だけは、だ。
まず基礎から。
うんうん、算数、国語、社会、理科、英語、ドイツ語、フランス語、ふむふむ、え?2+2は4?え?2×2は4?おーおー、え、れきしってなに?ちょっとまってかんじ?なにそれ、いんせきがくるの?あ、これはもっとさきなの?と、このようにわかっていただけたでしょうか?
彼は、強い。しかし、アホだった。
これで大丈夫なのだろうか…
ドアの隙間から見ていたヒロトは思った。
「勉強なんかしなくてもいいのに…」
気配を発することなくいつの間にか後ろに加奈がいた。
「うおぉ!いきなり後ろから声を掛けないでください!」
「アンタも思わない?」
「え?いや、勉強をしなければ入ることができないからそうは思いませんが…」
「アンタ…馬鹿なのね」
「ええ!でも勉強しなければ入れないのは事実で…」
「ま、勉強なんかしなくても学校に入れるのにね」
加奈はそういってその場を離れていった。
(勉強しなくてもいい?そんな事あったか?一体…)
ヒロトは暫く考えたあとハッ!っとなる。その後はまさか…まさかな…と呟きながらヒロトもその場を離れた。
そして、学校が始まる1日前、士助が勉強し始めて一週間。士助はフラフラしながらヒロトと学校に来ていた。
「フフフ…ついに…ついに来た…なにより待ちわびたこの日が!」
「オイ…大丈夫か?」
「と、とにかく、今日のこの日が終われば全てが終わる!ああ、長かったかなこの日まで…」
「いや、1週間しか経ってないぞ…」
歩いて学校まで30分かけて来た。ところが、試験会場はシャットアウト。既に閉まっていて開く雰囲気もない。
「会場ってのが閉まってると思うのは俺だけ…?」
「確かに閉まってるな。疑う余地もなく閉まってるな」
そう、会場が閉まっていた。
「オイオイオイオイ、どうすりゃいいんだ!おれぁ!なあオイヒロトォ!」
「お、落ち着け!限界が来ているのはわかるが落ち着いて…」
「落ち着いていられるかぁ!」
「あんた達。やっぱり来てたのね」
後ろから呆れた声が聞こえ、振り向いてみると加奈がいた。
「か、加奈お嬢様!」
「ハァ…ヒロト、ソイツに言わなかったの?」
「や、やはりあの勉強のいらないって…」
こいつらは何を言ってるんだ?と士助は1人蚊帳の外で首をかしげていた。
「ま、アンタが馬鹿だったと受け止めといて」
加奈はポケットから一枚の紙を取り出しヒロトに渡した。それを見てヒロトはやはりか…という顔をしてから読んだ。
「合格届け 虹色士助様 貴方は試験において合格点に達したので本校『一星千里学園』に入学することを許可します。だってさ…」
「一星千里学園…千里…千里ってどこかで…」
「気をしっかり保て。千里って言うのは加奈お嬢様の苗字だ」
「え、でもなんで?」
「ハァ…さすがにその状態じゃあ理解できないか。お嬢様のお父上はこの学校の理事長でお前が入学出来る様に加奈様が頼んでくださったのだ」
「じゃあ、加奈が言ってた勉強しなくていいっていうのは!」
「そうだ、薄々気づいていたがまさか本当だったとは…」
このとき士助は過去最高荒れていた。
(千里…オジョウサマ…?この学校…父上…頼んだ…入学…今までの…ドリョクは…ミズノアワ?ソンナ…ソンナ…)
……まあ、その後一日中、士助は部屋にこもりきっていた。
何はともあれ翌日から学校へ行く士助であった。




