第51話「前進」
お久しぶりです。キーダの滝です。やっと自由になったので投稿します。
あらすじ
聖野高校との野球勝負に勝った。しかも圧倒的な点差で。
昨日の練習試合の翌日。士助は部屋で準備を整え千里邸を出た。外では庵次が漆黒のコートを風になびかせ立っていた。旅立ちを祝福しているのか空は雲1つない青空だった。庵次の方へ歩いて行くと花とサタナス。2人の姿が見えた。
「花はともかく、サタナスも戦うんだな」
「当然だ。なんのためにこっちに来てると思っている」
「それもそうか。で、花は…」
「うん。うちも戦う事に決めた!庵次さんに言ったらおーけーだって言ってくれたし」
「いいのか兄ちゃん」
「構わない。駒は多い方がいいだろう」
「その言い方はどうなんだ…」
3人は同様に顔を見合わせ互いの覚悟を確認する。皆、決心し、ここにいるのだ。揺るぎない信念を元に戦いに行くのだ。
すると、千里邸の方からヒロトと加奈が歩いてきた。ヒロトと加奈が見送りにやってきた。ヒロトは普通の執事服なのに加奈はジャージに『絶望』と書かれたTシャツを着ている。本当に見送る気あんのコイツ。
「行くんだな。やるなら頑張れよ」
「任せとけ。絶対に魔王を倒すさ」
「……………ん」
ヒロトと話していると庵次が何かに気付いたようでヒロトに歩み寄る。
「お前…」
「え…あの…」
「何してんの兄ちゃん」
腕を掴んでジロジロと見る。ヒロトもそれをまじまじと見る。
「悪魔と何かあったのか?」
「え…まあ、一応」
士助は以前の事を庵次に話した。理解した庵次は意外な行動に出た。
「お前、戦いに参加しろ」
「はぁ!?」
その場にいる加奈以外が驚いた。サタナスも意外な表情をしている。
「説明は後だ。お嬢様、コイツを借りるぞ。死ぬかもしれないが」
「えぇ!?」
「いいわよ」
「えぇ!?」
庵次は何もない所に掌を向けると闇が現れゆっくりと扉を形成していった。扉を開けてヒロトを放り投げる。
「ちょっと!」
叫び声も無く闇の向こうにヒロトは消えてしまった。
「さぁ、行くぞ」
次に庵次、サタナスと続き花も恐る恐る足を踏み入れ闇の中へと消えた。残った士助は振り返り加奈を見る。
「何?」
いつもの様に不機嫌そうな返事が返ってきた。もう慣れたと思っていたのにやはり妙な気持ちになる。
「いや、戻ってくるかわからないから最後に目に焼き付けておこうかなぁ、と」
恥ずかしそうに戸惑いながら言う士助にため息をつき
「アンタの部屋、片づけないでおくから。一回は戻って来たらいいんじゃない」
「加奈…」
「あと、もう振り返らないでくれない?そのまま行って」
「な、何で…」
上げて落とす。いつもの加奈だと改めて確認しショックを受ける。
「ほら、早く行けや」
「うぅ…」
とぼとぼ歩いて行くさびしそうな士助がドアノブに触れる。
「じゃあな、加奈」
後ろで再びため息が聞こえる。なんか、悪いことしたっけ…。
「アンタが二度と来ないんだったらそのまま行って。でも、こっちにもう1度来るなら、来たいのだったら『また』って言いなさい」
その言葉を聞いてはっとする。心を改める。ゆっくりと心の中で繰り返し、うん、うん、と頷き振り向かずに
「うん、またな」
と言って消えた。加奈もあくびをして館に足を運ぶ。そこで、急いで走ってきたミカとすれ違う。息を切らして目の前で止まる。
「あ!千里…さん…はぁ、はぁ。またね!い、急いでるから!」
また走り出して扉に入って行った。闇は渦巻いて、何もなくなった。少しぼーっとした後、家へと戻って行った。
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しばらく、何もない闇の中を歩く。皆、先にいったようで今はただ1人だ。間もなく出口の扉が見えてきた。ドアノブに手をかけ、勢いよく押す。光が強く差し込み気づけば玄龍族の里に居た。
「久しぶりだな…」
一か月程度かも知れないが懐かしんでいると庵次が来た。
「オイ、行くぞ。全員、家にいる」
庵次に連れられ自宅に行く。一瞬振り返ろうと思ったが、心の中で加奈がよぎりぶんぶんと頭を振って再認識する。前を見て庵次のあとに続いた。
今日ではないけど起きてる間は書き続けるのでもう1話期待してください。リアルタイムで見ている人に限りますが。




