第49話「女王の遊び-中編」
おふざけ編にしようと思っていました。(過去形)
ツイッター:kidanotaki_7 もしくわ「キーダの滝」で。
更新報告しかしてませんが。
あらすじ
加奈と士助は人外
ピッチャー採用試験?の翌日。いつものように気だるそうにベッドから体を起こし朝食を食べに行く。今日は休日なのでテーブルに集まり食べる。その時、加奈の向かいに座って昨日の事を思い出す。
あの時測定器が壊れたが何km出ていたのか。加奈の言う3人は誰なのか。ホントに死人は出ないのか。疑問に思う事がずれているような気もするが考えれば考えるほど出てくるが聞いたところで答えてくれないのが加奈。もう諦めて部屋でゴロゴロすることに決めた。
「なぁなぁ士助。遊ぼうや~。」
そんな花の要求を左から右に流しベッドで横になる。
(野球のこともそうだけど向こうの世界での悪魔の動きも気になる。奴らの狙いは未だ判明していないが世界単位で関係しているのは確か。そうなるとやはり支配だろうか…。てかさっきから花がうるさい。)
花の要求を無視し続けてるとコンコンとノック。ドアを開けるとミカがいた。
「どうした。」
「あのね、殿着さんがまた来てて…。」
「また?」
ハァ、と一つため息を落とした後、ミカと共に殿着のいるところに向かう。しかし
「なにやってんの…。」
「……………………。」
椅子にワイヤーでグルグルに巻きつけられていた。しかも椅子の脚に足を、手は後ろに回され手錠とワイヤー、口をガムテープで封じられ、足の上に大きな石を置かれていた。士助が来ると死んだ目で何かを訴えかけてくる。ミカはおろおろしながら士助を見ている。士助は変わらず軽蔑のこもった目で殿着と見つめあっている。しばし、無言の空気が広まった後近づき口元のガムテープを力強くはがす。ベリベリッと激しい音が鳴り殿着の口が自由になる。かわらずうろたえるミカに辛辣な態度の士助。本人も黙って何も言わない。あまりにも進展がないので再度問う。
「なにやってんの…。」
「……………………。」
黙っていると加奈が向こう側からやってきた。手にはガムテープを持って適度な大きさに千切り口に張り付けた後パァン!と大きな音を響かせるビンタをして去ろうとした。
「ちょ、加奈待て!一体何が…。」
「ソイツがまたやっすいナンパふっかけてきたからまた条件を出してやったの。」
「その内容が?」
「一日中喋るな。」
「えぇ…。」
そんな訳あって殿着は無言で訴えかけているだけだった。状況を飲み込むと加奈は自分の部屋へと戻って行った。
「そうなのか兄ちゃん…。」
うんうんと頷きジェスチャーでの会話を試みる。何故拘束されているかまでは問わないがとりあえずこの形で会話することにした。
「なんで来たの?」
殿着は会話できない!会話が終わった。GAME OVER…。
そんなわけで埒が明かないのでもう面倒くさくなって放置しようと決めた。ミカと二人でこの場を去ろうとした。すると、無言で椅子をガタガタ鳴らし待ってくれという訴えをする。ハァ、とため息をつき
「なんで来たの?」
殿着は会話できない!会話が終わった。GAME OVER…。
退却
↓
訴え
再度埒が明かないので加奈を呼び出して少しだけ喋らせてあげてとお願いすることに2人の必死の交渉によってなんとか承諾してくれた。加奈が髪を掴んで荒々しくガムテープをはがす。
「てか何でアンタ喋んないの?」
「へ…?」
恒例のやりとりが始まる。ミカはおどおどしながら士助の影に隠れている。士助はもう慣れた。
「いや、だって喋らなかったら…。」
「は?」
威圧する帝王の様な鋭い眼光が深く強く殿着を突き刺す。圧倒的なオーラに萎縮し恐怖し言葉を失う。それを確認した加奈はチッと小さく舌打ちして部屋へと戻って行った。
「終わった?」
「……………。」
殿着が落ち着いたようなので話を始める。ミカは疲れたようなので部屋へと戻っていた。
「ホントなんなのあの嬢ちゃん…もうビビっちゃって声が出なかったわ…。」
「で、何の用?」
加奈との絡みで危うく忘れそうになっていた本題を聞きだす。殿着は既に疲れ果てくくりつけられていた椅子に腰を下ろし一息つく。
「いや、実はな。悪魔たちの目的とか必要期間とかも全部わかったんだよね。ま、全部庵次が一人でやってたけどさ。」
「それホント!?」
ちょうど気になってたことが判明する。心の中で流石庵次だと尊敬の心を向けておとなしく聞くことに。
「で、まず目的は…。これおかしいんだけどさ『世界を消すこと』って…。」
「!?なんで!」
「オイオイ待てって。そんなん俺に聞いたってどうしようもないだろ。俺もわかんねーし。」
「あ…そっか。そんで時間は?」
「大体一年間だとよ。こっちの世界じゃ三日ぐらいか。それも変な話だな。」
「一年…そんだけで世界が…。」
現在地球内日本時間にして五月中旬。士助がこっちにきてたったの二か月あるかないか程度の時間である。その中で悪魔たちの計画を進めていたのだ。
(そういうことか。悪魔軍が何故地球側に悪魔を送っていたかが分かったぞ。)
士助の考えはこうだ。
地球に悪魔を送り込むことで意識的に地球を狙っていると士助達に思わせていた。そしてここからが本題。送り込んだ悪魔が地球を支配できるかできないかなど一切の関係はなかった。士助一人で様子を見るという行動で玄龍達の動きを抑制する。且つ士助を地球側に向かわせることで戦力を削ぐ。士助が地球側で警戒を行っている間、つまり約二か月間。向こうの世界に直して6000日。既に向こうの世界では16年と6か月程度過ぎている。これだけの時間があれば連中にも充分。目的の計画にゆっくりではあるが着実に、考えつくされた計算で駒を進めていた。既にキングは目の前。悪魔からすればポーンにルーク、ビショップ程度の駒を犠牲にしてきただけ。まだまだ悪魔軍には切り札がある。
「わかった?ま、そゆことね。今考えればなるほどって感じだよね~。まぁなんとも考えてある…。」
「なんで…。」
「ん?」
「なんで庵次兄ちゃんは今の今まで攻めなかったんだろ…。」
「そりゃあお前、早々に踏み込んでも戦力不十分でやられるとかじゃねーの?もしかすっと庵次のことだから悪魔の計画にも最初から気づいてたかも。」
疑問が頭の隅に小さく残る。まあいいや、と忘れようにもその疑問はしつこく残ろうとする。掴んでも逃れて行くこの感覚。殿着は話終わると颯爽と向こうの世界に戻って行った。残った疑問を解消しようと部屋に足を向けた瞬間後ろ襟を強く引っ張られる。うおっ…っと声を出して振り返ると加奈が居た。
「なんか用か?」
「アンタ、悪魔とかそういうの終わったら…どうすんの?」
「どうするって…向こうに戻っ…て。」
そうだ、この戦いが終われば地球から去らなければならない。いる理由がなくなるのだから当然だ。そもそも悪魔の目的が地球でないとわかったのだから今いる理由もないのだ。そのことを考えさせる加奈の言葉に動揺していい答えが出てこない。
「どうすんの?」
「いや…なんつーか、多分…。」
「ハッキリして。」
またも加奈の言葉に動揺。加奈の視線が痛い様に突き刺す。言葉が途切れ途切れ出るが上手く伝えられない。
「加奈は…俺がいない方が良いか?」
「聞いてんのはアタシ。質問は答えてからにして。」
はぐらかそうとしても話を戻される。当たり前と言えば当たり前だが心の揺れが激しくなる。
「多分、向こうに帰るよ…。」
「こっちには来ないの?」
「…ああ。」
「…そ。答えられなかったらわかんないって言えば良かったのに、変なの。」
結局、本当のことを答えてしまった。うまく忘れておきたかったが思いだし一気に不安になる。心が深く濃い霧に包まれたみたいだ。どうにかしたいけど見えないから触れられない。だからどうにもできない。そんな不安でいっぱいだ。そこへ加奈が去ろうとしたときに
「アンタが来てからちょっと変わったかもね…。」
と言い残して部屋に戻った。巨大な大広間に士助一人残った。その日は夜まで考えた。でもどうにもならなかった。だから考えるのをやめたかった。でもやめれなかった。だから寝た。ゆっくりとまぶたを閉じる中、強い睡魔に襲われて思った。
────悪魔の野望を打ち砕こう。
───そっから先はまた今度。
──また今度。
─また…。
翌日
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