第40話「現れた脅威」
またもや久々に。のんきにやりすぎてもうすぐ春。時が立つのは早いですね。充実している証拠で何よりです。同時に4、5、6話手直ししておきました。そちらもお願いします。
南の王国。
そこで起こった2つの戦いは幕を下ろした。激しい戦いの後、残ったのは3人だった。
「それにしても…疲れたヨ。今度からは士助に任せるかな」
科背が瓦礫に腰を下ろしながら言った。
「いや、嘘つけ。自分から行ったクセに…というか」
士助は反論したあとビットの方を見て言った。
「なんかさ、変じゃなかった?」
「何が?どこが?」
「いや色々…」
酒場で話していたとき、戦う前からの豹変ぶり、戦闘後の言葉。どれをとってもおかしいと思える。
何故、酒場で士助に気付かなかったのか。顔で判断していたとしたらそこまでだが戦闘中はどこかエネルギーを感じ取っていたと士助は思った。
頭を打ち抜かれ生きていたのは機械だからと仮定しても、機械にあんな怒りの演技ができるのか。そもそも演技ではなく本当の感情ならば?そんな技術はこの世界には存在しない。
そして最後のメッセージ。なにやら88と番号だったが自爆する反応すらないところを見ると特に何もないのか失敗したのか…とにかく謎だらけだ。
「そんなことどーでもいいヨ。もう帰って寝るからサ。庵次にヨロシク言っといてネ」
「う~ん、わかんねえ」
「アホだからわからなくてもいいと思います」
「このやろう」
そんなのんきな会話をしていると遠くから何か音が聞こえる。それを最初に聞き取ったのはサタナスだった。
「おい。何かがここに向かっているぞ」
「え?」
「ホントだネ。なーんかおかしいと思ったらそれか」
「いや、おかしいと思ったら言ってよ!」
「いや関係ないかなって…」
「このアホ中華服!」
「なんだとこの普段着ジャージ野郎!」
「それは加奈も殿着兄ちゃんも普段着ジャージだ!」
そんな口喧嘩を続けていると音の正体が姿を現した。鉄の4本足、右のアームには剣が左のアームにはガトリングをしており、頭部には目の無い人の顔をしていた。それが1体や2体ではなく数えきれないほどの数がこちらに向かっている。今、見えているだけで100は居るだろう。
「…オイオイ。なんだよアレ…」
「お前が気になっていたものの1つはコレだったんじゃないのか?」
「あの88って数字…そういうことだったのカナ?」
「って今はそんな場合じゃねえ。アイツらと戦わねえと」
「それもそうだネ」
それぞれ戦闘態勢に入る。向かってくる戦闘兵中には飛んでいるものもいる。四面楚歌。3人背中を合わせて戦う。
「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
敵を蹴る、切る、撃つ。至極シンプルな方法で敵を潰していく。予想よりも耐久は脆く全て1撃で粉砕する。何機も壊して、壊して、壊して、壊す。しかし、一向に敵の数は減らない壊しているのに手ごたえの無い感覚が現れる。
「こいつら…さっきから数が減ってねえっ!」
「おかしいネ、このまま減らなかったら体力的に僕たちが崩れるかもしれないネ!」
「くっ!ここは引くか?」
しかし、辺り一帯敵だらけ。逃げようとも逃げ場がない。ずっと敵を倒し続ける。体力が尽きるまで相手をしなければいけないのか。そんなことを考えてる暇はない。今はいつか尽きる、そんなどこから出たかもわからない希望を信じて戦うしかない。
何度機械の壊れる音を聞いただろうか、何度剣を振り銃を放ち一蹴しただろうか。このままでは本当に体力の限界が来る。マズイ…と脳裏によぎった瞬間3人の足元に黒い針が刺さる。
「!敵の攻撃か!」
「いや、これは…」
すると針を中心に黒い穴が広がり3人は穴に落ちた。
「うわああぁぁぁ!」
士助の叫びがこだまする。アンドロイド達は急に行動を停止し元来た方向へと戻っていく。
黒い穴が開き3人は地面に落とされる。どうやら森の中、士助はここに見覚えがあった。
「ここは俺と庵次兄ちゃんが通った道…」
「危なかったな」
木の陰から庵次が現れる。どうやらあの黒い穴は庵次の力だったようだ。
「庵次か。助かったヨ。危うく僕も暴れかけてたし…」
「士助の帰りが遅かったからな、様子をと思って見に行くとあのアンドロイドがお前達に群がっていたものでな。少し助け舟を出してやったまでだ」
「そっかぁ…何はともあれ助かったぜ…」
士助は地面に座り込む。
「フン、士助も科背も悪魔と共闘しているなぞ他のヤツに知られると面倒だぞ」
「サタナスは今回手を貸してくれたんだ。他の悪魔とは違うって…疲れた…」
「…本当か?」
庵次がサタナスを睨む。その視線に動じず答える。
「今回は利害が一致したまでだ。完全に味方ではない」
「そうか。いや、今はそれよりも言わなければいけないことがある」
「何それ?」
「南の王国についてだ。それとお前達を襲ったあのビットとかいう奴についても」
皆の表情が険しくなる。士助も目つきを変えて話を聞く。
「南の王国。奴らには並みほどの科学技術は無かったものの農業には優れていた。おそらくこの世界では1番と言ったところか。しかし、この国をもっと良くするという国の意思に背く奴らが現れ始めた。連中は他国を押え南の王国を頂点に立たせることだけを考えて行動した。やり方は単純、実力で他国を潰し支配下に入れる。それだけだ」
「でも、南の王国はそんな力無いんじゃ…」
「その通りだ。ならどうやって手に入れたかだが…それが科背の戦ったビットがキーだ。」
「あのロボットが?どうやってサ」
「科学技術も人員も無い。だから、両方盗んだんだ。それも情報管理局から。偶然にも奴はそこに選ばれた有能な科学者ってヤツだからな」
「情報管理局…すべての国の科学力、政治、経済、それに加え有能な科学者が集まっているあの場所ならそのすべてが揃うな」
「科学者を脅し科学力を盗み奴らは極秘裏に上へと駆け上がった。だがな、世の中悪がはびこるほど甘くない。結果、連中は世界管理組織に見つかり国王と連中の頭を失った。王は確か無期懲役、リーダーはそろそろ死刑だったはず…」
「なんで国王まで捕まったんだよ。それに盗んだのはビットじゃないのか?」
「賄賂だ。王は連中から賄賂を受け取るかわりに国にやってくる政府の奴らを追い払う様に言われたのさ。ビットが情報を盗んだかどうかがハッキリしてなかったんだとよ。それが少し前の話。そしてつい最近になってまた連中が動き出した、今度は『WAR』って名前を名乗ってな。ウォー…まさしく戦争だな。ワールドオールリセットって意味合いらしいが。連中は盗んだ技術からさらに発展して独自の技術を生み出した。それがお前達の戦ったあのビットってサイボーグ『WRS-1』だ」
「サイボーグ…やっぱりそうだったのか。アイツ人の意識もあったもんな」
「だけどな、戦う時には意識を強制的に変更させられて戦ってたんだ。アイツの脳に障害が起きて自分が情報管理局に居たこと以外覚えてねえんだとよ。それとあの無数のアンドロイド、奴らはビットの緊急シグナルをうけて要請された超速自己修復型アンドロイド『WRA』だ。奴らの数が減ってないと感じたのは奴らの圧倒的な修復能力、搭載されている『あるユニット』によって行われている」
「そのあるユニットってのは?」
庵次はしばらく黙って士助の質問には答えなかった。
「…まあ俺が知ってるのはそんなとこだ。これ以上はどうにも」
(あれ無視?)
「何でそんな知ってるのカナ?どこから出たのサ」
科背が笑いながら庵次に尋ねる。この質問に庵次は再び黙る。
「…………」
「庵次クン、聞いてるのカナ?」
「フン、ちょっとしたことだ。気にしなくていい」
「まあまあ、誰から知ったとかさ、そんなのいいじゃん」
「キミはいちいちのんきだネ…」
「ま、そういうことだったんだな~」
「この情報…ホントならば本当に戦争になるんだろうな」
「確かにネ」
「そうだな」
「それはヤバいじゃん!」
「ホンマや!ヤバいやん!」
………………………………
辺りに沈黙が走る。今、確実に声が1つ多かった。しかも、関西弁。上から順にサタナス、科背、庵次、士助、関西弁。ハイおかしいですね。全員が声の主を確認する。そこには黒のゴスロリを着たショートヘアの女の子が立っていた。それも、ヤバイやんと言いながら口を押えている。
「いや、お前誰…」
「いや、そんなこと言ってる場合や無いで士助!このままやと悪魔だけやのうて南の国まで!」
「てかなんで俺の名前知ってんの?普通に会話に交じってるけど違和感バリバリだからね」
「ははは、そんなこと気にせんでええやん。さあ、次に行ってみよー!ってなんでウチが仕切ってんねーん!」
少女のノリツッコミが森中に響いた。士助はなんともいえない目で見ていた。士助ですら あ、駄目だコイツ と思うほどの奴が来た。
「お前、悪魔だな」
「え!?なんでわかったん?」
確かに彼女の背中に小さな羽がある。ツッコミ所が多すぎて士助は気づいていなかった。
「なんだなんだ!こっそり味方のフリして俺達を倒すつもりだったんだな!」
「そんなんやあらへん!確かに自然な流れで入っていけると思たのはあってるけど…」
「あってんじゃねーか!てかさっさと名乗れ!」
すると少女はこれを待っていたかの如く自慢げな顔で答えた。
「よう聞いてくれた!ウチの名前はサキュ・フレム・フラワー言うねん。よろしゅうな!」
「よろしゅうな、じゃねえよ!目的はなんだ」
「まあまあ敵意は無いから安心してや」
「どうでもいいでショ。敵意は確かになさそうだし。という訳でその子の面倒はキミが見てやるんだヨ」
「ええ…」
本気の驚きを見せる士助。サキュは士助に笑いかけている。
「くそ…へらへらしやがって…」
結局士助の納得が行かないままその場が解散した。庵次はその後も調査を続け科背は自分の家へと帰って行った。サタナスもやることがあると言って去って行った。
「なあなあどこ行くん?」
「帰るんだよ」
「それどこ?」
「別の世界だ」
「別の!?そんなとこに住んでんの?」
「うん」
「ええなあ。ウチも一緒に住んでええ?」
「いや、それはわからないけど…」
「そこをなんとか…」
「うるさいな!もう帰りますよ!」
「はーい!」
2人はさっそうと元の世界に帰って行った。
しばらくして士助は千里家の扉の前に来ていた。ただいまーという声と共に扉を開けると入り口近くでヒロトが倒れていたが無視した。
「いや、無視すんなよ!」
「え、ツッコミ待ちだったの?」
ヒロトが急に立ち上がり士助に言った。正直このシーンを幾度となく見たのでもういいかな、と思っていた。
「ちょっとアンタどこ行ってたのよ」
「あ、加奈。少しお願いがあるんですけど…」
「その後ろのヤツ誰?」
それも含め士助は諸々説明した。
「なるほど。要するにそこのよくわからない女の為に部屋を用意しろと」
「ハイ。」
「アタシがハイって言うと思った?」
「いいえ」
「まあ、そういうことで」
「待ってくださいお願いします!」
「もう空き部屋無いんだけど」
「そこをなんとか…」
「アンタの部屋に住まわせればいいじゃない」
「ええ!?」
「さーんせーい!」
手を挙げて喜ぶサキュ。しかし、士助はかなり嫌な顔をしている。
「賛成じゃないよ!大反対だよ!」
「まあええやん♪同居で」
「同居じゃないよ!廊下でもいいからコイツをだな…」
「廊下とか嫌や!」
「わがまま言うんじゃありません!」
「廊下も無いから。以下の選択肢から選んでください」
士助はどうする?
‣士助の部屋
虹色士助の部屋
士助のmy room
「一択じゃん!もうこれしかないじゃん!」
「面倒見てくれるんやろ?もう我慢しいや」
「くっ…この野郎…」
「アハハ、よろしゅうな」
結局悪魔と同居することになった士助。最後まで士助は意見が通らずその日は1日中寝込んだのは裏話である。
長くなりました。それ以上は言う事ないです。




