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我龍転生  作者: キーダの滝
生き残った狂魔
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第38話「むなしき王国に立つは勝者なり」

また開けてしまいました。夏休みは頑張ります。









大きく嘲笑うベルゼビュート。地面に倒れたサタナス。それは勝負の決着を表したように思えたがサタナスが瀕死の体を無理やり起こす。


「まだ…終わってはいない…!」


最後の力で立ち上がりベルゼビュートを睨みつけ視線をこちらにやる。


「終わってないだと?ハハハハ!何を言ってるんだお前は!」


サタナスに近づき胸倉を掴み言い放った。


「負けるんだよ!お前は!この俺に!」

「負けるのはお前の方だ!」


ベルゼビュートの腹を蹴って一気に突き放す。ベルゼビュートはサタナスを睨みつけたがその時には既に手遅れだった。サタナスは右手を高らかに上げその手からは神々しい白の光が剣をかたどって輝いている。


「な、なんだその光は!?」

「この光は…魔を裁く神より与えられし大いなる光。‘ジャッジメント・ライト’!」


美しき光、それに目を奪われただ立ち尽くすベルゼビュート。サタナスはわずかに祈りベルゼビュートに一撃を喰らわせる。ベルゼビュートは避けることもできず神の光に包まれた。



────────────────────────────────────



わずか数秒。その間に起きた出来事を話すには多くの言葉を要するだろう。


ベルゼビュートは光に包まれた、しかし身体的ダメージは無かったもののベルゼビュートが無くしたものは大きかった。禁忌呪解が強制的に解除されてしまった。さらに暴食王のディナーで得た大きな力すらも失った。そのことに気付いたのは包まれてしばらく経った後であった。


───何が起きた───


ベルゼビュートは理解すらもできずただ呆けていた。跪き虚空を見つめ何もすることが出来ずに。


「ジャッジメント・ライト…これは俺がSBCのリーダーに選ばれたときにルシファーから譲り受けたものだ。暴走してしまった禁忌呪解の者を止めるために、な。」


サタナスはベルゼビュートに一方的に話し続ける。ベルゼビュートは返事も返さずただ黙ってそこに居る。


「残念だったな。悪魔でなければ勝てたかもしれないな。それかジャッジメント・ライトが無ければな。」


そこへ誰かがやってきた。それは虹色士助本人だった。


「お前は…サタナス!」

「虹色士助か…」


士助はその時全てを理解した。サタナスはベルゼビュートとの勝負に勝ったのだと。


「オイオイ…まさか今度は俺か?」


士助は身構えてサタナスの方を向く。しかし、サタナス本人は


「そんなつもりはない。今戦えばお前が勝つだろうからな。」


と言って士助に背を向ける。戦意が無いことを確認すると士助も構えを解く。


「ここ…ベルゼビュートがやったんだろ?」

「そうだな」

「お前は関係あるのか?」

「ないな」

「止めれたのか?」

「無理だったな」


士助の質問に素っ気なく答えるサタナス。今度はサタナスが尋ねた。


「王国を破壊されたことに恨みでもあるのか?」

「俺には関係ねぇけど…」

「だったら何故そこまで気になる?関係のないことはどうでもよさそうなお前がここまでしたのは何故だ。」

「それはベルゼビュート討伐だけどよ…」

「なら」


サタナスは振り返りベルゼビュートを指差す。


「そこにいる負け犬を好きにしろ。見世物にするも苦しめて殺すもお前の自由だ。ちょうど処理に困っていたんでな。」

「・・・・・・」


黙り込む士助。何よりここの惨状を見る限り誰一人として生きていないだろうからだ。そうビットの家族すらも。士助にも優しさはある。かといってベルゼビュートを殺してビットの家族は帰ってくるか?この王国は元に戻るのか?つまりそういうことなのだ。自分の怒りをぶつけてもここの人たちは喜ぶのか?士助は今までにないくらい考えに考えた。そんなことをしているとまた一人王国跡地に誰かが駆けつけてきた。


「お前は…ビット」

「お前か…イクジロイ。ここは王国か?」


現れたのはビットだった。すぐには理解できなかったもののここが王国跡地と理解はできた。


「なんてことだ…あれほどまでに美しかったこの土地が…こんなことに!」

「ここを破壊したのはそこで呆けている科学者だ」


絶望しているビットにサタナスが話した。ビットはしばらくしてサタナスに言う。


「貴様…悪魔かっ!」


ビットは腰から一丁の銃をサタナスに向ける。怒りが段々とこみあげてくる。その怒りを抑えられず発砲してしまいそうなくらいだ。


「俺は関係の無い者だ。撃つんだったらそこの科学者を撃て。」

「黙れ!このバケモノ!」


バン!という銃声と共に発射された1つの弾丸。しかし、怒りを込めたその一撃もむなしく弾かれてしまう。


「グッ!だったらもう一度…」

「おいやめろビット!」


構えた手を上から強く抑え込み士助が言い聞かせる。


「お前の気持ちはわかるがアイツはもう悪魔じゃねぇ!それにサタナスはここを破壊した奴を倒してくれたんだぞ!」

「うるさい!お前に何がわかる!」


手をどけようと必死にもがく。しかし、士助の力には勝てず抑え込まれたままでいる。


「もうやめておけ、虹色士助。ソイツはもう気が気ではない」

「だけど…!」

「虹色…士助…」


その名は聞いたことがある。遥か昔に南の王国を破壊した玄龍族の少年…それを聞いたのは指名手配犯の名…


「そうか…そうだったのか…」


ビットは抵抗を止めて銃を手放し話し始めた。


「虹色士助と悪魔はグルだったのか…そうだったのか…いや、そうなんだ…!」

「お、おいどうし…」

「お前らは仲間だったのかぁ!」


突然声をあらげて士助に掴みかかった。士助も突然の事態に驚きすぐに振りほどくことはできなかった。


「お前らが…ここを破壊したんだ!ここを潰したんだ!」

「オイ!一旦落ちつけって…!」


その時、バン!と再び銃声。今度はビットではなくサタナスの銃声だった。ビットはこめかみを右から左に打ち込まれずるりと崩れた。


「…!サタナス、お前!」

「・・・・・・・・・・」


サタナスは黙ったまま銃をしまいその場を去ろうとした。士助は逃げようとするサタナスに掴みかかり荒々しく尋ねた。


「何も殺すことはなかっただろう!何で撃った!」

「お前はどうやらわかっていないようだな…」

「なんだと!」


いきりたつ士助を蹴り飛ばし素早く士助の腕を背中にまわし動きを封じる。


「よくアイツを見てみろ。アイツは死んではいない、いや…正しくは壊れた」

「…?」


士助はビットの方に目を移すと確かにおかしな点がいくつもあった。脳を貫いたのに血が出ていない。体から電気が出ている、その様なことが見られた。そして理解した、ビットは生き物ではない?と。すると、ビットであろう物が立ち上がりピーという機械音とともに言葉を発し始めた。


『玄龍族のデータ、虹色士助の性質を入手。しかし、虹色士助を潰す任務に失敗。』

「な、なんなんだよ…」

「アレが奴の正体だ。」


確かに撃たれたこめかみ、その部位がバチバチと音をたててみるみる直っていく。


『損傷部分修復完了。精神破壊を中断、人体破壊に移行する』


その瞬間ビットは素早くサタナスとの間合いを詰めサタナスを殴り飛ばした。サタナスは受け身をとったがその時には士助を踏みつぶそうとしていた。大きく上げられた足、士助に向かって勢い良く下ろされる。士助はすぐに反応できずに動けなかった。もう駄目だ…。目をつむって祈った。


「逃げろ!虹色士助!」


サタナスの声と同時に頭上でドガッとなにかが吹っ飛ばされる音。ゆっくりと目を開けた。そこには


「情けないヨ士助。しっかりしないと。」


緑色の髪、後ろに垂れた三つ編み。聞きなれた声、緑の瞳。そして、緑の中華服。そう、彼こそ


「科背…兄ちゃん…」

「ハロー。元気にしてたかい?」


虹色家四男〔虹色 科背〕だった。

ビットは立ち上がり機械がむき出しになった目で睨んだ。しかし、


「お兄ちゃんキーック!」


また吹っ飛ばされ跡地の壁にたたきつけられた。彼もまた玄龍族であった。

感想を良ければ書いてほしいです。是非お暇があれば。ではこれにて失礼いたします。

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