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我龍転生  作者: キーダの滝
異世界の少年
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第3話「始めの線」







暫く続いた沈黙を断ち切るようにヒロトが口を開いた。


「本当…なんですか?」

「バケモノが襲いかかった時、刀を出して斬りつけていたわ。あんたが目を瞑った直後にね」

「そんな…じゃあやっぱり異世界から来たってのは…」

「さっきからそう言ってるんですけど」


だるそうに頭をかきながら欠伸をしている目の前の少年は異世界から来た戦士。人の何倍もある大きさのバケモノを1撃で沈めたのだ。相当の手練れに違いない。


「じゃあ、こいつは何なんだ?」

「こいつらは『悪魔』の種族の低ランクの戦闘兵。って言ってもわかるか?まあ、こっちの世界を狙ってる軍団の下っ端ね」

「悪魔…」


あぜんとして言葉が出てこない。さっきから驚くことばかりで頭の整理が出来てないヒロト。それと反して平然とした加奈の落ち着きぶりは異常と言っても過言ではない。


「まあ、信じられねーのもわかるけどさ。でももう見てわかっただろ?こっちの世界に奴らが干渉し始めた証拠だ」

「干渉?どういう意味だ」


ヒロトは士助を問い詰める。士助は今のヒロト側の世界について全てを話した。


「お前たちはもう見たからな、黙ることもできないから全部言うよ。この世界が今、どんな状況なのかを」


士助は真剣な目で2人を見て話を始めた。


「今、こっちの世界はルシファー皇帝率いる〔悪魔軍〕に狙われている」

「悪魔軍…?さっきの奴らが何体もいるっていうのか?」

「そうだ。奴らは陣地の増加、奴隷の確保、その理由で動いている」

「な!それじゃあその悪魔軍が攻めて来たら俺たちは…!」

「捕まって死ぬまでこき使われるわね」


相も変わらず冷静な加奈、それに反して平静になられず再び頭の整理が出来なくなってしまったヒロト。先ほどからこのような事ばかりだから仕方ないのだが。


「まあまあ落ち着け。お前たちが焦るのはわかるけどさ、そのために俺がいるんだぜ」

「お前が…?」

「そ。俺が玄龍を代表してこっちの世界を奴らの手から守るために来た」

「何で…なんの関係も無いお前がこの世界を守るんだ?」


世界を救う勇者が来てくれた。そのおかげで世界は救われるだろう。しかし、自分とまったく関係の無い者が助けてくれるなんて…。理由があるからと言って整理が治まる訳では無かったがただ思いついた疑問を解決したかった。


「なんのため、ねぇ…。別に俺は何か報酬を求めてるわけじゃないんだけど。強いて言うなら…」

「言うなら?」

「暇だから」

「「…」」


1つのためらいもなく即答した。適当とは思えないが真剣とも思えない。何か明確な理由が他にあるのでは?そう思ったがどこかコイツはこれが素な気がする。


「ほ、本気で言ってるのか…?」


士助は元気よく首を縦に振った。


「つ、つまりだ。お前はこっちの世界に侵略目的でやってくる悪魔軍に対抗するために送られてきた戦士、ってことだよな?」

「ま、表面上はそうだな。ただ、その理由が暇だったからだ」

「本当に何なんだコイツは…」


2人は先ほどのシリアス感あふれる雰囲気から一気におふざけ感あふれる雰囲気になってがくんとテンションを落とした。しかし、当の本人はにこにこ笑っている。


「まあとにかくそういうことだ。俺はこっちの世界を守るために送られてきたのはいいけど転送された場所がここの上空で急すぎて対応することもできず地上に落下して頭打って気絶してたけどお腹が減ってたのも相まっておいしそうな料理の匂いで目覚め厨房にて料理を堪能してそのお礼と言ってはなんだけどさっきの怪物から守ってあげたってことでここに住んでいいですか?」

「いや、意味わからないから。長々と説明してるけど住むことに関しては関係ないから」

「ならば俺を住ませてくれるとなんと洗剤がついてくる!」

「要らないから」

「ええい!持ってけ嬢ちゃんもう1本!」

「例え百個千個でもいらないから」

「ならばこの剣を…」

「いらねーから!しつけえよ!」

「こうなったら強行手段に出るしかないようだな…後悔するぞお前ら…!」

「!い、いったい何を!」


士助は少しためてゆっくりと体制を整え目をつぶった。そしてカッと目を見開き!


「お願いします!」


土下座だった。なんとも情けない奴だ。少なくとも目の前の2人は思った。


「自分のプライドを捨ててまで住居が欲しいのかお前は」

「仕方ないわね」


すると加奈はゆっくりと士助に近づきスリッパで頭を地面に勢いよく踏みつけた。


「いでででで!」

「ホラ、さっさと乞いなさいよ。頭を地面にこすりつけくやしい思いをしながら乞いなさいよ」

「まあ…どうなっててもいいか…」


それから───────

なんやかんやあって用心棒として雇ってもらえるようになった。プライドを捨ててまで頼んだ価値はあった。本人はそう語る。


「じゃあ今日からアンタはうちの用心棒よ。しっかり働かなかったら殺すから」

「ありがとうございます!マイロード!」

「犬かと思うくらい忠実だな」


かくして第一歩を踏んだ虹色士助。これから先、待ち構えているであろう困難はきっと仲間が助けてくれる。きっと…




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