第2話「謎が謎を呼んだ謎少年」
「俺の名前は虹色士助。異世界からやってきたんだ」
「虹色士助…」
『異世界』。それを聞いて2人は小声で話し始める。
「あいつ何言ってんですか?」
「多分、アホだと思うんだけれど」
「多分じゃなくて絶対アホですよ。あ、頭打ったからもしかすると…」
「それが原因なのは間違いないわね。早めに切り上げて帰ってもらいましょう」
「お前ら…聞こえてるからな?」
2人は呆れを含んだ視線を浴びせながら士助を見つめている。これにはおもわず顔が引きつってしまう。
「あのな…俺は本気で言ってんだっての!お前らの方ではそういうの見たことないからわかんないと思うけど、その異世界の玄龍族って種族の1人で…!」
「わかったわかった。設定増やさなくていいから、さっさと自分の住んでいる住所を言え。送って行ってやるから」
「こ、コイツ…」
「送ってはやるけど食料の請求はするから。覚えといて」
「おい、話をだな…」
言葉を絶って突然、黙り込む士助。表情も変わり、鋭い目つきに変わっている。
「近い…マズイ!伏せろお前ら!」
2人に向かって走り出した瞬間、黒い穴が士助の隣に出現し、そこから出た巨大な鉤爪に吹っ飛ばされた。壁に叩きつけられ、粉々になった壁の下敷きになった士助を余所に穴の中から鉤爪の正体が姿を現した。
「ガアアアアアァァァアァ!!」
「な…!なんだ、コイツ…」
両腕についた2本の巨大な爪。腕に足と、人の形はしているものの人ではない。肌はごつごつとしていて黒く、目はつぶれていて無い。2mはあるであろう怪物が目の前に立っていた。怪物は加奈の存在を感じ取り、地面を鳴らしながら走ってこちらに向かってくる!
「危ないっ!」
加奈をかばうようにヒロトが立ちふさがる。しかし、加奈はこの状況においても冷静なのか動けないのかただ突っ立っているままだった。
(このままじゃ…!)
もうだめだ…と思い目を瞑った。何かが空を切る音で体が動けなくなった。
…………………
何も…起こらない?攻撃を喰らったのか?何も感じない。
目を開けると、怪物は倒れていた。背中には大きな切り傷、それも長い刃物で切られてたような跡だった。倒れたバケモノから目線を上げると黒い鞘を片手に士助が立っていた。吹っ飛ばされたはずなのにぴんぴんしている。
「お、おい…お前コイツを…」
「こんなこと。ここの世界の奴に出来るか?」
「じゃあ異世界っていうのは…」
「さっきから言ってんだろ?何回も言わせんなよ」
「………」
「これでも信じられないんなら、後ろの嬢ちゃんに聞けば?」
「後ろって…」
ゆっくりと後ろを向くと自分がかばった自分の主、加奈がいた。確かにあの状況でも微動だにしなかった加奈なら何か見てるかもしれない。加奈は溜息をつき沈黙した後、口を開いた。
「そうね。見たわよ」
「そ、それじゃやっぱりアイツは…」
「異世界の、玄龍族。とやらじゃないの?よくわからないけど」
「なんとか、信じてもらえたようだな」
加奈が納得し、士助が息をつく中。ヒロトは1人、頭の整理がつかなかった。




