表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我龍転生  作者: キーダの滝
Seven big crimes編
25/82

第24話「思いに思って」









士助は自室のベッドの上にいた。


ルシフェルとの戦いの後、士助は考えていた。

もし、あのサタナスが自分以上の実力を持っていたら、と。

たった一度しか姿は見ていないが、奴の放っていた闘気は生半可なものではなかった。それこそ、今までの相手が比にならないほどだ。


どうすればいいか、とは思えどサタナスに対する情報が一切無い。考えても仕方がないのかもしれない。

のんきなのかもしれないが、気分でも変える為に明日は学校にでも行こうと思った。

加奈と話をしたり、ヒロトと学校に行けば少しは緩和されるだろう。

そうと決まれば明日に備えようと、士助はベッドに横になって眠り始めた。。そのまま意識を失うまで数分もかからなかった。ぼやける視界の中、士助の脳裏に一瞬言葉が過った。


俺は、何がしたいんだろう…










翌日、起きると窓の外からいつも通りチュンチュンと雀の鳴き声が聞こえる。

起きて制服を着替え、ドアを開けて出たが館には誰もいなかった。

正確には人の気配がしなかった。

辺りを見回してみても、誰もいない。

とりあえず、朝ごはんを食べに食堂へと向かう。

しかし、いつもならいるはずのコックすら見当たらない。

何かあったんだろうか?と思いキッチンに入るとまな板の上に置手紙があった。


『もう疲れました、休ませてもらいます』


と書かれていた。その隣で赤い着色の施された包丁が意味深に存在感を放っている。

まさか…と思って匂いをかいでみる。

が、それは血ではなくただのトマトだった。紛らわしいと思いながら元の場所に戻す。


「なんかあったのか…」


正に不気味だ。

誰もいない館、気配など一切無い。加えて意味ありげな置き手紙が一層、疑心をかきたてる。

とりあえず今の状況を冷静に考えようとキッチンを出た。すると


カツ…カツ…


と足音が聞こえる。先程まで誰もいなかったのにはず、だが慎重な足音と共に誰かが現れた。

急ぎ物陰に身を隠し、音のした方を見てみる。

音がしたのは入り口付近。今、入ってきたばかりと考えるのが妥当だ。


「不法侵入って奴か…?」


忍び足で物陰を移りながら、玄関へと向かう。そこで明らかに怪しい人影を見た。1人、黒いコートにハンチング帽子を被り、辺りをキョロキョロ見回している。身長は士助と同じ程。男にしては細身すぎるところを見ると、おそらく女性だろう。目的の物が無かったのか、別の場所へ向かおうと振り向いた。


(悪いが…捕まえさせてもらうぜ!)


物陰から飛び出し、侵入者に飛びかかる!音に反応してこちらに気付いたが時既に遅し。士助は拳で相手を捉えている!


(もらった!)


しかし、侵入者は俊敏な動きで体を沈めると、下から胸倉をつかまれて思い切り地面に叩きつけられた。

士助が素早い動きで起き上がり相手の顔を確認すると


「………あれ、マリアさん?」

「あれ、士助さん?」


侵入者の正体は加奈に仕えるメイドのマリアさんだった。






「いやぁ、いきなり襲いかかってすいません」

「いえ、怪我が無くて良かったです」

「って、そうじゃなくて!ここで1人何やってるんですか?」

「今日は皆さんお休みなので、不審者がいないか見に来ただけです」

「や、休み!?全員?」

「はい、加奈様の命令で。何やらコックの1人が労働時間がおかしいと訴えたので望み通り休暇を与えたそうです。それも今日」

「それがあの台所の…」


台所に1つ、目立ってあった包丁はそのコックの訴えらしい。それにしても、士助が寝過ごして今日は皆が休暇をとってマリアさんは様子を見に来て、それを士助が勘違いした。そういう訳だ。

それがわかると士助は部屋に戻りバッグを取って学校に向かった。














遅刻して、ヒロトに散々怒られた。

途中から入って残りの授業を受け終わり、時間は昼休み。


屋上で士助とヒロトはご飯を食べ終わり話をして時間を潰していた。


「なあ、士助」

「んー?」

「お前、部活とか入らないのか?」

「部活?」


ヒロトが簡単に説明する。


「へ~」

「どうだ?少しは興味が出たか?」

「まあ、見ないとなんとも言えないけど」

「じゃあ、放課後は部活巡りに行ってみるか」

「は?」








昼休みからまた時間が経って放課後。

昼に言ったとおり、士助とヒロトは部活見学に行っていた。

まずは、サッカー部。

士助は頭に?がついていたのでヒロトがルールとかを教えてあげる。


「へぇ…やってみるかな」


興味を持ったのか一度やってみることにした。ヒロトが知り合いの部員に頼んでみると丁度、紅白戦が行われるところでチームに混じり参加させてもらえた。ポジションはフォワードだ。

いきなり初心者を参加させて申し訳ない気持ちはあるが、今までの士助を見る限り運動は得意そうだ。

試合開始のホイッスルが鳴り、士助に早速ボールがわたる。


「いけ士助!ドリブルで抜いてシュートでゴールを決めてやれ!」


ヒロトが指示を士助に飛ばす。しかし、悲劇は起きた。

士助はボールを受け取ると大きく足を引きシュートの体制をとる。フィールドプレイヤーが全員凍てついた様に動きを止めた。まあ初心者だからシュートを決めたい気持ちはわからなくはない、と思っていた。

だが、士助の放ったシュートは肉眼で捉えるにはあまりにも速く、常人が受け止めるにはあまりにも強すぎた。士助の放ったシュートは空気を切り裂き、選手達のわずかな隙間を縫って気付けばゴールネットを焦がしていた。今度は別の意味でその場にいた全員が凍てついた。


「よっしゃあ!まず1点!!」


ガッツポーズを決めるが、士助以外の人間は震えていた。


(どうしてこうなった…)






あの後、存在的に危険と思われた士助は退場を余儀無くされ、フィールドどころか近づくことすら禁止された。

サッカー部でこれなので他の部も危険極まりないとわかったヒロトは部活を勧めるのを二度としないし、士助が入部するのはこれから先、永遠にないだろう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ