第15話「ヒロトの日常」
チュンチュンとすずめがさえずる朝。ヒロトも加奈も朝早く起きあくびをしている。ヒロトは基本的に6:30頃に、加奈は7:00頃に起きる。ヒロトはいつも同じことをして、同じ時刻に出る。いつもと同じ通学路を歩き、同じ人に会ったりする。だが、今日はいつもと違った。
何かが…
ヒロトの学園の時間割は下記のようになっている
HR
1、授業(50分)休み時間5分
2、授業(50分)休み時間5分
3、授業(50分)休み時間5分
4、授業(50分)休み時間5分
昼休み(70分)
5、授業(50分)休み時間5分
6、授業(50分)休み時間5分
掃除、HR
見てわかるように昼休みが異常に長い
その分授業間の休み時間が少ない、なので別に変らない。何故、こうなったかというと理事長の娘の提案である(つまり加奈)。というわけで一気に昼休み。ヒロトは昼食を食べ終わり、廊下を歩いている。
「これから、どうしようか。得にすること無いし…」
長いがすることがなければ困ってしまう、そんなこともある。
「飲みものでもかうか…」
その足は自販機の方へ向かっていった。
「さて、何を買うか」
そういって財布を開けるとぴったり99円。不幸中の不幸である。
「ぐ…1円足りないとは不覚…」
もう少し持ってきておけば良かった、などとぼやいていると
「この100円さっき拾ったんだ!でも、なんか変な紙と置いてあってさ」
などという興味のある話が嫌でも大きな声だったので耳に入ってきた。
「どんな紙だったんだよ?」
「それがさぁ…」
その生徒達は自販機の方へ向かっていったので、気づかれないように気配を消しながら後をつけるヒロト。
「なんか『この金銭を自販機に入れようものなら爆発する』っていう紙とおいてあったんだよ」
「なんだそれ!オカルト?」
「さあ、呪いのコインとか!」
2人の生徒は笑って真に受けていなかったが。このときヒロトはこれに似た話を1つ思い出した。
(そういえばこの話ちょっと前に士助から聞いた奴か?)
そう、少し前の休み時間のこと。ヒロトは士助から興味のある話を聞いていた。士助の世界には人間の世界の物を改造した物が多くあるという話だ。携帯に包丁だったり、洗濯機、自転車。日常的なものから非日常的なものまで。とにかく、多くの物が形を変えずに能力だけが変わって別世界に存在すると。その中でも、最も面白いと言って士助が話した『自動販売機に入れると爆発する100円玉がある』。なんでも、これを使って人間を抹殺しようとした種族があったとか。異世界に害を加えるものを作ってはいけないと言って士助の世界の法で裁かれた、とのことだ。ヒロトはそれを思い出した。
(マズイ…もし、アレがそうなら、本当にマズイ!あの生徒死ぬぞ!)
ヒロトは急いで走りその生徒の下に行った。
「な、なぁ!キミ、すまないけどそのコインを見せてくれないか?」
「何だよいきなり…」
「いいから!頼む!」
「別にいいけど…返せよ」
「!あ、ありがとう!」
ヒロトはその100円を貸してもらい確認した。なんでもその100円の後ろには抹殺という文字が小さく彫ってあるらしい。裏を確認するとうっすらはげているが抹殺の文字があった。
(やややややばい!本当にまずい!しかし、どうする!こんなこと直接説明
しても通じるわけがない!だって、これ自販機にいれると爆発するから(笑)と言っても渡す人間この世にいない!)
「なあ、もういいか?」
(!相手は痺れを切らしている!なんとか、時間稼ぎをして最善策を!)
「あ、もうちょっと見てていいかな?この装飾が気にいってさ…」
「ええ!もういいだろ、返せよ」
(チッ!こうなったら…強行手段という奴だ!)
ヒロトは生徒の方を向くと
「これは…意地でも頂く!」
と言って走って逃げた
「あ!おい、コラ待て!」
生徒もヒロトを追いかけ、必死の鬼ごっこが始まる。
(あっクソ!やっぱり追いかけてきた!普通だが、普通だけど!)
そんなことを心の中で呟いていると前に生徒がいた。のんきに歩いていたのでこのままぶつかる。
「あ!ちょっと!どいてくれえ!」
もうこの勢いは止まらない!かわすしかない…!と思った。しかし、次の瞬間。その生徒はヒロトの腕をつかむとおもいっきりぶん投げた。
「ええ!どういうこ…」
ヒロトの声は途切れドスン!という音が鳴り響いた。
「お前!廊下を走るとは何事だ!」
その生徒とは現生徒会長(候補者がいないだけ)『有木 藍』であった。
「うぅ…まさかこの人だったとは…」
ヒロトはさかさまの状態でがっかりしていた。そうしていると恨み持ちの生徒がきて
「あ!生徒会長!ソイツを捕まえてくれ!」
しかし、その生徒は走っている。つまり、
「キサマら…ただで済むと思うなよ!」
投げられる。その後2人は藍に叱られ原因である100円は没収された。奪った方も悪いが落ちていた物を拾い自分の物にした方も悪いらしい。藍にいわせれば。
そして、時間は放課後…
「ハァ…なんであんなものがこの世界に…異世界へ通じるゲートを通って
誰か来てるって言う事なのか?」
ヒロトはかなりくたびれてその夜はぐっすり眠れたらしい。しかし、それを裏で残念に思う者もいた。
「なんだよつまんねーな。あれさえ、成功してりゃ人間は混乱してたっていうのによ。まあいい、次はどう出るかだな。ククク…」
その笑いは暗闇にて怪しく動く影のもの…




