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【連載版】王太子でも聖女でも悪女でもなく、一番の策士が『剣術バカ(嘘)』の私の婚約者の件  作者: 千秋 颯@3/6「選ばれなかった令嬢~」アンソロ発売!
第一章 私の婚約者は『剣術バカ(嘘)』

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第1話 『剣術バカ(嘘)』の腹黒婚約者

ありがたい事に日間総合ランキングで王冠を頂きました為、


『王太子でも聖女でも悪女でもなく、一番の策士が『剣術バカ(嘘)』の私の婚約者の件』

https://ncode.syosetu.com/n4314ly/

の連載版を書かせて頂く事になりました!


応援ありがとうございました……! 引き続きよろしくお願いいたします!

 私の婚約者、ヴィクトル・アルナルディは代々騎士の家系である伯爵令息であり、第一王子であるグザヴィエ・フェルディナン・レグリアス殿下の幼馴染だ。

 裏表がなく快活。毒気を抜かされるような人の好さ。

 駆け引きや腹の探り合いを必要とする貴族社会には似合わず、だからこそ警戒する必要のない相手。

 ――素直な剣術バカ。


 幼い頃から剣術だけは高く評価されていた彼に対する周囲からの評価はそういったものだった。

 だから、我がリヴァロル侯爵家とアルナルディ伯爵家の間で私達の婚約が決まったと聞いた時は少々不安を抱いていた。


 しかし……初めての顔合わせの日。

 両親達の計らいで二人きりになったお茶会で、私は気付いた。


「お、おれ……っ、ニコレットさまと婚約できるなんて、コーエイです……っ」

「こちらこそ。私の事はどうぞ気軽にニコルと」

「じゃあおれのことは、ヴィーと……!」


 その後、他愛ない会話を重ねる中……ある違和感に。


「おれからなんだ。両親にニコルの婚約をお願いしたの」

「まぁ、そうなのですか?」

「夜会で何度か目にした事があって。何てきれいな子なんだろうってさ。それからずっと気になっていたんだけど……。君の付き人や夜会の会場の使用人に対する気配りなんかも見て……ああ、この人は身分以外で相手を見る事が出来る人なんだって」


 そう言って彼は羨望の眼差しを私へ向けた。


 リヴァロル侯爵家はわが国有数の影響力を備えた貴族だ。

 そしてアルナルディ伯爵家は元々王族と親密な関係を築いている貴族である事に加えて嫡子のヴィーが王位継承権第一位の第一王子の友となった。

 そんな事情もあったからこそ、この婚約は第一王子の立場をより確固たるものにしようと考えたアルナルディ伯爵夫妻の考えが色濃く反映された結果から成り立つものだと思っていた。


 しかし彼は自分の一目惚れがきっかけだと言うではないか。

 それが少々意外だった。


 その後も彼はカチコチとあからさまに緊張した様子ながら、私に対し好ましいと感じた点を並べた。

 ただ、その塩梅が――あまりにも完璧すぎた。


 好意を寄せている女性に対する緊張を織り交ぜながらも、まるで用意して来たかのようにスラスラと出る称賛の言葉。

 その全てが、私が喜ぶ為に用意されたかのようで、逆に不自然だった。


 だからこそ気付いた彼の本性。


 ああ、これ――全て計算なのだな、と。


 私はそう理解した。

 私との婚約を自ら提案したというのが事実だというのならば……きっと、その理由は彼が述べるような話ではなく、当初私が考えていたような思惑によるものだろう……と。


 恐らくこの時はまだ、彼自身も幼く、無欠の存在ではなかったのだろう。

 そして私自身、幼い頃から上位貴族としての教養を積み、また周囲の顔色を窺うのが得意だったことも、彼の本性に気付く要因となった。


 社交界を上手く生きられないような天真爛漫な剣術バカ。

 多くの者に周知されたその情報が偽りである事に、私は辛うじて気付く事が出来た。


 ただ……私は侯爵令嬢。彼は伯爵令息。

 であるにもかかわらず、自分の腹の底など同年代の少女にはわからないだろうと高を括るような彼の振る舞いはどうにも頂けなかった。

 確かに彼はあと少しで私を欺き切るところだった。

 しかし、私は彼の妻となる女。そして名門貴族リヴァロル侯爵の娘だ。

 ただの能無しと侮られるのは気に入らない。


 だから私は、彼に仕返しをしてやる事にした。

 ヴィーが何度目かの称賛を口にした時。

 私は突然嬉々とした声を上げる。


「まぁ、嬉しいわ! こんなに熱烈な言葉をくれる様な人が私の婚約者だなんて!」


 先程まで微笑みながら相槌を打っていた私の変わりようには彼も少々驚いたようだ。

 大きな瞳をぱちくりと瞬かせるヴィーに私はにこりと微笑み掛ける。


 『ほら、期待通りの反応をしてあげたわよ』というように。

 私の意図に――自分の思惑がバレた事に気付いたのだろう。


 彼は少々面食らった後、笑みを深めた。


「思った事を口にしたまでだ」

「ふふ、とっても嬉しいわ。これからよろしくね、ヴィー」

「おう! ……こちらこそ」


 声は明るい。

 しかしその顔に浮かぶのは先程のような子供らしい無邪気さではなく――社交界の大人と変わらない、腹黒さを醸し出すような歪んだ笑みだった。


 ……彼の腹の底を的確に暴けたのは、後にも先にもこの時だけである。

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