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077 異世界に転生したので錬金術師としてダラダラ過ごします

「うーん、今日もいい天気だな~」


 神様の粋な計らいで異世界へとやってきた僕だけれど、師匠やソフィアさん、エリーザさんといった面々をはじめ良い人たちに恵まれて助かっている。

 能力をもらったとはいっても、これまでとは常識の違う世界にやってくるのは不安だったけれど、本当にここにやってきてよかった。


「おっ、カズ。朝の買い出しか?」


「少し早く目が覚めたので散歩ですよ」


 こうして、街中でも知り合いが増えて声をかけてもらうことも増えてきた。


「カズに教えてもらった米は美味いんだが、時間が経つと硬くなっちまうのが難点だな」


「ちょっと冷えたくらいだったら、フライパンで卵と一緒に炒めて醤油で味付けすると良い感じになりますよ。カチカチになったら牛乳で煮てチーズを削り入れるとパン粥みたいになって、これも美味しいですよ」


「ほう。それは良いことを聞いたな」


「具材は炒めるほうはネギやレタス、豚肉なんかで、煮るほうは鶏肉やキノコを入れることが多いですね」


「なるほどなるほど。具材を多く入れれば食べでもありそうだねぇ」


「ですねぇ。あとはグラタンのマカロニ代わりに使うとかですね」


「ほう、今度やってみるか。……カズ、こいつを持っていきな」


 そういって果物屋のご主人がレモンを渡してきた。


「良いんですか?」


「良いことを教えてもらったからな。ところで、このレシピは酒場に教えてもいいか?」


「もちろん、良いですよ。酒場でも米が人気らしいですね」


「酒を楽しみにしてるやつはイマイチみたいだが、腹を膨らませるついでに酒を楽しむ連中は食いでがあって助かるって言ってるな」


 つい最近までは鳥の餌と呼ばれていた米だが、公爵家での成功から始まり、帝都でも取り扱う商店や飲食店が増えてきている。

 当初は忌避感も強かったようだが、貴族や王族から他国で食されているものだと公式発表があってからは収入の少ない人を中心に流行りだしているようだ。


 さて、貰ったレモンだけど、どうするかな? 揚げ物の添え物にしても良いけれど、新鮮でいい香りがするんだよな。

 前の世界では忙しくて作る暇なんてなかったけれど、レモンピールやレモネードを作ってみてもいいかもしれない。

 レモンピールは何回も茹でこぼすし、レモネードは水分が出てくるまで待つ必要があるから、休みが少ない前の世界では作り方を調べることしかできなかったんだよなぁ。


「ただいま戻りました」


「おかえりなさい」


 ギルドへと戻るとソフィアさんが朝食の支度をしていた。ギルドを出た時には寝ていたはずだが、散歩している最中に起きてきたようだ。


「早くに目を覚めたので散歩していたのですが、途中で果物屋のご主人にレモンをいただきましたよ」


「良い香りですね」


「ソフィアさんはレモンの使い道を思いつきますか?」


「そうですね……魚や鶏肉の付け合わせで見かけることはありますが、メインとなると難しいですわね」


 そういえば、ムニエルとかでも輪切りのレモンが添えられたりしているな。


「なるほど。僕もあんまり思いつかなくて、レモンピールやレモネードを作ってみようかなと思ったくらいです」


「レモンピール?」


「聞いたことありませんか? レモンの皮を使ったお菓子なんですよ。何回も茹でるので大変なんですが、今まで作ったことがないので挑戦してみようかと」


「お手伝いしますわ」


 レモンピールは皮を使ったお菓子なので、貴族であるソフィアさんは見たことがないのかもしれない。

 ちなみにレモネードは知ってはいるけれど、飲んだことはないらしい。飲み物といえばお酒以外は紅茶ばかりだったらしいから、その影響だろう。


「おはようございます、お二人とも早いですね」


「おはようございます、エリーザさん」


 ソフィアさんとレモンについて相談していると、エリーザさんも起きてきた。


「カズさん、魔導具を使ってみましたけど、すごかったです! どれもこれも便利で、冒険がすごく楽になったんですよ!」


「そうですか、それは作った甲斐があったってものですね」


「はい! カズさんのおかげで一人でも冒険が出来そうです」


「他にも欲しい機能があったら言ってくださいね。こういうのは、実際に使う人じゃないとわからないので」


 エリーザさんのために作った魔導具は、どうやら好評のようだな。

 前の世界で読んでいた小説を参考に作ってみたけど、役に立ったようで何よりだ。


「ふあ~……朝から騒がしいわね」


「お姉さま、おはようございます。そこまで早くもないですよ」


「あ、エレオノーラさん。ごめんなさい、興奮しすぎました」


「師匠、おはようございます」


 師匠まで起きてきた。騒がしいから、という理由をつけているが、時計を見ればいつも起きる時間なので普通に目が覚めただけだろう。


「カズ、ご機嫌じゃない?」


「そうですか? 果物屋のご主人に美味しそうなレモンをいただいたからですかね?」


「ふーん、何を作るの?」


「手間や時間はかかりますが、レモンピールやレモネードを作ろうかと」


「いいんじゃない? カズはあくせく働き過ぎだから、少しは時間のかかるものをゆっくり作るのも」


 師匠に言われてハッとする。自分ではダラダラと過ごしているつもりではあったが、確かに新しい魔導具の開発やらなんやらで、はたから見ると忙しくし過ぎなのかもしれない。

 ここは前の世界とは違うのだから、もっと肩の力を抜いてもいいのかもな。

 異世界へとやってきた僕だけれど、これからもダラダラと錬金術師として過ごしていきますかね。

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